2016.11.25豊かな自然を原料に…。機械に萌える工場めぐり

豊かな自然を原料に…。機械に萌える工場めぐり

巷では「工場見学」がちょっとしたブームになっていますね。かくいう私も工場見学に心ときめく者の一人。特に、日常では見ることができない特殊な「機械」を目にすると萌えを感じます。そこで今回は仁淀川流域にある工場におじゃまし、 ものづくりに欠かせない機械とクラフトマンシップを愛でてまいりました。マニアックでごめんなさいね!

いの町【高岡丑製紙研究所(たかおかうしせいしけんきゅうじょ)】

最初にやって来たのは【いの町】。言わずと知れた土佐和紙の産地でございます。和紙というと人の手によって生まれる「手すき」のイメージが強いのですが、機械を使った「機械すき」の和紙もあり、いの町には多数の機械すき工場が操業。機械があるからこそ作ることができる特殊な和紙も生まれ、手すきとともに土佐和紙産業を支えています。
機械すきが栄え、技術が発展した背景には、ある一台の機械の存在が欠かせません。それが「高岡丑製紙研究所」で稼働している「懸垂式短網抄紙機(けんすいしきたんあみしょうしき)」。別名・高岡式とも呼ばれる機械です。

article_05802.jpgこちらが懸垂式短網抄紙機。
article_05803.jpg開発者の高岡丑太郎氏(明治33年、伊野生まれ)

開発したのは同社の創業者である高岡丑太郎氏。技術職を経て、昭和10年に和紙を作る機械の開発に着手。しかし、当時は手すきが盛んだったため工場は閉鎖に追い込まれました。終戦後、機械すきが急速に広まり始め、再び開発に取り組んだ丑太郎氏は、昭和26年に懸垂式短網抄紙機第1号機を完成。昭和33年には極薄の和紙「典具帖紙(てんぐじょうし)」の機械すきにも成功しました。
そして、丑太郎氏はその機械や技術を自分のものだけにせず、他社にも提供。機械の一部をカスタムすることで極厚や極薄などさまざまな和紙を作ることができるので、機械すき和紙が一気に多様化し、一つの産業へと成長することができたのです。 今現在も高岡式を使い続けている製紙会社は全国各地にあり、同社も丑太郎氏が開発した機械を現役で使い続けています。
では、さっそく工場を見学してまいりましょう!

article_05804.jpg楮と水などで作った和紙の原料が抄紙機を流れ、水の音と重い機械音が重なります。
article_05805.jpgジグザグ構造を流れていく和紙。狭い空間を縫うような構造がたまりません。
article_05806.jpg完成間近の和紙。部品である竹の模様が透けて見えるほどの薄さ!
article_05807.jpg最後は巨大な筒状のアイロンで乾燥。圧巻の大きさです

3代目・高岡幸一郎さんは、高岡式抄紙機についてこんなことを教えてくれました。
「機械を雑に扱うと機械の調子が悪くなることがあり、大事にメンテナンスをしていると調子の良い状態で動いてくれると、2代目から教わりました。この教えは代々大切にしていかなくてはいけません」。
50年以上稼働し続けている抄紙機は、創業者・丑太郎氏の努力と思いが詰まった一台。機械そのものはレトロですが、品質の良い和紙を生み出すのは日々のメンテナンスの賜物なんですね。
ちなみに、和紙の原料となり、機械の上を流れているのは仁淀川の伏流水。機械と水って交わらないもの同士のイメージですが、それが一つになっているのもこちらの工場の見所です。


完成した和紙は多彩な用途がありますが、人気なのはインクジェット紙。繊細なラインもシャープに印刷できて和紙の優しい風合いも加わるので、独特の味わいを持った仕上がりになると評判です。また、丈夫な厚手の和紙は縫製して雑貨類にもなっています。丑太郎氏は機械すき産業を広げただけでなく、和紙そのものの可能性も広げたんですね!

article_05808.jpg天然染料で染めた和紙をクッションカバーに。かわいい!

【お問い合わせ】
高岡丑製紙研究所
高知県吾川郡いの町2264
電話 088-892-0373
http://www.takaokaushi.jp
※工場見学も受け付けています(危険な機械があるので子どもは不可)。
 必ず事前に日時や人数などをご相談ください(条件によってはお断りする場合もあります。ご了承ください)

土佐市【戸田商行】

続いてやって来たのは【土佐市】。ここにレトロ機械好きにたまらない工場があるんです! 
それが日本で唯一となった「木毛(もくめん)」を専業で作る「戸田商行」です。
「木毛」とは木をヒゲのように細く削り出したもので、主にデリケートな青果物や割れ物などを箱詰めする際の緩衝材として利用されています。近年は石油系素材の緩衝材が主流となり、全国各地にあった木毛工場はどんどん閉鎖。そのなか同社は質の良い木毛にこだわり続け、現在は木毛の魅力を世間に広く伝える役割も担っています。
そんな同社で見ることができるレトロな機械がこちら!真四角の重厚感ある姿がカッコよすぎる木毛製造機です。

article_05809.jpg木毛製造機のなかでもめずらしいと言われる日本製です。

木毛に使われるのは高知県産木材で、用途によってマツ、杉、クスノキ、ヒノキなどが使い分けられています。質を高めるために木の皮を剥ぎ、節などがない部分を使っていきますが、取り除いた皮や端材は乾燥機の燃料として使われており、木をムダにはしません。エコ!
では、レッツ工場見学へ!濃厚な木の香りを想像しながらご覧ください。

article_05810.jpg工場建物の前に積み上げられた高知県産の木材。
article_05811.jpg木の状態を見極めて、木のセット方向を判断します。
article_05812.jpg木毛製造機は、クシ状の刃物で木に筋をつけた後、ストレート状の刃物でカンナのように削ることでヒゲのような細さに削り出していきます。
article_05813.jpg機械だけでなく人の手も重要な役割を担います。木毛を一つ一つ丁寧に袋詰めし、高級青果物用の緩衝材として出荷します。

