2021.10.22仁淀川ぐるめぐり 第1回「居酒屋 乾ちゃん」

仁淀川ぐるめぐり 第1回「居酒屋 乾ちゃん」

 仁淀川を見るたびにお腹が空いてくる女性編集部員二人が、流域のおいしいお店をめぐる冬季限定の新連載! 第一回目は仁淀川町にある「居酒屋 乾ちゃん」をご紹介(ちなみに「けんちゃん」と読みます)。
 こちらのお店、実は全国的にファンの多い人気店なんです。その秘密は門外不出の「ダシ」にあり! 五臓六腑にしみわたるような美味しさを余すことなくいただいちゃいます。


article260_01.jpg 外観からすでにイイ雰囲気が漂っています。

 というわけで、やって来ました。「居酒屋 乾ちゃん」です。
 生まれも育ちも仁淀川町のご夫妻が昭和43年に創業。昭和50年に起きた土居川の洪水で家も店も流されましたが、奥さんの「故郷から離れたくない」という強い思いにご主人も応え、現在地に店を再建。半世紀にわたって地元の人においしい料理とお酒を提供し続けてきました。
 そして、2021年からは娘さんとお孫さんのコンビに代替わりし、変わらぬ味を引き継いでいます。

article260_02.jpg 手描きの看板からあたたかさが伝わってきます。

 町の人に「乾ちゃんといえば?」とたずねると、必ずといって良いほど「鴨鍋!」と答えます。仁淀川町で鴨? と思う方もいるかもしれませんが、この逸品にはダシのように味わい深い物語が隠れているのです。

 料理ひと筋に歩んできたご主人が、なんと3年以上の歳月をかけてたどり着いたダシの味。その原点は少年時代に食べた「おばあちゃんの味」でした。

 「鍋も煮物もだいたい同じ味つけなんですが、主人はその味がずっと忘れられなかったそうなんです。その味を再現しようと試行錯誤を繰り返していました」
 そう、当時を振り返る奥さん。なかなか妥協しないご主人でしたが、あるとき試食をしたお友達から「うまい! もうお店に出したら?」と言われて、やっとメニュー化する決心がついたといいます。

 そんなこだわりにこだわったダシを使う「鍋」の具材は何が良いか?
 再びそこからご夫妻の試行錯誤が始まるのですが、そのなかで相性がぴったりだったのが鴨肉だったのです。

 とーーーっても気になる鴨鍋ですが、その前に景気づけとして、 やはりダシが決め手の一品を味わいましょう。

article260_03.jpg 娘さんが店主になってからおしゃれにリニューアルした店内。

article260_04.jpg 人気メニューの豆腐ステーキとたまご焼き。

 香りから食欲をそそる豆腐ステーキは、ダシをベースにしてつくった特製のタレがポイント。コクのある甘みと香ばしさのきいたタレが、豆腐を食べ応えのある料理へと格上げしています。
 また、たまご焼きはプルンプルンの食感で、 口に運ぶとダシがじゅわ~っと溢れ出す幸せな食べ心地! 美味しさは言わずもがなです!

article260_05.jpg 高知名物・カツオのタタキも乾ちゃんならではの味です。

 そして、もう一品味わってほしいのがカツオのタタキ!  こちらはご主人オリジナルのレシピでタレをつくっているのですが、それがもう絶品! ほんのり甘めのタレが、炙った香りやカツオの赤身の味わいと絶妙にマッチ。たっぷりしっかりタレにつけて味わうべし!

 ……さて、食欲のエンジンがイイ感じで回ってきたところで、本日のメインディッシュといきましょう!

article260_06.jpg ついに登場! 乾ちゃん至極の逸品です!!

 ババーーーン! 金色に輝くダシ、たっぷりの鴨肉、なるべく地元産にこだわった野菜! これがウワサの鴨鍋でございます!
 10月〜3月いっぱいまでの期間限定メニューで、店内で食べる場合は2人前から注文OKとなっています。

 実はこちらの鴨鍋、お店以外でも楽しむことができるんです。

article260_07.jpg そう、県外にいるみなさんも味わえるんですよ!

