2017.11.17生姜の収穫風景に、次世代農家の姿を垣間見る

生姜の収穫風景に、次世代農家の姿を垣間見る

いの町の畑に賑わいの季節到来! 11月、それは特産品である生姜の収穫のとき。その様子を取材したのですが、なんだかイケてる雰囲気が……。これからのトレンドは、農業×アウトドア!?

 高知県の生姜生産量は全国一で、いの町はその栽培発祥の地。収穫期である11月の生姜畑は農作業の人で賑わい、慌ただしそうな光景がこの地域の風物詩になっています。
「今年は10月の終わりごろから収穫を始めて、大黒さまの祭りまでには収穫を終えたいですね」とは、生姜など根菜を専門にしている刈谷農園の三代目、刈谷真幸さん(43歳)。大黒さまというのは奈良時代創建の椙本(すぎもと)神社のことで、その秋祭り(11月23日)が終わるとこの地域に霜が降りるのだそうです。
「霜にやられると生姜がいたみ、そこから腐りやすくなり、保存が難しくなる。だから霜が降りる前に急いで収穫しないといけないので、畑に人が増えるんです。」

article_109_01.jpg(1)畑で育った生姜。
article_109_02.jpg(2)これを人力または機械で引っこ抜く。

article_109_03.jpg(3)茎をハサミで切っていく。
article_109_04.jpg(4)丁寧にケースに詰めて、冷蔵倉庫で保存、出荷を待つ。

 刈谷農園の生姜畑の広さは1町。今年は降るべき時に雨が少ないなど、天候不順のため収穫量は少な目とのこと。予想収穫量は約20㎏が入るケース2000箱ぐらい。それを10人前後で収穫しているのですが、彼らが醸し出す雰囲気に私は注目しました。なんだか普通の農家らしくないのです。けれども自然児の匂いはする。「パタゴニア」など有名アウトドアブランドの服を着ている人もいます。そして刈谷さんの肌の黒さは、農作業だけで焼けたのではないことが明らかであります。
「収穫しているのはローカル(この言い方! サーファーらしいなあ)もいますが、移住してきた人や、山梨のブドウ農家の人もいます。サーフィン仲間のつながりで手伝いに来てもらっているんです。」

article_109_05.jpgサーファーが農業。心なしか、のんびりとした収穫作業に見えます。

 じつは今、アウトドアスポーツ愛好家やアウトドア用品会社において、第一次産業(農林水産業など)や食への関心が高まっています。登山やサーフィン、カヌー、釣りなどを楽しむためには、健全で豊かな自然環境を残していかなければならない。そのためには持続可能な方法での食や資源の確保が大切だということで、第一次産業や食の世界に関わりを持とうとするアウトドアピープルが増えているのです。
「昨日はノースフェイス(有名アウトドアブランド)のスタッフもこの生姜畑を見に来ましたよ。越知町にはスノーピーク(アウトドア用具メーカー)が監修したキャンプ場ができるじゃないですか。だったら、いの町はノースフェイルやパタゴニアと組んで、何かできないかなあ。」

article_109_06.jpg刈谷農園の刈谷真幸さん。将来、生姜栽培を次の世代に任せたら、長いサーフトリップに出るのが夢。

 刈谷さんは有機無農薬での生姜栽培にも取り組んでいることもあり、大都会の料理店やシェフ、食に関心があるグループや農家などとのつながりをいくつも持っています。そのネットワークを広げながら、これから面白いことが始まりそうなのです。
「うちの生姜畑の端にトレーラーハウスがあるでしょう。それを拠点に、刈谷農園や知り合い農家の農産物を販売したり、料理を提供するカフェを始める予定です。名付けて『サーフィンファーム』。スケートボードで遊べるジャンプ台とかも設置したいですね。東京からこだわりのシェフを呼んで、とれたて野菜でグルメなランチとか、グランピング的なイベントもやりたい。」
 そして、「それいいね!」と、サーフィン好きな農家がのってきたらいいなと刈谷さん。
「例えば、『サーフィンファーム・山梨』みたいな感じで増えていって、それぞれ自慢の農産物で交流できるようになったら面白い。」

article_109_07.jpg生姜に限らず、日ごろ何気なく食べている野菜たちは、農家の個性や想いの結晶なんだなあ。

 アウトドアと農業という生き方。なんだか新鮮な組み合わせですが、考えてみればどちらも自然が相手。生き方としては実にナチュラルなのかもしれません。
 そんな次世代の感覚をもった生姜農家は刈谷さんだけではないようです。いの町の生姜農家の青年部は約30名。若手の後継者がこれほど多いのは珍しいとのこと。いの町の生姜、これからも目が離せない状況になりそうですね。

刈谷農園ホームページ……刈谷真幸さんの、生姜栽培にかける想いにグッときます!

◆収穫期のいの町では、生姜関連のイベントが続々と!
・11月1日から、今年も「いの生姜焼き街道」がスタート。
・11月23日、いの大黒さま「椙本神社」秋の大祭と同時開催する「ino Kami祭」にて、新生姜のはかり売りなどを実施。

(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)
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