2021.06.04新しくなった「うを兼」の楽しみ方を、食べながら考える。

新しくなった「うを兼」の楽しみ方を、食べながら考える。

 立ち食いスタンドのある鮮魚店として話題を呼んでいた、いの町の「魚兼」がすぐ近くに移転オープンし、立派な一枚板のカウンターを持つ”座れるお店”になっていました! 新しい「うを兼」はどう楽しむべきか、頭と胃袋で考えます!

 というわけでやって来ました、うを兼さん! 以前営業されていた鮮魚店の位置から北へ5分ほど歩いた場所に移転されています。
 店構えは堂々たる風格があり、さらに、私が普段行き慣れていない「割烹料理店」ということで、いささか緊張いたしますが、私ももういい歳をした大人です。何食わぬ顔して暖簾をくぐります(文字通り何も食べていないのでお腹もペコペコです)

article250_01.jpg とても美しい造りの外観。店内入口の横には移転前にも目にした冷蔵ケースがあり、かつての鮮魚店時代を思い出します。

 お昼は「まかない(1100円)」、「お弁当(1650円)」、「ミニ懐石(3850円・5500円、どちらも要予約)」の全4種類のメニューから選ぶことできます。今回は5500円のミニ懐石を予約しました。
 旬のものや、走りと呼ばれる出始めの食材をいただけるようになっており、訪れるタイミングによってお料理の内容は変化します(今回ご紹介するのは5月某日のラインナップです)

article250_02.jpg初夏を感じさせる涼しげなガラスの器で出された先付け。

 まずは地元の滋味豊かな味が登場。みずみずしい、いの町産ナスに、仁淀川の鮎の内臓の塩辛を添えた一品です。川魚の内臓のイメージを覆すほどきれいで優しく、豊かな風味が広がる自家製の塩辛。おいしすぎて器に残った汁まで飲み干してしまいました。

 うっとりする私を見て「お酒をいただきたくなるでしょう?」とご主人。はい、もう、すっかり飲みたいです。
 というわけで、さっそく新しいうを兼の楽しみ方を見つけました!

うを兼の楽しみ方 その1
【料理とお酒を一緒に味わうと、より一層幸せ】

 繊細なお味なので日本酒やワインを合わせたい気分。ドライバーさんやお酒が飲めない方はスパークリングワイン風のノンアルコールドリンクを合わせるのがおすすめです。
 ここからお料理は一品食すごとのナイスタイミングで運ばれてきます。

article250_03_1.jpg前菜は、春の苦みを感じる山ウドの酢味噌和え、地元産長芋のナマコの卵巣の自家製塩辛添え、塩だけで煮たのに、うま味が濃厚なうすい豆。
article250_03_2.jpg5月ならではの一品である、ちまき寿司。海老の下には仁淀川産の山椒の葉が隠れており、爽やかな風味が広がります。

article250_04_1.jpg瀬戸内産のハモと新潟産のジュンサイのお椀。繊細でありながら、膨らみのあるうま味を感じます。
article250_04_2.jpg鮮魚店の本領を感じさせるお造り。ただ「うまい」のひと言に尽きます。貴重な水前寺海苔も添えられています。

article250_05_1.jpg同じく瀬戸内産のハモと香り高い地元産ゴボウ、土佐ジローの卵の鍋物。五臓六腑にしみわたるうま味。
article250_05_2.jpg太平洋産のサワラの西京焼きは京都産の味噌を使った味噌床の深〜い香味がたまりません。シャキシャキな高知産ミョウガと繊細な口当たりの卯の花のお寿司も絶品!

article250_06_1.jpg初夏を思わせる色をした揚げ物は、一寸豆とゆり根のかき揚げ。最高に香ばしい音の後、ホクホクとした食感が。素朴でもうま味にたくましさを感じます。
article250_06_2.jpgお食事に添えられたタケノコのしぐれ煮や、仁淀川産山椒が香るちりめん山椒なども、すべて侮れないおいしさです。

