2016.05.13今年のアユ漁はいかに?それを占う特別採捕に参加してみた

今年のアユ漁はいかに?それを占う特別採捕に参加してみた

アユ漁解禁の6月1日まで半月以上ある5月8日、仁淀川の「黒瀬」の河原に30人以上の癖のありそうな(なんだか川のにおいがする)男たちが集まりました。

なかには、長い釣り竿を持つなど明らかにアユ釣りのいでたちが数名。「さては解禁前に堂々とアユを密漁か!?」と眺めていると、仁淀ブルー通信にこれまで2度登場してくれた松浦秀俊さん(リバーキーパーの会)の姿が。
「密漁でも試し釣りでもないですよ(笑)。これはアユの特別採捕なんです」

ここでアユについて少しおさらい。アユは釣って楽し、食べて美味しという清流魚で、日本人が大昔からいただいてきた川の恵みです。成魚は秋に川を下って下流部の早瀬で産卵し、まもなく孵化した仔魚はさらに川を下り、冬を海で過ごします。そして春になると川を遡り、夏の間に中流部で大きく成長し、秋になると下流部で産卵して一生を終えます。「この特別採捕では、仁淀川の天然アユについて、今年はどれだけ海から川に戻って来たか、どれくらい成長しているかなどを調べます。また、春に仁淀川に放流したアユがどうなっているかについても調べます」と松浦さん。

article_03002.jpgこの調査のため、高知のアユ釣り名人が集結しました。

その調査方法ですが、一つ目はアユの友釣りによる捕獲調査。主に高知県内のアユ釣り名人たちが担当します。そしてもう一つが潜水調査で、川を泳ぎながら目視で水中のアユを数えます。アユは主に早瀬で暮らすので、調査する人は波立つ川をカッパのごとく泳いだり流されたりしてけっこう大変です。この日の潜水調査は松浦秀俊さんと、川の生態系を豊かにする「近自然河川工法」で有名な西日本科学技術研究所(地元高知県の会社)の藤田真二さんがカッパになりました。みんなボランティアで参加しています。

article_03003.jpg西日本科学技術研究所の藤田真二さん。川を泳ぎながらアユを数えた。

このような調査を仁淀川漁協と釣り人有志が始めたのは10年ぐらい前から。その年のアユ漁を占うことが主な目的ですが、収集されたデータは仁淀川の自然の変化も映し出しています。「川の上から眺めているだけでは、『ああ仁淀川はいつもきれい』ですが、川に入って釣りをしたり潜ったりすると、仁淀川の生態系が変化していることがわかります」と松浦さん。

article_03004.jpg名人の腕をしても、この日の釣果は少なめ。

松浦さんや藤田さんにならって、私も水温17度(人には冷たいけどアユには快適)の仁淀川にシュノーケルと水中眼鏡をつけて潜ってみました。なんと、アユだけでなく魚の姿が少ない。昨年に私が仁淀川で泳いだときはアユもハヤもたくさん乱舞していたのですが(水ぬるむ7月だったからかもしれませんが)。

article_03005.jpgアユの生息数をカウント中の松浦さん。川の流れはけっこう早い。

その原因として推測されるのは、増えすぎた川鵜に食べられてしまった、昨年の冬の大雨で仁淀川が季節外れの大増水になり、川底の玉砂利に産み付けられたアユの卵が流されてしまったなど。大自然のバランスが崩れると、仁淀川の生態系は敏感に反応し、私たちに教えてくれるのです。

article_03006.jpgただ竿を出し、自然に抱かれるだけでも気持ちよい仁淀川。

さて、どうやら今年のアユ漁はやや厳しいことになりそうです。釣り師はその技量が試され(つまり腕がなるということでしょう)、仁淀川で育ったアユを料理として提供するお店は、貴重なアユを無駄にしないよう、より腕をふるうことになるでしょう。そして、「なんのかんの言っても、人間は自然に逆らえない」と肝に銘じるのでしょう。こんなふうに「大自然に生かされている」と感じられる日常って、大都会での暮らしではあまりないですよね。

この日のアユ特別採捕の調査結果は、仁淀川漁業協同組合ホームぺージ(http://www.niyodogawa.or.jp/)に掲載予定です。

(仁淀ブルー通信編集部 大村嘉正)
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