2021.10.08河原でカウボーイ流ソロキャンプ

星空の下、地面に寝転んで眠る――「ロマンチックなのか、酔狂なのか」という行為ですが、人類の長い歴史のなかでは標準的な夜の過ごしかた。
そんな昔ながらの一夜の再現に、仁淀川はピッタリのフィールドなのです。
日本でのキャンプといえばテントで泊まること。しかし、海外のトレッキングや川下りでは、星空を天井にして眠ることが珍しくありません。とくに、害虫と雨が少ない地域、そしてふさわしい季節であれば。
また、諸外国の暮らしでも、「夜空を見ながら地べたで寝る」という日常は残っています。例えば東欧ジョージアのカフカス山脈に暮らす牧畜民。季節ごとの移牧のため、羊の群れと一緒に片道250㎞も歩く旅において、夜は羊毛のコートにくるまり大地で眠るそうです。

そんな、西部劇のカウボーイの野宿みたいなのを体験するなら、仁淀川はかなりお勧めのフィールドです。広大な河原がそこかしこにあり、しかも過疎地ゆえに、静かに夜を明かす場所を見つけやすい。雨による増水で水没する河原が多いのも好都合。川の水量次第で陸にも川底にもなる、水辺に近い砂礫(されき=砂と小石)の河原を選んで焚き火をするなら、生態系への影響を小さくできそうです。
この日の薪は、現地で見つけた流木のみ(着火時には新聞紙半枚を使用)。白い灰になるまで燃やし尽くしたあとは、焚き火前の状態に河原を戻して仁淀川を去りました。もちろんゴミは持ち帰りです。
このようなカウボーイ流ソロキャンプの準備は簡単。必要なのは寝袋とマット、水筒、ヘッドランプ、ナイフ、ライター、小さなフライパンと鍋と箸ぐらい。思い立ったら気軽に出発できます。

飯も簡単に。ソーセージやイモなど焚き火で適当に焼いたり温めたりできるものを選び、味付けは塩・コショウぐらい。オイルサーディンなどのツマミ系の缶詰にフランスパンなんかでもいい。


カウボーイ流ソロキャンプでの時の流れは、我らの遠い祖先がまだアフリカ大陸にいたころとあまり変わらない。陽が沈む、焚き火をする、星の瞬きと風の雰囲気で天気を占う、煙が目に染みる、薪をくべる――電波さえ遮断してしまえば、そんなところです。もし友と一緒なら、揺れる炎に照らされての語らいが唯一の、そして一番の娯楽になります。

眠りにつけば、遠い祖先の日常に――「か弱いヒト科動物」が獣に怯えていた日常に、さらに近づきます。梢のざわめきに、何か違和感のある臭い(狸か猪か?)にハッとする夜は長い。飯の残り香につられたのか、四足のぼやっとした影が、通りすがりにこちらをチラ見していきました。

カウボーイ流キャンプをするなら
仁淀川でのカウボーイ流キャンプには、いくつか注意点があります。
①季節
虫が少ない10月~3月ぐらいがいい。石を積むなどをして風を避け、冬季用の寝袋を使えば、真冬でも寒さに耐えられます。3月下旬から7月にかけてはチドリが河原の砂礫で繁殖と子育て中。その巣や卵を荒らさないように気をつけましょう。
②空模様
雨はもちろん、強風のカウボーイ流も楽しくありません。急な川の増水にも注意。つまりしっかりと天気予報を見て判断。

③危なくない場所へ
川の急な増水に備え、逃げ道を確保。また、川漁の軽トラの通行妨害をしたくないので、その場所に轍(わだち)がないことも確認。

④流木はあるか
焚き火なしには一つも面白くないのがカウボーイ流キャンプ。とくにソロキャンプだとこれが唯一の娯楽です。
流木は、あるところにはあり、ないところにはない。必死に探しても見つからなければ、その河原はあきらめよう。

孤独を追求するなら、川を下ってカウボーイ流
ところで、カウボーイ流を極めるならカヌーやカヤックの出番。川を下り、陸から近づきにくい河原を見つければ、そこはあなたの王国です。カウボーイ流ソロキャンプの用具は少ないので、一人乗りの小さなカヤックに積めます。

ほとんど人が訪れない河原を見つけてソロキャンプすれば、五感さえわたる孤独な時間が待っています。そして、無事に迎えた夜明けが、いつもとは違って見えるはずです。

(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)
★次回の配信は10月22日予定。
「新連載! 体当たり食レポ「女ふたり仁淀川ぐるめぐり」第1回「居酒屋乾ちゃん」」をお届けします。
お楽しみに!
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