2015.10.16山デビューは瓶ヶ森へ、なぜならよい宿があるから(前編)

山デビューは瓶ヶ森へ、なぜならよい宿があるから(前編)

美しい紅葉、澄んだ空気——秋は四国の山のベストシーズン。この機会に山デビューを、という人にお勧めなのが、いの町にある瓶ヶ森(かめがもり)です。絶景の天空道路「UFOライン(町道瓶ヶ森線)」のドライブを経て、登山口から山頂へは徒歩1時間ほど。気軽なうえに、西日本最高峰石鎚山の大パノラマが待っています。そして瓶ヶ森の周辺には、素晴らしい宿が2軒あるのです。登山の思い出を倍増させる宿を、前後編で紹介していきましょう。

 山デビューの人が山で泊まるとなれば、テントよりもまずは山小屋でしょう。しかし山小屋というもの、「個室なし、繁盛期には男女関係なく部屋に詰め込まれ、初対面の人々が〈頭・足・頭・足…〉と互い違いに密着して寝る」という、下界での非常識が常識。とくに山ガールにはハードルが高い……のですが、瓶ヶ森登山では心配ご無用。
瓶ヶ森の登山口駐車場からUFOライン(町道瓶ヶ森線)を通って車で約10分のシラサ峠(標高1400m)に、山小屋らしくない山小屋があるんです。それが「山荘しらさ」。
「うちは、山の世界をのぞいてみたいという人の『とっかかり』になりたい」と、山荘しらさの小森隆一さん。「なのでグループごとに個室を用意していますし、大浴場とは言わないまでも男女別にお風呂もあります」

 小森さんは、ダイビングインストラクター、都会の外資系企業、旧本川村(現いの町)での林業をへて、山好きが高じて、そして性格的に「困難な道を選んじゃうんですよね(笑)」のため10年ほど前からこの山小屋の経営を引きつぎ、内装を大改修したそうです。

 さて、山荘の扉を開けば……おしゃれです。まずカフェ(西日本最高所のカフェ!)があり、階段を下れば薪ストーブがあるロビーと、宿泊客用のダイニングがあります。

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 カフェではサンドイッチをいただきましたが、これ山小屋の料理?という洗練された味わい。宿泊の場合の食事は「旅館のように豪華ではないのですが」と小森さんが謙遜するものの、丁寧に手作りされた料理が用意されます。また、ダイニングの棚には、山小屋に似つかわしくない銘柄の(ちょっと上品な)ウイスキーなどいろんなお酒が並んでいます。これだけ雰囲気がおしゃれで居心地の良い山小屋は、日本アルプスなど登山のメッカでもそうありません。

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 さて、ここまでが一般の山小屋らしくないところですが、なるほど山小屋だな、というのが飛び込みで宿泊希望の登山者を断らないこと(遭難防止のため)。そして寝間着やタオル、洗面道具などは宿泊客が持参だということ。
「これはエコの観点から。ここは吉野川の源流域、洗濯物が増えるとそれだけ川を汚してしまいますから」

 これから山デビューする人へのアドバイスとして、自らも登山を楽しむ小森さんは「夕方、夜、朝っていうのが山のスペシャルな時間、せっかく来たのに昼の山だけではもったいない」といいます。30年間に渡って登山を愛してきた僕も全く同じ意見。日常の慌ただしさから解放され、昼と夜の境で移ろう光と大気を感じ、夜には驚くべき星の数に宇宙の深みを知り、森の闇の濃さに震え、世界が再び光と色で満ちていく瞬間に立ち会う——山に泊まることで出会える風景と感動があるのですから。

(仁淀ブルー編集部 大村嘉正)
●今回の編集後記はこちら

article013_img04山荘しらさのマネージャー、小森隆一さん
article013_img05こちらはカフェスペース。窓からは石鎚山が見える
◆山荘しらさ
http://shirasa.com/index.html
◆UFOライン(町道瓶ヶ森線)の通行情報
http://www.inofan.jp/ (いの町観光協会)