2021.02.26「リバーサイドキッチン」第4回 焚き火で楽しむ豪快キャンプ料理「仁淀ボンバー蒸し」

「リバーサイドキッチン」第4回 焚き火で楽しむ豪快キャンプ料理「仁淀ボンバー蒸し」

 「リバーサイドキッチン」は今回が最終回。いままで春夏秋の3回にわたり高知の豊かな食材を使った野外料理をRKC調理製菓専門学校校長の島村昌利校長に伝授してもらい、あわせて編集部が厳選した仁淀川河畔の野外キッチン適地を紹介してきました。4回目の冬編は河口近くの河原にキッチンを設営して焚き火を使って手軽にできる豪快なキャンプ料理に挑戦します。

 今回、島村校長が用意したメニューは野菜をたっぷり加えた白身魚のホイル焼き。3重にしたアルミホイルの中に封じ込めた具材を、そのままたき火の炎で炙って蒸し焼きにするという仕掛けです。
 島村校長と向かったのは仁淀川河口のまち、土佐市。まずはここで料理のメインとなる魚を調達します。土佐市の中心市街地をスルーして国道56号線を須崎市方面に進み、マルナカの信号を右折すると左手に鮮魚店「旬鮮さかなの森澤」が見えてきます。「白身魚なら何でもいいよ」という島村校長とお店の中をのぞいてみます。

article242_01.jpg このマルナカを目印に右折します。

article242_02.jpg 旬鮮さかなの森澤。

 ショーケースには新鮮な土佐湾の魚がずらり並び、そのバラエティの豊富さに驚かされます。その「さかなの森澤」で島村校長、土佐湾獲れハマチの半身を調達しました。このショーケースいっぱいに魚が並ぶのはお昼過ぎなので、隣接の直営レストラン「稲月(いなつき)」でランチを食べた後、お土産に魚を買って帰るファンも多いとか。ちなみに「稲月」は仁淀ブルー通信編集長秘蔵のランチ処だそうです。

article242_03.jpg 土佐湾の鮮魚が所狭しと並びます。

article242_04.jpg 稲月は森澤直営のレストラン。

 今回の野外キッチンに選んだ場所は土佐市を流れる仁淀川の最下流部、国道56号線に架かる仁淀川大橋近くの河原です。高知市側から仁淀川大橋を渡り終わるとすぐ左に折れ、堤防の上の道路を下流に向かってしばらく進むと河原への降り口があります。ただそこには写真のようなコンクリート製の狭いゲートがあり、普通車まではギリギリ入れますが、大型車はムリなので要注意です。

article242_05.jpg狭いゲート。普通車まではなんとか通れます。

article242_06.jpg国道の橋から少し下流の広大な河原が今回のキッチン。

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 じつはこの河原、毎年12月1日の仁淀川の落ちアユ漁の解禁に多くの釣り人が集まる名所。しかしこの時期はまったく人の気配はなく、緩やかに流れる仁淀川からの水音も聞こえません。かすかに川岸の疎林から漏れ出てくるホオジロの鳴き声が聞こえるだけです。
 こんな人気のない広い河原で誰にも気兼ねせず、たき火をしながら料理ができるのもこの季節ならでは。ただし、河原での裸火のたき火は環境破壊につながるので御法度です。そこで編集部が用意したのは「焚き火台」。キャンプ用品メーカー・スノーピーク社の製品で、河原を汚さずに手軽にたき火を楽しむことができる優れものです。(焚き火台、焚き火台を囲むテーブルはのちほど詳しく紹介します) 

article242_07.jpg下流に来ると河原が開けていて気持ちがいい。

 たき火の準備は編集長に任せて、島村校長は慣れた手つきで料理の準備に取りかかっています。「今回の料理は本当に簡単。食材を切ってホイルに包むだけだから。具材も好みで色々変えてみるのもえいね」(島村校長)。

article242_08.jpgリバーサイドキッチン専属シェフの手際の良い準備。

さて、今回の料理のレシピは以下になります。

【食材(2人前)】
  ・白身魚(今回はハマチの切り身) 2切れ
  ・あさり 200g
  ・タマネギ 50g
  ・シメジ 100g
  ・ブロッコリー 80g
  ・京ネギ 30g
  ・トマト 1個(ミニトマトでも可)
  ・大葉 2枚
  ・塩、胡椒 少々
  ・オリーブオイル 少々
  ・醤油 少々
  ・白ワイン 少々