 私の稚拙な表現ではお伝えしきれないほど、さまざまな驚きや感動がありました。本当に幸せな時間です♡

 岡﨑さんは三代目として鮮魚店「魚兼」を継ぐ以前は、京都の料理店で厳しい修行をしてきた生粋の料理人。日本全国の本当においしい食材についての知識も豊富で、全国から取り寄せた食材も数多く登場します。
 一方で、いの町や仁淀川流域、高知県内で採れた食材もふんだんに取り入れられていました。日本を代表する食材と知る人ぞ知る地元の食材が、一つの器のなかで見事な競演をしている……うを兼の真骨頂は、ここにあるのかもしれません!

うを兼の楽しみ方 その2
【地元食材も、全国から厳選した食材も、同時に堪能する】

「例えば、いの町の枝川地区には芋類の栽培に適した良い赤土があるんです。そこで育つ長芋は、京都や銀座で出回っているものにも引けを取らないと思いますよ。それに、物流が早くなったといえども、生産者から市場や料理店を経て、お客さまの口へ届くまでに都会では時間がかかります。収穫したてのものをすぐに味わえるというのは、一番のぜいたくですよ」
 そう教えてくれた岡﨑さん。とてもぜいたくなお料理をいただいているんだなーと、顔が一段とニヤけてまいりました。

article250_07_1.jpg最後は甘味の葛きり。なんと目の前で鍋を火にかけ、混ぜて、冷やして、切って完成された正真正銘のつくりたてです!!!
article250_07_2.jpg「つくりたては葛きりはこんなにおいしいのか!」と驚愕。忘れられない一品となりました。

 一つ一つの食材の時季や産地だけでなく、その食材がおいしい理由まで聞き心地の良い語りで教えてくれる岡﨑さん。
 語れるようになるために専門誌を読み込むなど日々の努力も欠かさないそうです。岡﨑さんならきっと、ただ料理を提供するだけでもお客さんを満足させられるはずですが、それだけで終わらせない理由の一つに、こんな想いがあるといいます。

「さまざまな食材を通して、土地柄も含めて仁淀川流域を楽しんでいただきたいんです」

 川だけでなく、その源である「山」やその中間地点である「町」にも宝物がたくさんあると考える岡﨑さん。
 最後に見つけた、うを兼の楽しみ方は、これしかありません!

うを兼の楽しみ方 その3
【仁淀川流域のおいしさを知る!楽しむ!】

 うを兼のお料理には、これまで知らなかった仁淀川流域の魅力が満載でした。一品食べるたびに流域のことを知り、さらに好きになっていく自分がいたように感じます。

 最後に岡﨑さんはこう話してくれました。
「なぜこの時期にこの食材が楽しめるのか、そこには物語があると思うんです。その物語と一緒にお料理を楽しんでいただけると嬉しいです」

 今回は取材ということで特別にカウンターでお料理をいただきましたが、通常お昼はテーブルと座敷のみの利用となっています。
 岡﨑さんの食材やお料理の解説に耳を傾けながら過ごしたい方はぜひ夜にご利用を! 夜は予約制になっており、メニューは「おまかせ懐石料理(11000円)」のみです。

article250_08.jpg 「仁淀川を思い浮かべていただけるようなお料理を心がけています」と岡﨑さんご夫妻。おいしい料理と楽しい時間をありがとうございました!

【店舗情報】
割烹 うを兼(うをかね)

住所:高知県吾川郡いの町1184-7
電話:088-892-0216
営業時間:11:30~14:00、夜は17:30~要予約
不定休
駐車場あり
※貸切や臨時休業もあるので最新情報はFacebookでご確認を。

(仁淀ブルー通信編集部員 高橋さよ&カミオカミヤビ)

★次回の配信は6月18日予定。
「新しくなった山荘しらさに泊まる」をお届けします。
お楽しみに!

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