木毛製造機のかたわらで常にテキパキと動く職人さん。材料の表面からは見えない節などがあるため、職人さんは削られている木を見て、こまめにセット方向をチェンジ。そうすることで品質の良い木毛を作ることができるのだそう。
また、同社では1日に約1トンの木毛を製造するため、使用する刃物はわずか1日でボロボロに。そのため刃を研ぐのは日課の仕事。さらに、50年以上使い続けている古い機械なので扱える業者が少なく、自分たちでメンテナンス…。機械まかせではなく、機械と人間が一緒に一つのものを作り上げていく様子が、機械萌えに拍車をかけますね。
工場好きなら何時間でも見ていられるような木毛工場…。絶滅の危機にあるといっても過言ではない素材ですが、木毛そのものはもちろん、それを作り出す工場や機械の景色も失いたくないなと感じます。

article_05814.jpg衝撃を吸収するだけでなく、箱を開けたときの香りの良さや優しい手触り・風合いなど天然素材ならではの魅力が光る木毛です。

【お問い合わせ】
戸田商行
高知県土佐市本村580
電話 088-855-0426
http://www.toda-shoko.com
※工場見学も受け付けています(危険な機械があるので子どもは不可)。
 必ず事前に日時や人数などをご相談ください(条件によってはお断りする場合もあります。ご了承ください)

仁淀川町【池川木材工業】

最後にやって来たのは【仁淀川町】。昭和53年創業の「池川木材工業」で作られているあるモノは、なんと国内シェア率日本一を誇っています!そのあるモノとは、地元産の杉やヒノキで作られた「スノコ」。そう、S・U・N・O・K・O、スノコです!

article_05815.jpg山積みにされた木。ムダなく使うことで、山の環境保全に一役買っています。

日本で販売されている国産材スノコの約3割を生産する同社。使い道がない・価値がないと山に放置されがちな幹の細い間伐材もここでは立派な材料に! 「木を余すことなく使い切ることで、山を守ることができる」と語る大原栄博社長に案内していただきながら、日本一を生み出すスゴイ工場を見学します!

article_05816.jpg第四工場では製材工程がオートメーション化されていました。
article_05817.jpg山から切ってきた木がいくつかの超大型機械を通って板になります。胸熱!すべてお見せできなくて残念です!
article_05818.jpg製材過程で出た木くずもムダにはしません! 燃料用木質ペレットや畜産の資材などに利用されます。
article_05819.jpg海外製の最新機があるかと思えば、人の手にしかできない仕事も。こちらでは節を埋めて木材を修復する工程が行われています。やはり木をムダにしません。
article_05820.jpgやはり刃物は毎日メンテナンス。特殊な形状の刃物は最新鋭の研磨機で。スノコ作り以外の機械もスゴイ!
article_05821.jpg今まで見たことない部品と出会い、心がときめきます。キーホルダーにしたいです。
article_05822.jpg同社専用に開発されたスノコの釘打ち機! 黄色い箱に釘がたくさん入っており、上下に動いて振るいにかけることで釘の向きを揃え、自動でスノコに釘を打っていきます。
article_05823.jpg同社はスノコだけでも50種類以上をラインナップ。高品質かつ多彩なスノコで地元の山を元気にしています!

全国どこを探しても同社にしかないスノコの釘打ち機からは、「ジャラジャラ〜、カッコン!」という、なんとも心地よい音が響いていました。なんと愛らしい機械なんでしょう!まさに萌え〜!
ふと稼働する釘打ち機の隣を見ると、古びた同型の機械が…。じつはこれ、30年以上前に作られた初代釘打ち機なんだとか! 繁忙期になると初代も稼働するそうなんですが、こちらはなかなかクセがあって、素直に言うことを聞いてくれない(釘を打ってくれない)機械なんだそう。でも、今でも大切な仲間として工場に鎮座しています。

article_05824.jpg新しい釘打ち機を見守りながら自分の出番を静かに待つ、初代釘打ち機先輩。

さすがシェア率日本一のスノコ生産工場は、規模の大きさも機械の種類も圧巻です。でも、そのなかには「木をムダにしない」「機械を大切にする」「人の手も動かす」という人間味あふれる場面が随所にありました。他の大量生産品とは一線を画す温かみをスノコからも感じます。


見学を終え、最後に「現在の日本の山林は危機的な状況です。安価な外国産木材を使うのではなく、努力や工夫をして地域産材をムダなく使い、価値を生んで山に還元し、山を健やかな状態にしていかなくてはいけません」と語ってくださった大原社長。その眼差しは熱く真剣でした。機械萌え〜と浮かれている場合ではありません。
私たちがきれいな仁淀川を楽しめるのは、健やかな状態の山があってそこ。山に、木に、スノコに熱い思いを注ぐ工場があることを誇りに思い、国産材スノコを使っていきましょう!

【お問い合わせ】
池川木材工業
高知県吾川郡仁淀川町土居甲775-1
電話 0889-34-2015
http://www.ikemoku.co.jp
※会社見学ご希望の方は、池川木材工業ウェブサイトのトップページにあるエントリーバナーからお申し込みを。

・・・いかがでしたか、仁淀川流域の工場めぐり。どの工場もどの機械も、グッと引き込まれる魅力に溢れていましたね。今回は特別に機械が動いている様子を動画にまとめてみました。機械萌えの方なら、この動画を見ながらご飯が何杯でも進むと思います!ぜひご覧になってください。

(仁淀ブルー通信編集部 高橋さよ)
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