2016.06.03農家さんの誇りが生む夏の味! いの町枝川「きび街道」

農家さんの誇りが生む夏の味! いの町枝川「きび街道」

いのインターチェンジを下りたところに位置するいの町枝川。普段はただ静かに畑が広がり、その横を車が往来する場所ですが、夏の足音が聞こえ始める5月下旬になるとたくさんの人が毎日のように訪れ、にわかに活気が生まれます。

人々を惹きつけて止まないもの…その正体は、きび! そう、トウモロコシです! トウモロコシが特産品のひとつでもあるいの町。中でも枝川の八代地区では、収穫時期になるとトウモロコシを茹でて販売する露店が複数出没。地元民の間では「きび街道」と呼ばれ、親しまれています。

article_03302.jpg ご覧ください!これが人々をトリコにさせる黄色い宝石です!

もういきなり食べてしまいます!ガマンできない!
ゆでたてのホカホカのアチチです。ツヤツヤと輝きを放つ黄色い粒…あぁ、まぶしい! しっかり大きく育った一粒一粒がぎゅぎゅっと身を寄せ合うように並んでいて、今にもポーンと飛び出してきそうです。
食べる時は豪快にお口を大きく開けてガブリ、この食感がたまりません。「ぷりぷりぶり!」と音を出しながら粒が口の中を弾け飛んでいくんです!  そして、口いっぱいに広がるトウモロコシのジュース。本当に甘い。でも、ただ甘いだけじゃなくトウモロコシの味や香りがしっかりと伝わってくる濃厚な味わい。食べ始めたら止まらない。芯がキレイに現れるまで食べ尽くしてしまいます。
で、濃厚な味としっかりとした食べ応えがあるので、食べ終えた直後はおなかいっぱい。でもすぐにもう1本食べたくなります。まさに一度食べると忘れられないおいしさ。絶対2本以上買っておいてください。

 こんなおいしいトウモロコシを売っているのは農家さん。自ら育てたトウモロコシをゆがいて販売しているのです。訪れたのは、街道の西端、青色屋根の大きな建物の前で販売している水田商店さん。この地できび街道が始まった当初から販売を続けている一軒です。

article_03303.jpg 水田商店さんの露店。初日に訪れましたがお客さんが途切れることなく並びます。

 

「うちは本業はショウガ屋さん。でも、同じ畑でショウガばっかり育てよったら連作障害が起きるき、間にきびを育て始めたがです。育てる以上は、やっぱりおいしく育てたい。それでせっかくやきゆがいて売ったら? ということになった。最初は、お客さん来るろうかね? 売れるろうかね? と言いよったぐらいやき、いつ始まったかもハッキリ覚えてないがです。おそらく30年以上前じゃないろうかね?」

話してくれたのは露店に立つ水田房子さん。房子さんによるとトウモロコシ販売の露店が多数あった昭和63年に地元の新聞で紹介され、「きび街道」という名前で呼ばれるようになったとか。最盛期は10軒以上の露店が並んでいたそうですが、現在は5軒ほどになっています。その背景には後継者不足の問題と、夏の暑さの中で露店に立つ大変さがありました。

article_03304.jpg 暑さの中、ぐらぐら茹だったお鍋と向き合います。

「きびは、食べ頃が来たらその日に収穫せないかん。若すぎたら味がないけど、実り過ぎてもおいしくない。一番おいしい時が来たら太陽が出る前に収穫する。その方が甘みが増すって昔から言うんです。毎日おいしい状態で出せるよう、畑には時期をずらしながら植えてますけど、天気によっては順調にいかんこともあって休まないかん時もありますね。
収穫したら選別して、一本一本皮を剥いで、その場で茹でながら売る。暑いし大変やけど、やっぱり茹でたてが一番おいしいきね! すべてはおいしさのためなんです。」

article_03305.jpg おいしさの秘密は鍋の中にもあり!

一番おいしい時をさらに高めるのが、農家さんそれぞれが守っている茹で方。鍋に入れるのはトウモロコシと水と塩の三つだけ。塩の量と茹で加減で味が決まるそうです。ちなみに房子さんは、沸騰してから塩を入れて15分、これが代々受け継いでいる茹で方なのだそう。
では、他の農家さんはどんな茹で方なんでしょう?この日、店を出していた水田八重さんにも聞いてみました。

article_03306.jpg 八重さんの店は「とうもろこし」と書かれた赤いのぼりが目印です。

「茹でる時間はだいたい8分前後。きびの状態をみながら茹でていきます。これからどんどん甘みが乗ってくるところ。日によって味が変わるから、度々来てもらいたいですねぇ」
八重さんもきび街道が始まった当初から店を開いているうちの一軒。毎年8月いっぱいまで提供ができるように、すぐ後ろの畑ではまだ背の低いトウモロコシの苗が並んでいます。

article_03307.jpg 畑の世話をしているのはご主人の泰明さん。

「真夏は暑い中で仕事をせんといきませんのでね、汗を流しながらやってます(笑)。でも、楽しみにしてくれちゅうお客さんがおるき、やらんといきませんねぇ」
シャイなので言葉こそ少なめですが、トウモロコシへのこだわりは強い八重さん。きっと泰明さんも同じでしょう。
お話をうかがっている最中にも、続々と訪れるお客さん。「今年も始まったねぇ。待ちよったよ」「もっと買っていこう」「また来るきね」と声をかけられて、嬉しそうに笑う八重さん。この瞬間があるからこそ、続けているのかなと感じました。

最初に訪れた水田商店さんも本業のショウガの出荷が忙しく、商売的には露店を出してまでトウモロコシの販売をしなくても良さそうなんですが、やはり続けている理由がありました。
「収穫したてを使うのも、塩加減・茹で加減も、全部父と母に教わったこと。ショウガ作りにしても、きび作りにしても、父や母がいろんな試作をしながら、いろんなことを考えながらやってきて、今も私らがそれを受け継いで試行錯誤を続けゆう。それは、毎年毎年良いものを作りたいから。で、良いものを作ったら一番おいしい状態で食べてほしい。だから、ここで茹でて、ここで買ってもらうことに意味があるんです」

article_03308.jpg もろこっしーも待っているよ。

最近では伊野商業高等学校の生徒が考案したゆるキャラ「もろこっしー」も登場しています。なかなかのハンドメイド感にほっこり。6・7月の土日に活動予定です。(休む日もあります)

◆きび街道DATA◆

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場所:いのインターチェンジを下りてすぐのところ。のぼりが目印。一番近いバス停は「八代」です。
※開店・閉店時間は店によって、その日によって異なりますが、だいたい7時から始まって、午後早くに売り切れることもあるので午前が狙い目。トウモロコシの生育状態や天候によっては休むこともあります。

(仁淀ブルー通信編集部員 高橋さよ)
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