2015.09.10リレーエッセイ「私と仁淀川」 かくまつとむ(フリーライター)

リレーエッセイ「私と仁淀川」 かくまつとむ(フリーライター)

四国の高知県に、仁淀川という釣り天国があると聞いたのは今から30年以上も前。『猿猴川に死す』という本を読んだのがきっかけでした。流域の佐川町出身で、あの江戸川乱歩の才能を発掘したことでも知られる名編集者、森下雨村が書き遺した釣り随想です。上の写真は当時の高知県知事・橋本大二郎さんと、仁淀川下流の八田(はた)堰の下流でウナギ漁を体験した時の写真。現役知事がウナギ漁をするなんて、自然が身近にある高知県らしい。

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岩を噛む荒瀬での、いかにも豪快な友釣り。石の隙間にエサを差し入れてウナギを探る「ひご釣り」の妙味。ウナギやカニを誘い込む籠仕掛けを揚げに行く、朝の昂揚感…。

あこがれの仁淀川にはじめて足を踏み入れたのは、今から20年ほど前。そこで生涯忘れられない出会いがありました。宮崎弥太郎さんという越智町在住の川漁師さんです。気さくで、ユーモアがあって、しかも凄腕。周囲からは「弥太さん」と慕われていました。

自然に対する造詣のとても深い人でした。たとえばウナギ漁にはたくさんのドバミミズが必要ですが、弥太さんは棒一本で魔法のように捕まえてしまいます。まさに猿猴(カワウソ)。そんな”企業秘密”の数々を小学館のアウトドア雑誌『BE-PAL』で紹介したところ、大変な人気を呼びました。

連載をまとめた単行本『仁淀川漁師秘伝』は、刊行から10年以上たった今も、全国の魚遊び好きの間ではバイブルとして君臨しています。うれしい限りです。

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