2019.07.12水ぬるむ清流につつまれる、それがボディーラフティングだ!
日本には1万4062もの一級河川がありますが、「泳ぎたくなる、泳がずにはいられない清流」はかなり珍しい存在。そのなかでも5本の指に入る清流・仁淀川を訪れたなら、泳ぐだけでなく、身体ひとつで流されてみるのはいかが?
7月1日、国土交通省が全国の一級河川の水質現況をまとめて「水質が良好な全国の17河川」を発表しました。その中で四国では唯一仁淀川が選ばれました。水質抜群が仁淀川の大きな魅力であることはもちろんですが、「仁淀川の魅力は、ずばり、夏の水温が低くないこと」などというと、「はあ? 」な人が多いのでは?
実は、日本全国を見渡しても、「澄んだ流れ、自然豊か、あまり冷たくない=泳いで楽しい」と三拍子そろう清流は少ないのです。それにくわえて「穏やかな川面」まである仁淀川ゆえに可能なのが、身体ひとつで川を下る「ボディーラフティング」です。
気分になれるボディーラフティング。
ボディーラフティングのコーディネート
ボディーラフティングの格好はこんな感じです。ライフジャケット、流れにもまれても脱げない履物、水中眼鏡の3点セット。
なかでも肝心なのはライフジャケット。胴体をぎゅっと締め付けるぐらいフィットするものを選びましょう。じゃないと泳ぎにくく、いざというとき危険を回避できません。
どこで流されるか、これポイントです!
身支度が整ったら、つぎは場所選び。水面が穏やかで、流れが速すぎない区間が安全。
避けたいのは、いわば「川のブラックホール」があるところ。例えば川にある人工構造物(いわゆるテトラポッドなど)や、岸辺から川に倒れた木々は超危険。川の流れは(川に流されているものは)、積み重なったテトラポッドの隙間や、木々の枝葉のあいだに吸い込まれていきます。
岩があって白く波立つような場所も避けましょう。ライフジャケットを着ていても流れに飲み込まれることがあります。
※安全には留意して、筆者が実験台になりました。
流され方の基本
では流れのなかへ進みましょう。
●基本姿勢その1は「ラッコスタイル」。
こんな感じでのんびりと流されていきます。
目の前に障害物が迫ったら、足でけって避けます。
なぜラッコスタイルなのか?
実は、肝心なのはラッコスタイルというより、「両足を上げておく」こと。立った姿勢で流れていると、川底にある岩や沈んだ木、タイヤや鉄筋などに足を引っかける恐れがあります。足を引っかけると、状況によっては身体が川の流れに押され、引っかかった足が外れないばかりか、流れに飲まれて沈んでしまうのです。
●基本姿勢その2は「クロールスタイル」。
障害物が少なくておとなしい流れのときにおすすめで、アクティブに、そして水中を眺めながら川を流れていけます。
また、流れのなかで、岸の方向へ移動したいときもクロールスタイルで。そのときは岸を真正面に見て泳ぐのではなく、やや上流に角度をつけて泳ぎます。
というのも、岸へとまっすぐに泳いでも、川に流れに押されるので、たどり着くのは目標のずっと下流。流された先の地点に危険な障害物や荒瀬があるとシャレになりません。下の図のように、流れに対して直角ではなく斜め上流に向かって泳げば、効率的に岸へと近づいていきます。
ところで、岸にむかって泳いでいくと「エディライン」を横切ることがあります。「エディライン」とは「相反する流れの境界線」なのですが、よくわからないでしょうから下の画像をご覧ください。
川の流れに岩などの障害物があると、その下流側にはエディ(淀み)ができます。また、流れの障害物がなくても、早瀬の隣にはエディができます。このエディと、下流へ向かう流れとの境界がエディライン。そこでは川底へと沈んでいく流れが発生します。
強いエディラインの場合、そこに人が入ると、まるで「河童に足を掴まれたように」沈められます。河童伝説はエディラインが関係しているのかも……
それはともかく、強いエディラインが発生するような流れではボディーラフティングしないのが賢明です。
川のプロに手ほどきしてもらえば安心
身体ひとつで川を下るなんて、ほとんどの人が初体験でしょう。不安であれば、仁淀川のラフティングツアーを利用してはいかがでしょうか。 仁淀ブルー通信2019.05.17号記事で紹介した各社のツアーでは、増水などによる危険がないかぎりボディーラフティングが含まれています。ラフティングガイドが「ここ、大丈夫ですよ」と安全確認してくれますので、とくにお子さん連れにはおすすめです。
世界に自慢したい、夏の仁淀川
実のところ、「きれいで、冷たすぎず、安全」な川は、世界を見渡してもまれな存在です。私の記憶をたどれば、たいてい濁っている(タイ)、紅茶色(英国)、澄んでいるがひどく冷たい(ヒマラヤやアラスカ)、温かい川だけどジャガーや毒蛇やワニがいて油断ならない(コスタリカ)など、泳ぐ気がしぼむ川ばかりでした。外国を旅すると毎回、「高知県の泳げる清流」を懐かしんだものです。
流れて楽しい夏の仁淀川。高知県外の人はもちろん、わざわざ海外からでも遊びに来る価値があると思います。準備万端で安全にお楽しみください!
★次回の配信は7月26日。
「日本でただ一人、プロの女性鮎釣り漁師に友釣りを習う」です。
お楽しみに!
(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)
●今回の編集後記はこちら