 その一つが「お取り寄せ」。
 もともとご主人のお友達から「県外に住んでいる子ども達に食べさせてあげたい」と相談されたのをきっかけに発送を開始し、その後口コミがどんどん拡大。現在は一ヶ月に700箱以上発送する月もあるほど、全国にファンが広がっています!
 娘さん・お孫さんのコンビに代替わりしたのを機に、オンラインショップも開設されていますので、仁淀川町まで行くことができない方はぜひご利用を。

 そして、もう一つの楽しみ方が「テイクアウト」です!
 これまでは3人前から可能となっていましたが、うれしいことに今年から「1人前」のテイクアウト用鴨鍋が発売されたのです。その名も「ひっとり鍋」。

article260_08.jpg ひっとり鍋(1250円・要予約)。「ひっとり」は「一人」という意味です。

 こちらは一人分のダシと具材がアルミ鍋に入っており、お鍋を持っていなくても手軽に鍋を味わうことができます。
 ……となると、もうこれしかないでしょう!

article260_09.jpg 仁淀川の支流・土居川を眺めながらレッツ鍋パーティー!

 今回は乾ちゃんから徒歩10分ほどのところにある「仁淀川ふれあい公園キャンプ場」で鴨鍋をいただくことにしました。
 お鍋のつくり方は簡単!
 袋に入ったダシを鍋に注いで火にかけるだけ。美味しくつくるポイントは、具に入っているニンニクとトウガラシをちゃんとダシに浸かるようにすることです。

article260_10.jpg①袋を破ってスープをアルミ鍋に注ぎます。
article260_11.jpg②ニンニクとトウガラシをダシに浸かるようにしたら準備はOK。

article260_12.jpg③しっかりと火を通します。湯気で霞む土居川もキレイだぜ!
article260_13.jpg④できあがりました。芳しいダシの香りにうっとりです。

 まずはダシを一口……
 ちょっぴり甘めでどっしりと深いうま味……おぉ、これはハマる味!
 濃いめのダシが具に染みこんでいるので、お箸もどんどん進んでいきます。特に、ご夫妻が悩みに悩んでたどり着いた鴨肉の風味とダシの愛称は抜群です!

article260_14.jpg イイ脂が出てるじゃないか! 鴨よ、ありがとう。

article260_15.jpg ダシを吸ったうどんが、これまた格別の美味しさでした。

 かなりボリュームのある一人前でしたが、後を引く味わいでペロリと平らげてしまいました。
でも、ある意味でこれからが本番です……アルミ鍋に残ったダシが怪しげに輝いています……そう、最後に禁断の〆メニューがあるのです!

article260_16.jpg 今回は「余すことなくいただく」のがゴールです。

 乾ちゃんでは、鴨鍋と一緒に〆の雑炊の材料もテイクアウトできるんです。もちろんこちらも一人分となっています。たまご雑炊もありますが、今回はリゾット風雑炊を選びました。

article260_17.jpg ご飯、チーズ、ネギが入ったリゾット風雑炊セット(350円・要予約)。

article260_18.jpgダシの残る鍋にご飯を投入してほぐし、火にかけます
article260_19.jpg美しい川、澄んだ空気、煮立つ雑炊……あぁ幸せです

article260_20.jpgご飯がダシが吸ったらチーズとネギをトッピング!
article260_21.jpg神様……!こんな喜びを味わっても良いのでしょうか!?

 これはもう、ヤバい食べ物です。
 煮詰めてさらに濃くなったダシとまろやかなチーズの織りなす極上のハーモニー。美味しすぎて思わずつぶやいてしまいました。「生まれてきて良かったよ」ってね。

article260_22.jpg 底に焦げついたうどんさえも愛おしく思えます。

 まさに完食です。〆の雑炊をいただいたことでダシを捨てることもありませんでした。目の前の土居川も微笑んでくれているように思えます。

 ちなみに、〆の雑炊メニューは「こんな美味しいダシを残すなんて、もったいない!」というお客さんの声から生まれたメニューなのだそう。家族が大切にしてきた味は、お客さんにとっても大切にしたい味となっているのですね。
 みなさんも、お店で、家で、土居川のほとりで、ぜひ味わってみてください!

【店舗情報】
居酒屋 乾ちゃん

住所:高知県吾川郡仁淀川町土居甲1021
電話:0889-34-2908
営業時間:17:00~22:00
※居酒屋メニューのテイクアウトの注文受付時間は16:00まで/受け渡しは16:30〜20:00。鴨鍋のテイクアウトは12:30頃から可能な日もありますのでお問い合わせください
定休日:日曜、時々臨時休業あり
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(仁淀ブルー通信編集部員/高橋さよ)

★次回の配信は11月5日予定。
新連載! 「仁淀川つれづれリモートワーク日記」第1回(お仕事編)をお届けします。
お楽しみに!

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