2016.05.27仁淀川に面した村で、世界一の和紙に出会った!

仁淀川に面した村で、世界一の和紙に出会った!

これが紙?向こうにある雑木の里山がはっきりと透けて見えます。

訪れたのは仁淀川右岸(下流に向いて)の日高村にある「ひだか和紙有限会社」。ここは世界一薄い和紙を生産する工場なのです。

article_03202.jpg手のひらにのせれば、手相はもちろん指先の指紋が見えるほどの薄さです。

こんなに薄い紙、いったい何に使うのかといえば、傷んだ絵画や書物、仏像の修復など。貴重な文化財を後世に伝え残すためには欠かせない和紙として、世界中から注目されています。

article_03203.jpg傷んだ書物の保護のために、極薄の和紙でサンドイッチされている。
とても薄いので、何も貼られていないように、文字がはっきり見える。

良質の水や紙の原料(コウゾやミツマタなどの植物)に恵まれた仁淀川流域では、記録によると平安時代から和紙が手漉きされていましたが、この極薄和紙の歴史が始まるのは明治時代初期から。「紙の恩人」と呼ばれる吉井源太氏の指導のもと、手漉き和紙としては世界で一番薄い「土佐典具帳紙(とさてんぐじょうし)」の生産を始めます。薄いのにとても丈夫な手漉きの土佐典具帳紙は、かつてタイプライター用紙として重宝され、盛んに海外に輸出されていました。

article_03204.jpg土佐典具帳紙の原料であるコウゾ(楮)

ひだか和紙では、昭和44年に土佐典具帳紙を「機械」で漉くことを始めました。そして今では厚さ0.02mmという世界一の薄さを実現するまでに技術を高めています。その工場を見学したのですが、薄く繊細な紙がどんどん生まれてロールに巻かれていました。手漉きによってカゲロウの羽のように薄い和紙を作るには高い技量が必要ですが、機械で漉くこともすごい技術です。

article_03205.jpgこんな、繊維しかないような紙が、破れず、皺にならずに機械から生まれる不思議

それにしても驚かされたのは、ひだか和紙がある場所。そこにはさらさらと流れる小川があり、畑や田んぼが雑木の山の裾野へと続き、昔ながらの農家が点在しています。世界が認める逸品があるとは想像しにくい、のどかな里山なのです。

article_03206.jpg読売KODOMO新聞2016年4月14日号

実は私がひだか和紙を知ったきっかけは、東京で発行されている全国紙「読売KODOMO新聞」の取材にカメラマンとしてお手伝いしたことから。それまでは、世界一の工業製品が仁淀川流域にあるなんて思いもよりませんでした。それを、東京の人に教えられるとは……

いつも見慣れているから気づかないけれど、故郷には意外なお宝が眠っているのかもしれません。「地元ではあたりまえ」の、仁淀川の美しさもその一つですよね。

・ひだか和紙有限会社 http://www.hidakawashi.com/
・土佐和紙について学ぶなら、いの町紙の博物館へ http://kamihaku.com/

(仁淀ブルー通信編集部 大村嘉正)
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