2022.03.11仁淀川ぐるめぐり 第4回「地元野菜の魅力をていねいに教えてくれるレストラン」

仁淀川ぐるめぐり 第4回「地元野菜の魅力をていねいに教えてくれるレストラン」

 寒さのなかにも春の陽気を感じるようになったこの頃。芽吹く緑を見ていたら……なんだか野菜が食べたくなってきました! そこで今回は佐川町にある「自然イタリア料理 da zero」で、地元の野菜たっぷりのコースをいただいちゃいます!

 というわけでやってきました佐川町。国道から脇道へ入り、静かな住宅街を抜けていきます。こんなところにイタリアンレストランがあるのでしょうか……

article270_01.jpg ありました! のどかな畑のど真ん中、ブルーの建物がお店です。

 昭和を感じさせる民家に併設された同店。オーナーシェフ・的場篤志さんの義祖母宅の離れを改装する形で、2019年6月にオープン。知る人ぞ知る場所にありながら、料理の評判が瞬く間に広まり、連日予約で満席になるほどの人気店となっています。

article270_02.jpg テーブルが4つ並ぶ店内。オープンキッチンが近くにあり、ライブ感があるのも魅力です。

 現在はコロナ禍対応として昼夜ともにおまかせコースのみ、2日前までの完全予約制となっています。今回は奮発して6000円のお昼のコースを予約しました!

 料理とのマッチングを楽しめるよう、ワインやドリンクにもこだわっている同店。まずは、季節のフルーツを使ったノンアルコールカクテルをいただきながら、メニューに書かれた食材の生産者リストをチェックします。
 佐川町だけでなく、県内各地の生産者の食材を使われています。そのなかの一つには、シェフの義祖母さんの名前もありました。ほっこりしますね。

article270_03.jpg 爽やかなバジルと旬の文旦が好相性の一杯でした!

 「コースを始めさせていただきますね」の一言とともに運ばれてきた一皿めは、10種の野菜と燻製にしたチーズが入ったミネストローネです。

article270_04.jpg うま味がしっかり溶け出していることを物語るスープのお色。

 たくさんの野菜のうま味が合わさったスープは複雑でありながら優しく、最初の一皿にふさわしい味わい。燻製の香りが入ることでその味わいがより引き立っているように感じます。
 野菜はスッと消えていくように柔らかく、チーズはとろーりとろけていく、二つの舌触りにも癒されます。


article270_05.jpg 二皿め! ブルーのお皿で野菜の個性が際立って感じられます。

 二皿めは、アオリイカと旬野菜のバーニャカウダ。オープンキッチンから届くイカの香りに、すでに待ちきれない気分でした!
 絶妙な火加減で柔らかさと程よい弾力感に仕上げたイカは言わずもがな絶品。そこへさらなる感動を与えてくれたのが、一つ一つていねいに調理された野菜です。生で歯ごたえを楽しむものもあれば、揚げてハリハリとした軽い食感に仕上げたもの、ソテーして香ばしさとジューシーさを感じられるものもあり、「野菜ってこんなに表情豊かなんだ!」と改めて実感しました。

article270_06.jpg 続いてはパテの登場です。目にも鮮やかな一皿!

 三皿めは窪川米豚の自家製パテ。クミン風味のにんじんソースや旬の金柑、菜花などが添えられています。黒・黄・緑の色の組み合わせが美しいですね。
 パテはしっとりホロッとほぐれていく口当たりで、熟成されたうま味があります。まろやかなソースや華やかな甘さの金柑など、合わせるものによって印象が変化するのも魅力的です。

 ゆっくりとした流れでありながら、次々と新しい感動を教えてくれる的場シェフ。その世界観にすっかり引き込まれていると、私的に大事件が発生しました!なんと、四皿めの写真を撮り忘れてしまったのです……。

 四皿めは、佐川町の農家さんが育てたというイタリア原産カルナローリ米のリゾット。春菊を加えた鮮やかなグリーンのリゾットで、上には軽く燻製にしたサワラがトッピングされていました。
 あまりにも美しいグリーンに心奪われ、我に返ったときには半分以上食べてしまっていました。私のバカ!

