2017.04.28アユが帰って来た、大群だぞ~!

アユが帰って来た、大群だぞ~!

今年も仁淀川にアユが帰ってきました。それも、川を黒く染めるような大きな群れで。アユを見守る人たちと共に、豊かな春の日を楽しんできました。


article080_01.jpg八田堰。江戸時代、土佐藩家老野中兼山の命により造営された。八田堰の上流端から下流150~170mは禁漁区。

仁淀川の下流部、八天大橋(はってんおおはし)の少し上流にある八田堰(はたぜき)。4月22日、ここに仁淀川漁協とリバーキーパーの会(川を愛する釣り師の有志)の面々十数名が集まりました。
その光景に違和感を覚えたのは、彼らが正装の釣り姿(笑)ではなく、箱眼鏡や双眼鏡を手にしていたからでしょうか。そして、八田堰の下流の川面を眺めているだけなのに、どんどん笑顔になっていくのです。視線の先にあるのは、川の中で蠢き、形を変える黒い雲のような物体。
「あれが全部アユか!? 今年はようけい上がってきた! 」

article080_02.jpg手前の濃い褐色がアユの群れ。何派にも分かれて海から上流を目指す。

多くの日本人に春を告げるのは桜ですが、仁淀川の人々にとって、それはアユの帰還かもしれません。秋から初冬にかけて生まれたアユの仔魚は川を下って河口付近の海で冬を越し、春の訪れとともに生まれ故郷の川に戻ってきます。今日は、その遡上状況を目で確認しようとアユ釣り関係者が集まったのです
「何日か前、まとまった雨が降ったのがよかった」「恵みの雨だった」という会話が交わされていきます。「恵みの雨」なんて、農業以外の人も言うのだなあ。
調査に参加した人から、「昔から、雨が降るとアユが海から上ってくると言われてきた」という話を聞きました。いろんな説はあるとのことですが、「雨で仁淀川が増水し、海に川の水が広がっていくと、それを頼りにアユが帰ってくるのではないか」と。

八田堰の下で上流を目指しているアユの群れ

みなさんの笑顔の理由は、昨年のアユの遡上がことのほか悪かったせいでもあります。平年なら1000万匹のアユが遡上してくる仁淀川ですが、昨年(2016年)春に海から遡上したアユはその約10%。一昨年(2015年)の産卵期(11月)の豪雨による大増水で卵が流されたことが原因のようですが、はたして今年は……なんと平年の80~90%ほどに回復の見込み!
半月ほど遡上は遅れているものの、今年のアユ釣りシーズンには18~23㎝のものが楽しめるだろうとのことです。

article080_03.jpg箱眼鏡や双眼鏡など、この日は目視で稚アユの遡上状況をチェック。下流域でも澄んだ流れの仁淀川ならでは。
article080_04.jpgまだ水温が低いものの、川の中に立ちこんで調査する猛者も。

「昨年は遡上したアユは少なかったけど、大物が釣れたんです」とは、やっぱりこの調査に顔を出していた我が仁淀ブルー通信釣りキチ編集長・黒笹氏。
なんでも、競争相手が少ない分、餌が豊富になったため成長が良かったようです。そんな大きなアユがたくさん卵を産み、気候が安定していたこともあって順調に孵化、たくさんのアユの仔魚が無事海へと下っていけたのでしょう。
「自然って素晴らしいなあ、うまくできているなあ」と、かなり上機嫌の編集長です。

article080_05.jpg5~8㎝ほどのアユが、カメラを気にすることなく上流を目指していきます。今年の遡上アユの第一陣は、すでに越知町あたりまで到達しているもよう。

私はアユ釣りをしないので、皆さんと同じぐらい興奮できないのが残念でしたが、それでも遡上するアユの群れは感動的でした。
川にしろ山にしろ、自然で遊んだり取材していると、たいてい「昔はもっと素晴らしかった」という言葉に出会います。例えばアユに関しては「昔は踏むぐらいたくさんいた」。この日の八田堰で見た光景は、その「踏むぐらい」というのが大げさではないことを教えてくれました。そして、「まだ捨てたものではないぞ」という希望がそこにありました。

article080_06.jpg八田堰の西側部分は、自然な早瀬のような構造のため、アユが遡上しやすい。

◆仁淀川水系のアユ漁については仁淀川漁業協同組合のホームページ

(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)
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