2017.04.21「仁淀川いきものがたり」 1・春の田んぼでケラと遊ぶ

「仁淀川いきものがたり」 1・春の田んぼでケラと遊ぶ

長い冬も終わり、そろそろ田んぼの代掻きが始まる。こんな時期になると私はウキウキと田んぼに繰りだす。長い冬から解放された色々な生き物が、人間と同じように、浮かれたように動き出すからだ。

田んぼを利用したり、田んぼに住んでいる生きものは意外と多く、見て回るだけでもワクワクするものだ。どんな生き物が見られるかというと、まず真っ先に現れるのはアカガエル。
アカガエルには、ヤマアカガエルとニホンアカガエルの2種類がいる。両者は2月頃から卵を産みに田んぼに現れ、田んぼにできた水たまりなどに産卵する。その後、暖かくなるまでまた寝てしまう。

article079_03.jpg代掻き前の田んぼには、ヤマアカガエル(右)とニホンアカガエル(左)がほぼ同時に現れる。
article079_04.jpgアカガエルの産卵から里山の春が始まる。産卵は同じ場所で塊になって産むことが多い。

次に姿を見せるのは、その卵を食べにやってくるイモリ(アカハライモリ)。イモリは栄養をとってから産卵するタイプで、少し賢い感じがする。

article079_06.jpgアカガエルの産卵と同時にアカハライモリが田んぼへとやって来る。産卵直後の卵や、生まれたばかりのオタマジャクシを食べに来るのだ。

この頃になると、田んぼでは代掻きが行われ、アカガエルのオタマジャクシは田んぼの泥にかき混ぜられながら育つ。
続いて、冬眠から目覚めたシュレーゲルアオガエルがコロコロと鳴き始め、畦には草花が待ってましたと言わんばかりに咲き乱れる。
こうなると、虫も多く現れて田んぼでは生きものたちのパーティーが始まる。

article079_a.jpg田植えの最初の一歩、代掻き。田んぼに水を張り、水と土を混ぜ、土を活性化させる作業。土の中で寝ていたシュレーゲルアオガエルが不機嫌そうに起き出した。

article079_b.jpgシュレーゲルアオガエルのオスは土の中で鳴きながらメスの来るのを待つ。やがて田んぼの畔に泡の塊がいくつもできる。シュレーゲルアオガエルの卵だ。この泡の中には、無数の卵が入っている。

この代掻きに驚いて水の張った田んぼに思わず出てきてしまうのがケラだ。
「ケラ」と言ってわかる人はそれなりに虫で遊んだことのある人だが、現代人の多くはあまり知らないようだ。でも「ケラってなんですか? 」と聞く人に童謡「手のひらを太陽に」を口ずさむと、「あ~オケラね!」と納得する。ほとんどの人が「オケラ」と上品に「御」をつけて覚えているのだ。

article079_12.jpgこれがケラ。大きな手。土の中で暮らしているので、土を掘るのに便利な前足になっている。モグラにそっくりだ。

ケラはほぼ、日本中の田んぼ周辺や湿地などに住んでいる。そのわりに、あまり知られていないのは、モグラと同じように地中の生活だから。なかなか地上には出てこないので、見かけることが少ないのだ。この代掻きの時に驚いて出てくるケラを見落とすと、ケラに会うためには、田んぼの畦を掘り探さなければならない。
ケラは雑食性で、大きくても5cm弱。バッタやコオロギの仲間だ。成虫で越冬し、地中で卵を産み、おまけに地中でジィーと鳴く! この鳴き声は地なりのような感じなので、その昔、ミミズが鳴いていると勘違いされていた。

泳げて飛べて地中を潜る、こんなスーパーマンのようなケラ。ちょっと興味が出てきたでしょう? 図鑑やネットで調べれば色々わかるけど、どんな風に潜って、どんな風に鳴くのか? 赤ちゃんはどんなだろうか? とどんどん引き込まれ、本物のケラの生態を知りたくなって、私も去年から飼育を始めた。

article079_c.jpg動きがわかるように透明な入れ物で飼育してみた。Uターンせずにバックで戻ったり、前足を使い餌を食べる様子。土を掘る動きなどが、観察できる。

まだ、鳴いている場面や赤ちゃんは観察できていないが、潜る姿や餌を食べている姿は、とても虫とは思えないほど愛嬌があり、ちょっとしたペットのようだ。雑食性なので、ネコやイヌの餌でも育ち、餌には困らない。大事なのは水分で、土が枯れないように気をつけること。あとは入れ物を工夫して中の様子が見られるようにすれば、今日はどこにいるかな? 何してるかな? なんて気になり始め、ほっとけなくなること間違いなし。
気になる人はぜひ、探して捕まえてきて挑戦してもらいたい。

奥山英治(日本野生生物研究所)
●今回の編集後記はこちら

article079_15仁淀ブルー通信の新連載「仁淀川いきものがたり」をお願いした奥山英治さんのプロフィールを紹介します。
奥山さんは1962年東京生まれの53歳、お父さんは有名な絵本作家・おくやまひさしさんです。小さい頃からの生き物好きが大人になった現在も続いている「大人の少年」のような人で、生き物好きがついに仕事になり、現在は雑誌やテレビなどで身近な生き物の興味深い生態や姿を紹介しています。「何でも触ってみよう」を合言葉に、日本各地でファミリー向けの観察会も行っています。2016年からは栃木県茂木(もてぎ)町にある『ツインリンクもてぎ』内に『日本野生生物研究所』を構え、講師をしながら身近な生き物の研究を続けていて、『虫と遊ぶ12ヶ月』(デコ)『みちくさしようよ』(ほるぷ出版)などの著書もあります。
私とはかつてビーパル編集部で一緒に遊んだ、じゃなかった仕事をした仲間で、関東在住にもかかわらず仁淀川にたびたびゲリラ出没しています(笑い)。
写真だけでなくイラストもうまいマルチな遊び人。この連載(隔月)では仁淀川流域に生息する生き物たちの興味深い生態と、彼らとのステキな遊び方を提案してもらいます。ご期待ください。(仁淀ブルー通信編集長 黒笹慈幾)