2017.04.14「オムライス街道」の日高村が、レンタサイクルを開始!

「オムライス街道」の日高村が、レンタサイクルを開始!

「日高村ってどんな所? よくある田舎かな? 」と自転車を漕いだら、そこはインスタグラムで共有したくなるような、美しい、懐かしい、珍しい風景に出会う場所でした。

仁淀川の南岸に位置する日高村って、どんな所だと思いますか? 最近は「オムライス街道」が有名ですが、ネットなどの情報を総合すると「歴史に恵まれ、実りと自然が豊かな田園地帯」と、まあ「よくある田舎」というイメージ。さて本当のところは、どうなんでしょうか。

それを確かめるのに最適なのが、この春から始まった「日高さとやまレンタサイクル」。
「屋形船仁淀川」と「村の駅ひだか」の2か所に、各6台のクロスバイク(スポーツタイプだけど乗りやすい自転車)と、貸出場所を拠点にした地図「仁淀川サイクリング」「さとやまサイクリング」が用意されています。
今回は、日高村の里山風景を快走していく約15㎞のコースにチャレンジしてみました。

article078_01.jpg村の駅ひだかでレンタサイクルを借りました。
article078_02.jpgヘルメットと、故障や事故のときの連絡先を記した貸出証を渡してくれます。

田園地帯を少し走っていくと、高台にある小さな神社に出会いました。観光名所ではない、昔ながらの地域の神様です。なぜか魅かれて石段を登ってみると、古びたお堂にミカンのお供えが。万物への感謝が忘れられがちなこの時代、心がほっとなごむ風景でした。

article078_03.jpgちょっとした高台にあるお堂。水害のときは地域住民がここに避難したのかもしれません。

仁淀川の堤防に到着。しかし仁淀川の展望がないので、サイクリングマップ記載のコースから少し外れてこの風景を発見しました。自由に動けていろんなものを発見できるのがサイクリング。「自ら転んでしまう車」という少々ネガティブな名前より「自由車」というほうがふさわしい気がします。

article078_04.jpgサイクリングには、風景を発見できる喜びがあります。
article078_17.jpg日高村サイクリングマップのおすすめルート(水色の線)を走行してみました。

さらに寄り道。日高村の東、いの町を目指しました。小村神社を素通りして、国道33号線を500mほど東に向かうのですが、歩道がすごく狭いので慎重に。国道に横断歩道を見つけたら、その10mほど先を左折して細道に入ります。そして、間もなくY字の分岐になるので右の道へ。すると絵に描いたような田舎の風景と、あまり知られていない仁淀川の表情が待っています。

article078_05.jpgこんな田舎道をサイクリングするのは至福のとき。
article078_06.jpgこれも仁淀川。なんだか癒される風景だなあ。

日高村に戻り、小村神社へ。
ここは土佐の国の二宮、つまり一宮(土佐神社)に次いで社格の高い神社です。古の時代、この地域はかなり重要視されていたのだろうか……と想いに耽っていると、村の駅ひだかの観光担当・高野雄司さんが車で通りかかり、観光ガイドをしてくれました。

article078_07.jpg土佐二宮 小村神社

「この神社は、聖徳太子のお父さんである用明天皇の時代(587年)に建立されました。ですが、神社ができる以前からここではいろんな祭祀が行われていたようで、地域にとって特別な場所だったようです。ご神体は太刀(国宝 金銅荘環頭大刀・大刀身)で、先祖代々大事に保存されて伝わったものとしては日本最古と言われているんですよ」
その大刀、なんと7世紀前半(つまり古墳時代)のものだとか。毎年11月15日に拝観できるそうです(雨天中止)。

article078_08.jpg土佐二宮小村神社本殿の造形。
article078_09.jpg小村本殿の裏にある牡丹杉は樹齢1000年以上。有事の前に光るという伝説から「燈明杉」とも呼ばれています。