article242_09.jpg見た目もカラフルな具材たち。

 野菜はそれぞれ一口サイズにカット。「ブロッコリーのような火の通りにくい野菜は小さく切っておくのがコツだよ」(島村校長)。

article242_10.jpgパプリカが入ると彩りがいっそう華やかになります。

article242_11.jpgブロッコリーは火が入りやすいように細かく。

article242_12.jpg他の野菜も一口サイズにカットして散らします。

 具材の準備ができたらいよいよアルミホイルの出番です。薄いお皿の上に互いちがいに3枚重ねます。風で飛びやすいのでここは二人で作業したほうがよさそうです。

article242_13.jpgアルミホイルを3重にすることで、焚火の高温に負けない強さになる。

 最初にタマネギ、シメジをホイルの上に並べます。「タマネギとシメジはハマチの座布団のイメージ。野菜を敷くとハマチが焦げつかずにおいしく仕上がるんだ」(島村校長)。

article242_14.jpgいちばん下にタマネギとシメジの座布団を。

 「座布団」の上にハマチの切り身を皮付きのまま座らせます。事前に軽く塩胡椒を振っておき、周囲にあさりを散らしたらほかの野菜を盛り付けていきます。さあ、アルミホイルの上が一気に華やかになりましたよ。

article242_15.jpgハマチの切り身に軽く塩胡椒をしておきます。

 調味料はお好みでそれぞれ適量加えます。醤油やワインはあらかじめ小さい容器に小分けにして持って行くと現場で使いやすいです。

article242_16.jpg細かい容器に入れてくると便利!

 下ごしらえができたらいよいよたき火編。炎が上がっている状態から少し時間を置き、熾火(おきび)になったころが調理に適しています。炭を平らにならしてスタンバイOK。それを確認して具材を3重アルミホイルでしっかり包みます。

article242_17.jpg重ねたホイルに隙間ができないようにしっかり包みます。

 いよいよ、この銀色の塊をどーんと網の上に乗せますよ。事情を知らない人が見たらいったいこれから何が始まるのかと驚く光景でしょう。そう考えたらなんだかとても楽しくなってきました。余ったネギももったいないので一緒に網に乗せ、コロコロ転がしながら具材に火が通るのを待ちます。

article242_18.jpg銀色の塊がたき火の上に鎮座の図。迫力があります。

 数分で銀色の塊の中からグツグツと音が聞こえはじめ、10分ほどするといい香りも漏れ出してきました。「もうええんやないろうか。ちょっと見てみよう」と校長先生、何度も開けたり閉めたりしていますが大丈夫、アルミホイルは3重です。ちょっとやそっとで破ける心配はありません。「お、もうええで。美味しそうにできちゅう」(島村校長)。

article242_19.jpgそろそろ中の様子が気になります。

 キャベツの皮を剥ぐように1枚ずつアルミホイルを開いていきます。そして中から湯気と一緒に現れたのは…。どうですおいしそうでしょ。

      湯気とともに現れたのはカラフル野菜とハマチのホイル蒸し。

article242_20.jpgアツアツをいただきましょう。

 「あー、おいしくできちゅう。あさりもパカっと開いていい出汁がでちゅう」(島村校長)。「お、イタリアンな感じ。スープがとっても美味しいから、ここにパスタが入ってもいいよね」(黒笹編集長)。たまらず私も一口。ふっくらと仕上がったハマチ、甘さが凝縮した冬野菜、あさりの出汁、オリーブオイルが口の中でイタリアンなハーモニーを奏でます。これならばフランスパンやチーズも合いそうだなあ。そんなことを考えながら鍋の中をつつきつつ、静かな河原でしばし贅沢な時間を過ごします。

article242_21.jpgハマチがふっくら美味しい!(島村校長)

 そんな素敵な食事タイムも終了、焚き火の残り火を眺めながらしばし仁淀川の冷たい川風を頬に受けながら満腹の余韻を楽しみます。今も昔も変わらず人が川に惹きつけられるのはなぜだろう。先ほどからミサゴが上空をゆっくりと旋回しています。ミサゴは上空から水面にダイブして川魚を捕まえる「空飛ぶ川漁師」。落ち鮎の季節を惜しみながら、水中の小魚でも狙っているのかもしれません。
 そんなことを考えていると、たき火を眺めていた編集長が「今回の料理名を考えておくの忘れた。仲田くん考えて!」
 ということで、熟慮の結果、銀色に輝くその不敵な姿を爆弾になぞらえて「仁淀ボンバー蒸し」という物騒な名前を付けてみましたが、島村校長、編集長いかがでしょう。

article242_22.jpgしばし焚き火を楽しみます。

article242_23.jpg今も昔も仁淀の流れは流域の人々の生活を見守ってきました。

◆今回焚き火に使用した道具はこちら。
【焚き火台】
焚火台Lスターターセット(SET-112S) | スノーピーク(Snow Peak)

【テーブル】
ジカロテーブル

(仁淀ブルー通信編集部員 仲田和生)

★次回の配信は3月5日予定。
「越知ぜよ!熱中塾2月」全力集中レポート(後編)をお届けします。
お楽しみに!

●今回の編集後記はこちら