2017.07.28<川遊び人の独り言>第2話  夏真っ盛り~アユも釣り人も一夏に燃え尽きて~

<川遊び人の独り言>第2話  夏真っ盛り~アユも釣り人も一夏に燃え尽きて~

7月。梅雨が明けると、いよいよアユ釣りも佳境に入ります。水中では餌場をめぐって、アユ同士の、また水辺ではそのアユを狙って、釣り人同士の熱いバトルが繰り広げられます。

 上の写真に写っている4尾のアユは、20cm前後の立派なアユです。その中でも右端のアユは、釣り人が”追い星”と呼んでいるエラの後方にある黄紋もひときわ鮮やかで、今まさに自分の餌場に侵入してきたアユを追い払おうと攻撃を仕掛けているところです。
 アユはなぜこのような行動をとるようになったのでしょうか。

article093_01.jpg今年の春先は、冷え込みと渇水で稚アユの遡上が遅れ気味でしたが、4月になってやっと本格的な遡上が見られるようになりました。(物部川にて)

article093_02.jpgアユが石に付いたコケ(藻類)をこすりとって食べている様子(高橋勇夫氏撮影)

 春先に海から川に遡上してきたアユは、それまで動物性のプランクトンを食べていたのが、ヤスリのような櫛状の歯が発達して、川の中の石に付着したコケ(藻類)をこすりとって食べるようになります。
 川に上ってきたアユは、彼らの生活に適した中流域に達すると、川底に適当な大きさの石が並び、適応な流れがあって良質のコケが繁茂する瀬を中心とした場所に、1平方メートル程度の広さの縄張りを作ります。
 こうした縄張りを持ったアユは、他のアユに対して自分の縄張りをアピールするために、上記のように体色まで鮮やかになるのです。そして、自分の餌場を守るために、縄張りに侵入してきたアユの尻びれ付近を狙って、文字通り体当たりで追い払おうとするのです。

article093_03.jpg2尾のアユを華麗に(?)空中でキャッチ。

article093_04.jpg上が鼻かんを付けたオトリアユで、下が掛かった野アユ(縄張りアユ)。普段は引き抜きによる取り込みが主流ですが、大アユともなると慎重に引き寄せます。(四万十川にて、廣田利之氏撮影)

 アユのこうした習性を利用して、掛け針をセットしたオトリアユを操作して、縄張り荒らしをして、攻撃を仕掛けてきたアユを釣り上げるのが友釣りです。名前は、”友”釣りとなっていますが、じっさいは”ケンカ”釣りと言ってもいいのです。

article093_05.jpg仁淀川のアユ釣りの一級ポイントである柳ノ瀬。この広い漁場の中でも、釣れる場所は、限定され、しかも時々刻々変化する。それを予測して当てるのがアユ釣りの醍醐味。

 このように言ってしまえば、アユの友釣りは簡単なように思えるかもしれませんが、アユは、一日中同じ場所で、同じように釣れ続くことはまずありません。実際は川の中で、いつ、どのような場所で、どういう条件の時に友釣りの対象となる縄張りアユがたくさんいて、掛かるかを予測することは結構難しいものです。
逆に言えば、そのことを予測して、効率よくポイントを釣り歩いてアユを掛けていくのが名人と呼ばれる釣り人なのです。

 私もアユの友釣りを始めて、半世紀近くになりますが、いまだにその日のお目当ての釣り場に立った時は、ワクワクします。今日一日いったいどんなドラマが待っているのか。時には、予測が外れて、こっぴどい目にあうこともあります。それでも、一度もアユ釣りを止めようと思ったことはありません。アユのシーズン中は、このワクワク感を求めて、県内はもちろん、時には県外の川にも出かけていくのです。

今がおいしいアユ料理

article093_06.jpgアユ料理と言えば代表的な塩焼き。本当においしいアユには、化粧塩くらいにして、魚体には塩をふりかけないほうがアユの素材の味が引き立つ。

article093_07.jpg新鮮で、小ぶりなアユは、体表のうろことはらわたを取って、そのまま筒切りにした背ごしが最高。何も付けなくても、生臭さはなく、独特の甘みが口の中に広がり、英語でアユのことをSweet Fishと呼ばれる意味が分かります。

article093_08.jpgアユの握り寿し。しょうゆを付けなくてもそのまま食べられます。すし飯とアユの甘みがコラボして至福の味わいです。これもその日に釣った大アユでなければできません。

 私のように、シーズン中ほぼ毎日のように自分で釣ってきたアユを食べている釣り人でも、そこそこにおいしいアユは珍しくありませんが、感動するくらいおいしいアユに行き当たることはそれほど多くありません。梅雨明け直後のこの時期は、その感動的なおいしさに巡り合えるチャンスです。
 そのチャンスをつかむには、自分でアユを釣ってくるか、気前のいい、腕たちの釣り人と仲良くなることです。
 あなたもこの夏、アユ釣りにチャレンジしてみませんか?

(仁淀ブルー通信編集部員 松浦秀俊)
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