 燻製の香りと葉野菜の優しい風味のマッチング、そして、カルナローリ米のしっかりとした粒感もクセになる逸品。この葉野菜を加えたリゾットは、オープン以来人気を誇るお店の定番メニューとのことで、つくづく写真を撮り忘れたことを悔やみます。
 ここは開き直って「気になる方は実際に食べに行ってください!」と言うしかありません。それぐらい価値のある一皿でもありました。

article270_07.jpg 気を取り直してドリンク二杯め。佐川町の緑茶のカクテルです。気分もさっぱりしますね。

article270_08.jpg いよいよメインディッシュ!プルプルつやつやのお肉です!

 この日のメインは、越知町・松田精肉店の黒毛和牛もも肉のロースト。赤ワインを煮詰めたマルサラソースと菊芋のクリームソース、2色のソースでいただきます。
 最近、高知でもよく見かけるようになった菊芋。正直、これまでおいしいと思ったことがなかったのですが、この一皿で見方が変わりました!
 菊芋の独特の香りと甘さが、濃厚な赤身のうま味によく合います! 菊芋、おいしい‼︎
 お肉はほぼ赤身ですがプルンとみずみずしい柔らかさがあり、わずかに乗った脂身が味に変化をもたらすのも食べていて楽しく感じました。

article270_09.jpg シェフが手打ちしたパスタ。材料の小麦と卵は越知町の農園で採れたもの。

article270_10.jpg 六品めは鹿肉のラグーや仁淀マッシュルームがのったタヤリン(タリオリーニ)です。

 お料理のラストを飾るパスタは、たっぷりのラグーを合わせた食べ応えのある一品。鹿肉の濃厚な味わいに、マッシュルームと九条ネギの香りが合わさり味わい豊か。それでいてパスタは歯切れの良い食感で、軽快にフォークが進みます。
 それまでの料理ですでに満腹感がありましたが「スルスルッ♪」と完食でした。最後の最後に胃袋を鷲掴みにされた気分がします。

article270_11.jpg 季節感満載のデザートも楽しめます。

 食後のデザートは、佐川町産のイチゴをのせたチョコムースです。
 フレッシュのイチゴとイチゴのソースの組み合わせがなんとも贅沢で、とっても美味! また、サクサクのメレンゲ菓子やイチゴのジェラートもトッピングされており、なめらかなチョコムースと少しずつ合わせていくことでお皿の中で味や食感が変化するのも楽しかったです。

article270_12.jpg 食後のコーヒーには自家製の焼き菓子や佐川町のショコラティエによるチョコが添えられています。お腹がいっぱいのときは、お菓子は持ち帰りも可能です。

 食事を終えて的場シェフにお話を伺いました!
 シェフとその奥様はもともと関西のレストランで働いていましたが、お子さんと過ごす時間や子育て環境を大切にしようと思い、奥さまの祖母の家がある佐川町へ移住したそうです。

 野菜を多く使い、その魅力を引き出した料理が多い印象ですが「素材の良さがそうさせているのだと思います」と語るシェフ。
 食材は、親交のある生産者からお店へ直接届けられていますが、内容は”おまかせ”になっており、シェフは届いた食材に合わせてコースを組み立てていきます。なかでも野菜は創作意欲を掻き立てられるものが届くので、自然に野菜の多彩さと個性が際立つ料理になっていくのだそう。
  「リゾットに使っているカルナローリ米も、偶然佐川町のトマト農家さんが育てていたもので、私自身『こんな食材まであるのか』と驚きました。高知の生産者さんはこだわりと自由さがあると感じますね」(的場シェフ)
 おいしいだけでなく、高知の食材の豊かさや人の魅力を伝えてくれる的場シェフの料理。畑の真ん中でぜひじっくりをご賞味ください。

article270_13.jpg 目と鼻の先にあるオープンキッチンで腕をふるう的場シェフ。自分がいただく料理が生まれる瞬間を目にすることができるのも幸せです。

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【店舗情報】
自然イタリア料理 da zero(ダ・ゼロ)

住所:高知県高岡郡佐川町丙3051
電話:0889-20-9603
※現在は完全予約制で営業中。2日前までに要予約(昼4,000円〜、夜6,000円〜)
定休日:火・水・他不定休
●詳細はお店のInstagram、またはFacebookをご覧ください

(仁淀ブルー通信編集部員/高橋さよ)

★次回の配信は3月18日予定。
高校生スペシャル! 私たちが考えた「仁淀川流域を堪能しよう!」 2つのプラン
をお届けします。
お楽しみに!

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