2017.12.15「仁淀川いきものがたり」冬だって虫は生きている!
ちょっと前まで、トンボやチョウが飛んでいたのに、12月になったらすっかり見なくなった。寒くなると元気に動き回る虫たちが少なくなる。生き物好きには寂しい季節だ。では、そんな彼らは一体どこに行ったんだろう?
虫の越冬スタイルには「タイプ」がある
どんな虫でもなんらかの形で冬は乗り越えているわけで、いなくなったわけではない。
とくに仁淀川の河口から中流域は、河川が広く虫探しには絶好な環境。虫好きにはたまらない冬の虫探しのスポットなのだ。
虫の仲間はそれぞれの工夫で冬を乗り越えている。
例えばチョウは、卵・幼虫・サナギ・成虫とすべてのタイプで越冬する。
みなさんがよく知っているアゲハチョウは、サナギの姿で冬を乗り切る。卵やサナギは寒さに強いというイメージがあるが、じゃあ、幼虫とか成虫はどうなんだ? 幼虫や成虫はいかにも寒さには弱そうだ。
幼虫で越冬するものには2タイプある。
(1)そのまま餌を食べ続け動いているものと、(2)動かずじっと堪えるタイプだ。
動かないタイプは冬になるまでに寒さに耐えられる体に変化する。
一方、成虫はチョウの形のまま、枯葉や木の隙間など暖かそうなところを見つけて寝て過ごす。この記事の巻頭の写真のチョウは、シジミチョウの仲間のムラサキツバメ。成虫で越冬する。シジミチョウの仲間は数種類いる。
冬でも暖かい日が続いたりすると成虫で越冬するタイプのチョウは、日なたの場所にに飛んでくることがある。もちろん冬だから、そこに餌はない。でもきっと陽ざしは浴びたいんだな!
さて、幼虫やサナギの形で冬を過ごすチョウたちにもいろんなタイプがある。
チョウの越冬だけをとっても、こんなにいろいろな発見があるなんて面白い。
どうですか、ちょっと虫探ししたくなりませんか?
冬の宝探しに行こう
ちょっとした山や川に行くと腐りかけた朽木を目にすることがある。キャンプでは、たきぎのために拾ってきても、あっというまに燃えてなくなりそうやつ。その中でも少し大きめなやつを見つけたら、スコップや移植ゴテで壊しながら虫を探してみよう。
これが意外と楽しい。いろいろな生き物が出てくる。
まずは、ひっくり返す。朽木の下側の地面に接している部分。隠れ家としては手っ取り早いのか、ここにはいろいろな生き物がひそんでいる。
水辺や田んぼに近いとカエルやカナヘビなども見つかる。その朽ち木によっては、カブトムシの幼虫も出てくる。
次に木を割って探す。ゴミムシの仲間やカメムシ類などは成虫で越冬し、なぜか集団でよく見つかる。みんなでいると暖かいのかな?
柔らかくなった木を壊していくと、クワガタの幼虫やカミキリムシの幼虫が出てくる。そして、驚くことに真冬なのに、クワガタの成虫も出てくる(コクワガタ)。
さて、水辺や田んぼに行けば、また違った種類の虫たちが見られる。
虫だけじゃない。小さな生き物たちもヌクヌクの場所を見つけて厳しい冬をやり過ごし、春を待っている。
どうです? 寒いから動きたくないなんて言わないで、ちょっと気になる生き物を探しに出かけて見ませんか?
都会でも生きものが越冬中!
都市や町なかでも虫は見つかる。こんなとこに虫なんかいるの? はい、いるんです。
綺麗に整備された公園や街路樹も、隠れ場所さえわかれば意外なところで簡単に見つけられる。たとえば、公園にある木の名札。これをそっとずらすか、ひっくり返してみよう。ほら裏側に隠れていた。
クモやテントウムシやカメムシなどは成虫で越冬するものが多い。
街路樹なんかではヤモリが見つかることもある。冬の生きもの探しは、見つけやすい隠れ家にいるので意外に探しやすい。
仁淀川のように海から山奥まで起伏に富んだ環境では、様々な生き物が越冬している。自分の好きな生き物はどんな形で、どんな場所で越冬しているのか想像しながら、探偵にでもなった気分で探してみよう。
奥山英治(日本野生生物研究所)
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