仁淀ブルー通信編集部だより(257)

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 椿山を訪れるのは今回でまだ4回目。それなのにもう何度も椿山に来たことがある感じがして妙に懐かしい。椿山公民館に着くと中内さんが下の畑で何か言っています。「ミミズ! これでモツゴ釣りにいくき!」。小さなスコップを渡され、モツゴを釣るエサのミミズ掘りに急遽参加することになりました。
 今回はウナギ獲りをすると聞いていたのになぜモツゴなのか、最初は戸惑いましたが、ウナギを獲るためのエサとしてモツゴが必要なんだとようやくわかりました。ミミズ掘りはたぶん中学生以来なので要領がさっぱりわからない。苦戦しながらもなんとか10匹くらい確保して集落の下を流れる土居川支流の椿山川へ向かいます。モツゴ釣りの仕掛けはオモリとハリとエサだけ、というシンプルなものです。私は1時間でモツゴ5匹を確保し、「まあまあ悪くないな」と思いながら中内さんの釣果を見ると20匹以上釣っています。山での暮らしは甘くはないけれど、なんか楽しそう、と中内さんを見ながら思いました。
 夕方になるのを待って、釣ったモツゴを餌にいよいよ本命のうなぎ獲りの仕掛けを椿山川の流れにセットしていきます。川が深くなっているところ、流れに変化があるところ、川岸がえぐれているところ、とにかくうなぎが潜んでいそうなポイントを選び、仕掛けていきます。その数なんと50か所。「これだけ仕掛ければ何匹かは獲れるな。」とワクワク気分です。その晩は中内さんとうなぎ談義に花が咲きました。「こんな月の出ていない日がうなぎには最高でね、いまごろうなぎが(餌に)食いつきよるですわ。」明日が楽しみで眠れない、という感覚を久しぶりに味わい、見えるはずがない椿山川を想い、眠りました。
 しかし。翌朝、ひとつずつ仕掛けを上げていきましたが、うなぎは一匹も掛かっていません。「餌が悪かったがかね、また仕掛けにいかないかん。」中内さんは落ち込んでいる様子はなく、むしろ次はどんな餌で釣ろうか、どこに仕掛けをセットしようか考えをめぐらせているようでした。期待が大きかっただけに釣果ゼロはショックでしたが、中内さんとまた川で遊ぶチャンスが増えたのだとポジティブに考えることにしました。
 うなぎは獲れなかったけれど、私は中内さんから、椿山から、たくさんのことを学びました。まず、「山の暮らし」はシンプルな作業の積み重ねでできていること。ミミズ獲りからうなぎの仕掛けをセットするところまで、複雑な作業はひとつもない。でも、ミミズはどんなサイズがいいか、流れの中のどこに仕掛けをセットすれば効果的か、朝は何時ごろに仕掛けを上げるのがいいか、中内さんはひとつひとつの作業を丁寧に考えながら暮らしています。難しくあれこれ考えて計画倒れになるのではなく、目の前のことを丁寧にひとつひとつ積み重ねていく。「将来どうするか」ではなく「いまをどう楽しむか」を考える。山での暮らしに必要なことはそれなのだと気づかされました。中内さんはうなぎ獲り、イノシシの罠の見回り、ミツバチの世話、頼まれた空き家の修繕などなど、いつも忙しく動き回っています。しかしその作業をちっとも苦にせず、むしろ楽しんでいる。昨晩は公民館に泊めていただき、椿山の将来のこと、山の環境のことなどゆっくり話をすることができて楽しかったのですが、朝が来て中内さんはまたいつもの生活に戻っていきました。日々、生き物を相手に生活していると、向こうは自然だから人間の都合なんて斟酌してくれない。だから人間も自然の一部になって楽しみながら暮らしていくしかない。中内さんと一緒にいる時間がもっとあればもっともっといろんなことが学べるのになぁ。後ろ髪を引かれる思いで椿山を後にしました。中内さん、うなぎ獲りのリベンジ、楽しみにしています!