歴史がある、つまり大昔から人々の暮らしを支えていたこの地域。しかし山内家による藩政時代(江戸時代)になると状況が変わってきます。土佐藩家老・野中兼山によって1648年に起工された八田堰(はたぜき)は、仁淀川の水を弘岡平野(ひろおかへいや)に導き、新田を潤すために造られたのですが、一方では日高村の水害の原因になりました。堰の上流の仁淀川は水位が上昇するため、大雨のたびに、日高村を流れる日下川(くさかがわ)に仁淀川から水が逆流、集落が水没するようになったのです。

article078_10.jpg美しい里山の風景だが、川のそばゆえの波乱の歴史が刻まれている。

現在の日高村では、日下川の水を仁淀川へと排水する「日下川放水トンネル」など様々な洪水対策が行われています。その一つである戸梶川(とかじがわ)調整池をすぎると、サイクリングルートは次第に山間へ。そして猿田洞(さるたどう)に到着です。

猿田洞は石灰岩の洞窟で、枝分かれした洞窟もあわせると長さ約1400m。自然のままの洞窟なので、入洞するには洞窟探検の装備(ヘッドランプやヘルメットなど)と経験が必要だし、日高村教育委員会への連絡も必要です。

article078_11.jpg届出と準備をしていなければ、ここぐらいまで。洞窟をなめてはいけません。洞窟探検(ケイビングという)の経験豊富な私が言うのだから間違いありません。一般の人は、ガイド付き洞窟探検ツアーにご参加ください。(村の駅ひだかから『日高村の体験観光』をクリック!)

そんな本格冒険的洞窟なのですが、ここが発見された安政5年(1858年)当時は見物人が一日に数百人も訪れ、洞窟の入り口付近には売店が軒を連ねたそうです。今も昔も、未知なるものへの憧れとか、怖いもの見たさとかは変わらないのでしょう。提灯を頼りに入洞したのでしょうか? 洞窟のそばにある県道291号線は、かつて坂本龍馬が脱藩したとき(1862年)に歩いたかもしれない道なので、ひょっとして……

猿田洞から県道291号線を少し戻り、この日初めての本格的な峠へ。このクロスバイクは28段変速なのですが、それでもなかなかのキツい登り。運動不足だと自転車を押す羽目になりそうです。しかし下りは爽快! サイクリングは苦労を裏切りません。

article078_12.jpg日下川調整池。北海道の湿原みたいな景観です。

そしてたどり着いたのが日下川調整池。ここは、大雨で日下川が急激に増水した時に、川の水を逃がす場所「遊水池」です。つまり洪水対策施設の一つですが、その景観は自然の湿原そのもの。というのも古来ここは本当の湿原で、洪水時には河道からの水が氾濫していました。その自然の仕組みを利用したというわけです。取材したときはまだ春浅く、自然の息吹といえば北への旅立ちを待つカモ類ぐらいでしたが、これから暖かくなるにつれ、湿地性の草花や、トンボなどの昆虫でにぎやかになっていくことでしょう。ここのような、内陸の山里にある湿原は珍しく、他ではあまり見られない絶景であります。

article078_13.jpg日下調整池は、カモなどの渡り鳥にとって大切な越冬地になっています。

日下調整池を過ぎると、まもなく出発地の村の駅ひだかです。この日、私の走行距離は20㎞ぐらいでしたが、気の向くままにのんびりと眺めたり、場の雰囲気を味わっていたので4時間ほどかかりました。同じコースを自動車で観光すれば2時間以内ですから、その倍の時間を楽しめたわけです。「のんびりいこうよ」と心のスイッチを切り替えれば、日高村は、「よくある田舎」とはちょっとちがう表情を見せてくれますよ。

article078_14.jpgゴールで菜の花畑が出迎えてくれました。
●日高さとやまレンタサイクル
レンタル料金/1日500円(ヘルメット代込)

—さとやまサイクリングコース
貸出場所/村の駅ひだか 住所/高岡郡日高村本郷1478-9 ℡/0889-24-5888
利用時間/9:00~17:00(受け付けは15:00まで)

—仁淀川サイクリングコース
貸出場所/屋形船仁淀川 住所/高岡郡日高村本村209-1
℡/0889-24-6988または0889-24-4647(日高村役場産業環境課)
利用時間/9:00~16:00(受け付けは14:00まで)
休業日/12月~2月、悪天候で屋形船運行が休みのとき
article078_15.jpgクロスバイクは2サイズ。子供用自転車とママチャリもレンタル予定。
article078_16.jpgレンタサイクル貸出場所で配布中の便利なサイクリングマップ

(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)
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