2015.09.24仁淀ブルーの水が育てたツガニ、今からが旬です

仁淀ブルーの水が育てたツガニ、今からが旬です

日本全国で清流が減った結果、「川のカニって美味しいの?」どころか「食べられるカニが川にいるの?」という人まで現れる始末。いやいやちゃんとした川ではものすごく美味なカニが秋になると獲れるんです。今回はアユやウナギと並ぶ仁淀川の幸で、食べるんなら「今でしょ!」の、旬のツガニを紹介しましょう。上の写真は、かにうどん。単体だと850円。ツガニの料理は夏と秋限定なので注意。

仁淀川をはじめ西日本の多くの川ではではツガニと呼ばれていますが、一般名称はモクズガニ(藻屑蟹)。仁淀川では甲羅の幅が10cmぐらいになるまで育ち(一般的には7cmぐらいとか)、日本の川のカニの中では大型です。なんとこのツガニ、世界のグルメを唸らせるあの上海蟹の同族異種(ごく近い仲間)。そして生息域は日本全国の川なのですが、上海蟹なみに人気沸騰しないのはなぜなのか……私が思うに、まず仁淀川のように川漁師がいる清流が減ってしまったことと、ツガニの見た目ではないでしょうか。カニというもの、ツルツルの堅い甲羅に覆われていてほしいものですが、このツガニ、爪から生えているのですよ、柔らかくて黒っぽいふさふさの毛が(とはいえ上海蟹も爪毛がありますが)。見慣れていない人はこの毛に違和感を覚え、食べるのに躊躇するのかもしれません。

ともあれ、ツガニはめちゃくちゃ美味いのです。その味は上海蟹を越えるという人もいますし、あまたの海のカニよりもうまいと断言する人もいます。
「それがね、中国の有名な小説家さんがここで食事して、うちのツガニの味がよかったのか、生きた7匹を買って、新聞紙にくるんで帰国したがですよ。生の蟹は税関を通りゅうですかね?」とは、仁淀川辺で40年以上続く食事処「あおぎ」の女将、田村住子さん。じつは、仁淀川グルメ「ツガニ入りのうどん」を最初にメニューにしたのが田村さんなのです。

ということでさっそくいただきました「かにうどん(850円)」。具はツガニをミキサーでつぶして濾して煮た「こごり(煮こごり)」とツガニまるごと1匹、高知のご当地野菜「リュウキュウ(ハスイモの茎)」、ナスなどなど地方色も豊か。ツガニからのダシの香りは芳醇で、しかし味わいは仁淀川の清らかな流れのように品がいい。静かに舌の感覚を研ぎ澄ましたくなるような旨みです。そしてツガニのこごりは「うーん美味い!」。ふわふわとした食感がたまらない。こごりの下に豆腐が見えますが、それはこごりをふわふわに煮るためのひと手間だとか。さらにツガニにかぶりつけば、黄色いミソの濃厚さ、白い身の風味が口中に広がり、こりゃ癖になりそうです。これだけ滋味豊かなカニを育んでくれる仁淀川…思わず「ありがと~!」と叫びたくなったらこの店の窓際かテラスへ。そうなのです、「あおぎ」からの仁淀川の展望も最高なのです。

◆あおぎ
住/高知県吾川郡いの町勝賀瀬3192
電/088-897-0435
営/8:00~19:00頃、夕方以降は要予約
休/不定休
※ツガニ料理は夏と秋限定
article010_img01ツガニ。陸上だと爪の毛は倒れて目立たないが、水中だとふさふさになる。
article010_img02カニミソも美味い。ツガニの食べ方がわからなければ店員さんが教えてくれる。

article010_img03仁淀川の天然アユなども販売、ここは仁淀川の幸のパラダイス
article010_img04外観のレトロ感からは想像できない(失礼!)上品な川魚料理に出会えます。
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