高知大学大学院 総合人間自然科学研究科 地域協働学専攻1年 仲田和生(なかだかずき)

仁淀ブルー通信編集部だより(256)

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 仁淀川をカヌーで下り、仁淀ブルーな水域を見つけるたびに、『川はただ水を流すだけじゃない』ことをしみじみ感じます。水がさっと走っていくコンクリート製の用水路とはちがい、川の底や河原の玉砂利は水を吸い込み、ろ過し、吐き出していきます。自然の川は天然の浄水場。『水質が最も良好な河川』の仁淀川は、ことさら浄化能力が高いのかもしれません。

(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)

仁淀ブルー通信編集部だより(255)

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 今回の原稿を書くにあたり、編集長より「特に女性が友釣りをする際の工夫をあれこれ書いてください」と要望がありました。そこで改めて私の釣り歴を振り返ってみました。私は子供のころは海のサビキ釣りや餌釣り、大人になってからは磯釣りに船釣り、波止釣り、そして今は友釣りと各種の釣りを経験してきましたが、特に女性としてのハンデは意識していませんでした。なぜならば男性のように自由に思い通りにならないところを工夫するのも釣りの面白さだと思っていましたし。
 いまは遊漁船でトイレ付きは当たり前ですが、昔はなかったので我慢しなければなりませんでした。磯釣りも隠れる場所がないので、絶対に我慢です。その点、友釣りは地続きなので、探せばトイレは必ず見つかります。川に立ち込むので濡れてカラダが冷えますが、カッパや長袖を着込めばなんとかなります。
 肝心なのは虫対策。水辺にはアブやブヨなどの噛まれるととてもかゆい虫がたくさんいます。私は虫除けのハッカ油を常時携帯していて、一日に何度も振りかけるようにしていますが、完全には防げません。かゆみ止め薬を塗っても大きく腫れるし。友釣りで一番大変なのは、虫にかまれた後のかゆみを我慢することかも(笑い)。
 渡渉(としょう・川を歩いて移動すること)も背の低い女性にはハンデです。川の石は滑りやすく、しかも不安定で、ふかふかの砂の上にのっている感じで、うっかり石に乗るとコロっと転がり、足首を捻挫しそうになります。特に仁淀川本流の大きな丸石が底全体にびっしり詰まっているような場所は、どこに足を置いてもコロコロと不安定で踏ん張るところがありません。また、水面近くは緩くても底の流れが速くて、膝下くらいの深さでもいったん転ぶと流されてしまうことがあります。渡渉のコツは目的の場所よりも上流から水に入り、斜め下流に目的地に向けて移動する。こうすればカラダに受ける流れの圧力を弱め、前進力に変換することができます。また、足運びを小刻みにし、すり足で、大きめの石の下流側を通過するようにすれば流れの圧力が少なくなります。岩などに片手を着きながら足を運ぶとより体勢が安定します。白波が立っている場所は流れが強そうに見えますが、意外に浅い。反対に白波がなく腰くらいの深さのところは流れの圧しが強く、渡りにくいことが多い。「ちょっと深いあと一歩」「ちょっときついあと一歩」は厳禁、常に流される危険を想定して絶対に無理はしない、確実に渡れると思わないときは潔く諦めましょう。

(鮎屋仁淀川女将・西脇亜紀)

仁淀ブルー通信編集部だより(254)

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 四国の川が好きで移住してきた青年たちは、なにかと興味深い。とくに大歩危小歩危(吉野川の峡谷)のリバーガイドたちは、〈アマゾンで樹上生活していた〉〈裸足で暮らしている〉など、個性とスキルと変わった人生経験を持つ人間がやたらといる。その大歩危小歩危から巣立ち、仁淀川を案内してくれる宮下さんも、かなり魅力的です。仁淀川では、その美しい流れだけでなく、リバーガイドとの出会いもぜひ楽しんでください。

(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)

仁淀ブルー通信編集部だより(253)

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 アユ釣り師は解禁日の準備に余念がない。シーズンが終わり(仁淀川の場合は9月末か10月15日)竿終いをすると、その翌日からすでに次のシーズンのことを考え始めます。うまくいかなかった釣りの場面を思い返し、ひとり反省会を行う。動画や本を読み、苦手克服の勉強をする。お正月を過ぎると仕掛けや針を準備し始める。春先になると遡上の確認のため、川の堰でぴょんぴょん飛び上がる小アユを確認しに行く。釣り仲間との情報交換も怠らない。解禁直前には川見ツアーを組み、下流から上流までくまなくチェックし、解禁日に入るポイントに目処をつけておく。そして、解禁前夜は前年の残しておいたアユを塩焼きにし、ひとり前夜祭を行う(笑い)。結局、シーズン中もそれ以外の時期も、アユを中心に生活をしていることになりますね。香魚アユ、こんなに心奪われる魚は他にはありません。ちなみに今年の成績は7月9日現在、累計で私は554尾、夫が599尾。じつは夫は釣行日が1日多い(笑い)。これから追いつき、追い抜きます。

(『鮎屋仁淀川』経営・西脇亜紀)

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