2016.05.20歴史に彩られた酒蔵の町・佐川の名物、「ぢちち」とは何?

歴史に彩られた酒蔵の町・佐川の名物、「ぢちち」とは何?

先日、われら「仁淀ブルー通信」の編集会議が佐川町の割烹居酒屋「ひさ川」で行われました。

座敷に上がると、目の前にはスープを満たした鍋、そしてうどんが。別皿のひき肉炒めと白髪ねぎはトッピングだろうから、これは担担うどんか? どうやら、会議の前に佐川町の新名物を味わう趣向のようです。「うどん王国」香川県で暮らし、ライターという仕事柄400軒以上の讃岐うどんを食べ歩いた私は、「高知のうどんねえ」と、やや偉そうな気分で一口いただきました。

article_03102.jpgうどんの他にひき肉炒めと白髪ねぎが。

スープは白濁しています。とんこつか?と思いつつすすると、いやはや、未体験の味わい。その色合いに反してあっさりとしていて、和のダシを連想させる品のよい豊饒さがあります。隠し味的な甘みやコクの余韻を楽しんでいると、おっと、ピリ辛さが後から追いかけてきたぞ。味覚の波状攻撃であります。やるなあ~!

article_03103.jpg白濁したスープ。これは何?

この謎のスープのメインは何かと訪ねれば、「ぢちち」だという。音を聞いただけではよくわかりません。どんな字なのか?

article_03104.JPGおお、牛乳か。でも普通の牛乳と何が違うのでしょう? 

ここで、仁淀ブルー通信編集委員で「さかわ観光協会」の谷口佐紀さんの登場。「地乳ってなんですか? 」

article_03105.jpgさかわ観光協会の谷口佐紀さん。

「地乳というのは、ここ佐川町内産の原乳のみを使った牛乳です。佐川町内の小さな酪農家4軒で搾られた生乳を集め、同じく佐川町の工場で牛乳にしています」。佐川町の酪農家はみんな家族経営の小さな規模で、牛たちにきめ細やかな世話と、家族同然の愛情をたっぷりとそそいでいるとのこと。そのため品質の良い生乳になり、しかも牛舎から牛乳工場まで近いため、より新鮮なままの牛乳ができるそうです。

article_03106.jpg牧野公園から見下ろした佐川町の町並み。

いま佐川町では、地乳とそれを使った食を名物にしようと取り組んでいます。その一つが「地乳ミルク担担うどん」です。昨年開催された「第一回さかわ地乳まつり」の地乳料理コンテストで最優秀賞に選ばれたレシピをメニュー化したもので、〈地乳を使う〉〈佐川町産のニラを入れる〉〈うどんを入れる〉という基本以外は自由にアレンジしていいという条件のもと、現在は町内の4店舗でオリジナリティーあふれる「地乳ミルク担担うどん」を提供しています。
(注:ひさ川で通常提供される「地乳ミルク担担うどん」は鍋形式ではありません。)

article_03107.jpg旧浜口家住宅(さかわ観光協会事務所)。

地乳ミルク担担うどんのスープがあまりに美味しかったので、私はそのもとである地乳を味わうべく旧浜口家住宅へ。ここは「さかわ観光協会」が土産物販売や休憩所として運営していて……と、ありました! レトロなガラス瓶に入った地乳が。さて一口。普通の牛乳よりも口当たりが柔らかい気がします。そして滋養が身体に染みわたっていくような甘味と、遠い記憶を呼び覚ますような豊かな風味。

article_03108.jpg地乳。

ああ、これぞ旅の醍醐味の一つであります。その土地ならではのものをいただき、地域の風土と一つになることが。土産物コーナーをさらに見ていくと、アイスやプリンやクッキーなど「地乳」を使った商品が他にもいろいろありました。

article_03109.jpg地乳を使ったアイスクリーム。

そして私は嬉しくなってきました。食いしん坊だから、というのもありますが、「地域のどこで、誰が、どんな思いで作ったかがはっきりしているもの」を名物にしている町って、やっぱりいいですよね。

(仁淀ブルー通信編集部 大村嘉正)
●今回の編集後記はこちら

★地乳を生産している吉本乳業のHPでは、地乳を使った料理のレシピを公開しています。
(http://www.yoshimotonyugyo.com/index.html)
★「地乳ミルク担担うどん」を食べられるお店は
・居酒屋日向/佐川町甲1059、℡0889-22-1375 ※要予約
・オリエントステーション/佐川町甲850-1、℡0889-22-1370 ※11:00から提供
・御酒屋彩食空間/佐川町乙1841-7、℡0889-22-7254 ※17:30から提供
・ひさ川/佐川町甲1724-2、℡0889-22-0656 ※要予約
★旧浜口家住宅については、さかわ観光協会(http://sakawa-kankou.jp/)へ