2018.10.26<仁淀川野鳥生活記>4 カワセミの仲間

<仁淀川野鳥生活記>4 カワセミの仲間

今回は、日本のカワセミの仲間をご紹介します。
日本で繁殖しているカワセミの仲間は、アカショウビン、ヤマセミ、カワセミの3種です。アカショウビンは夏鳥として渡来し、川というよりは、きれいな渓流を含んだある程度大きな木のある森に住んでいます。くちばしから爪先まで真っ赤であり、キョロロロロ〜と尻下がりに鳴きます。とても印象的な姿であり鳴き声であるので、いちど出会うと忘れることはできない鳥といえます。



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5月の早朝、仁淀川町の写真仲間から「アカショウビンのつがいが巣穴を掘っているけど、きませんか」と電話があり、「おお、ありがとうすぐ行きます」と場所を聞けば、安居(やすい)渓谷の背龍の滝(せりゅうのたき)の谷向こうという。これで、ぴんときました。断崖絶壁にツガ(?)の大木があり、幹の上部が折れてムササビでも入りそうな穴があいており、行くたびに双眼鏡でのぞいていたからです。鳥の写真は、日頃から巣を作りそうな木や食べられる実のなる木などをチェックしておくことも必要なことなのです。が、体はひとつなので、情報をいただくことは大変にありがたい。現場に到着すると、つがいは代わる代わる幹に突進して穴を開けようとしています。元からあった穴とは別の場所をつついていました。しかし、アカショウビンのくちばしは、キツツキのようには強力ではないので、まる一日トライして諦めてしまった、残念。

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アカショウビンは、大木に開いた自然の穴や、腐った幹などに自分で穴を開けて子育てします。土佐では、軒先に作られたスズメバチの巣を利用することもあり、たまに新聞紙面をにぎやかしたりしますね。普通は、古巣を利用するのですが、聞いた話では、まだスズメバチが使っている巣を襲い、太いくちばしで蹴散らして乗っ取ったこともあったようです。

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鳥のなかには、子育てのときに「なわばり」を持つものがおり、カワセミの仲間も「なわばり」意識はとても強いです。カーブミラーに写る自分の姿を侵入者だとおもって攻撃しているのを見ることもたまにあります。アカショウビンの場合は、一ヶ月も攻撃し続けることはありませんが、次のヤマセミなどは、けっこう深刻だったりしますね。

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アカショウビンは、魚もたまに食べますが、カエル、トカゲ、小さなヘビ、カタツムリ、大きなムカデなど、川というよりは森の恵みを堪能しています。

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両親の運んでくる森の惠をいっぱい食べて成長し巣立ったヒナ。東南アジアへの旅を無事に終えて、再び帰ってきてくれますように。

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ヤマセミは、白と黒の鹿の子模様で頭には冠羽を戴き、シックでおしゃれな姿をしています。川の中流域から上流部に住んでおり、一年中見ることができます。

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ヤマセミは、赤土の垂直に近い壁に巣穴を掘って子育てします。しかし、赤土の壁は道路の壁などに多く、そこで問題になるのがカーブミラーです。巣穴堀をするヤマセミは、カーブミラーに写った自分を侵入者だと思い攻撃しているのですが、かなり縄張り意識が強い鳥だし、しかもメスの方がより攻撃的なので、しつこく2ヶ月近くも攻撃を続けたメスもいました。卵を産む時期にこれでは、繁殖にも影響があるだろうと思うのですが・・・

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アカショウビンの場合は、ミラーに当たる寸前に力を抜いている気配がありましたが、ヤマセミは、まともにぶつかっていきます。時には脳しんとうをおこしたかのように地面でぼんやりすることもあるほどです。かんしゃくを起こして、ミラーに噛み付いてみたりとつい笑ってしまったりするのだけど、笑うところではありませんね。

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カワセミは、大変人気のある鳥です。背中のコバルトブルーも、夕方の光線でみればエメラルドグリーンに輝いていたり、とても美しい鳥です。川の上流部から河口まで、ときには波の静かな内湾などにもいて、生息範囲は広いです。

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雌雄同じ色ですが、一点だけ違うのは、メスの下くちばしは、赤い色をしているところ。繁殖期になってつがいになると、仲良く並ぶことが多くなります。メスは、ピリピリと鳴きながらオスに甘え、オスは頑張って魚を捕ってきてメスにプレゼントします。求愛給餌という行動です。
カワセミの仲間は三者三様、それぞれが独特の強い個性を放っています。これらの鳥たちが、いつまでも身近な仁淀川で見られますように。

(野鳥写真家 和田剛一)
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