2022.02.25秘境の仁淀川展望地、黒岩スカイラインへ

秘境の仁淀川展望地、黒岩スカイラインへ

 仁淀川の川辺に立つと、周りを囲む山に目が行きます。
 人の気配がない、あの山にはどんな自然があるのだろう?――その探求心を満たしてくれる道が、地元の人の尽力で復活しています。

 仁淀川のほとりにある「スノーピーク一おち仁淀川キャンプフィールド」や「日ノ瀬キャンプ場」に泊まった人は、対岸の山並みが気になったと思います。その、人工物がまるで見えない景色は、里を流れる川としてはなかなか貴重です。

article269_01.jpg 「スノーピーク一おち仁淀川キャンプフィールド」の対岸の山並み。

 でも実は、山並みの尾根に沿って道路が延びています。通称「黒岩スカイライン」。その名に反し、4WDの軽トラック以外はおすすめできない「酷道」であります。

article269_02.jpg 疾走するなら、自転車やランニングなどエコな手段が似合う黒岩スカイライン。

 この道は林道(林業用の作業道)として整備されました。たいていの林道は歩いても面白くないのですが、黒岩スカイラインでは、越知町・佐川町・仁淀川の絶景を求めてトレッキングする人が増えつつあります。
「歩いて楽しめる林道」ならば自転車でも遊べるはずと、今回はマウンテンバイクで黒岩スカイラインに挑戦してみました。

森を駆け抜け、仁淀川の絶景も

article269_03.jpg 黒岩地区から見た黒岩スカイラインの山並み。この向こうに仁淀川がある。

 黒岩スカイラインがあるのは、佐川町黒岩地区に横たわる標高440~470mの山並み。道のりは約9㎞です。「集落活動センターくろいわ」に車を駐車し、マウンテンバイクで「上黒原登り口(標高120m)」を目指します。駐車場としては、旧黒岩中学校も利用可。集落活動センターから上黒原登り口までは約2.1㎞、旧黒岩中学校からだと約1.2㎞です。

article269_04.jpg 集落活動センターくろいわの駐車場。


article269_05.jpg 上黒原登り口にある案内板。登り口さえ間違えなければ道に迷うことはないはず。薄緑色の破線で記された道は荒れ気味で不明瞭なため、おすすめしないとのこと。

article269_06.jpg 上黒原登り口。右の道を登っていく。

 上黒原登り口からは、自転車を漕ぐと前輪が浮くような激坂になります。でも、自転車を降りて押せばなんとかなる。崖に沿うつづら折りや、狭い切通しなど、この急傾斜の道を拓いた先人の苦労を感じながら一歩ずつ前へ。しんどくて無口になると、澄んだ小鳥の声が応援してくれました。

article269_07.jpg 尾根までは急坂。ほぼ自転車を漕げません。

 上黒原登り口から約50分自転車を押し続けると「第一展望台」へ。目に飛び込んできたのは、山また山。その谷間で銀色に光る佐川と越知の市街地は小さく、心細く見えました。大自然が文明を圧倒する風景。人も、人が創造するいろんな物も、本当にちっぽけです。

article269_08.jpg これは「西の展望台」からの眺め。山並みの合間に佐川と越知の市街地が見える。

 第一展望台からもう少し頑張れば、黒岩スカイラインは尾根沿いの比較的平坦な道に。荒れた道でスリルを楽しみながらマウンテンバイクを走らせます。

article269_09.jpg 巨大な一枚岩、遠見岩。

 まもなく黒岩スカイラインのシンボルともいえる「遠見岩」へ。高さ20mの一枚岩で、その頂き(標高445m)まで遊歩道が整備されています。

article269_10.jpg 仁淀川の蛇行と、その水の源である山々。

 登り切れば眼下に仁淀川の流れが。川とはこんなふうに蛇行しながら大地を削り、地形を造るのだというのがよく分かります。そして、これほどの山々が雨を受けるから仁淀川は豊かで清らかなのだと教えてくれる風景が広がっています。

article269_11.jpg 一休みできる展望所が数カ所ある。

 遠見岩から先も、ときに景色が開ける森の道が続きます。落ち葉や岩石で荒れた道ですが、有名メーカーのマウンテンバイクであればエントリークラス(入門機、定価7万円前後)でも、そして初心者でも大いに楽しめるでしょう。トレイルランニング(山道でのランニング)のフィールドとしてもおすすめです。

article269_12.jpg 植林や雑木林の木漏れ日をあびながら走り抜ける。路面はコンクリート舗装と土の道が半々ぐらいか。

 しかし、「平野北展望所」付近から下り道に入ると、「ダウンヒル(山道での下り)」に慣れていない人は要注意です。かなり急な下り坂が麓まで続きます。古いマウンテンバイク(30年目)で挑戦した私たちは、ブレーキを握る手がマヒしそうになり、何度も降りて歩くことに。経験者ならスリル満点のダウンヒルを楽しめるだろうなあ。

article269_13.jpg 平野北展望所から平野口への下り坂。ブレーキの利きが悪いと大変。

 黒岩スカイラインができたのは昭和40年代半ば。地元有志が数年かけて切り拓き、かつては子どもたちの遠足でも利用されたそうです。

article269_18.jpg 黒岩スカイラインは子供づれの家族や、野鳥が多いのでバードウォッチャーにもおすすめ。

 その後は荒廃したのですが、「集落活動センターくろいわ」を運営する住民グループ「黒岩いきいき応援隊」のメンバーが2年ほど前から復活作業を開始。林業をミッションにする佐川町の地域おこし協力隊も手伝い、ルート上にベンチやトイレ、展望所などを整備しました。たくさんの人に楽しんでほしいと、地域では自然を愛する人々を歓迎しています。

■「黒岩スカイライン」情報


article269_14.jpg遠見岩そばの「尾根自然公園いきいき広場」。

・コースタイム(徒歩/マウンテンバイク):
 集落活動センターくろいわ(30分/10分)上黒原登り口(1時間20分/1時間25分)
 遠見岩(35分/20分)茶畑(1時間/40分)平野口(15分/5分)
 集落活動センターくろいわ
 ※マウンテンバイクのほうは、かなり安全運転した場合のコースタイムです。
・地図:国土地理院のホームページから地形図を印刷して使用。

article269_15.jpg「尾根自然公園いきいき広場」のトイレ。

・情報:「集落活動センターくろいわ(8:30~17:15、土日祝日休み)」では、
 黒岩スカイラインの道の状況などを案内している。
・道標:道の分岐などに「黒岩スカイライン」または「スカイライン」の道標あり。
・トイレ:「尾根自然公園いきいき広場」にあり。念のためトイレットペーパーは持参。
・水場:なし。飲料水は持参。
・駐車場:「集落活動センターくろいわ」「旧黒岩中学校」

(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)

★次回の配信は3月11日予定。
「体当たり食レポ『女ふたり仁淀川ぐるめぐり』4 Da zero」をお届けします。
お楽しみに!

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