2015.09.02仁淀川とラーメンのおしゃれな関係

仁淀川とラーメンのおしゃれな関係

仁淀川本流とその支流に沿った国道脇の人気のない場所に2ヶ所、野の花のようにひっそりと開いているラーメン店がある。しかしこのお店、お昼どきには駐車場がいっぱいになり行列のできる人気店、その名は「自由軒」。なぜ高知市街ではなく、あえて人もまばらな仁淀川の河畔にあるのか。旨さの秘密もふくめて取材してきました。上の写真はみそカツラーメンと半チャーハンのセット 1,020円。安い!

 自由軒は昭和47年創業のラーメン店で、高知県下に4店舗あります。そのうち高知市街にあるのは1店舗のみで、あとは仁淀川流域に2店舗、新荘川(しんじょうがわ)流域(津野町)に1店舗と、まるで昨今の田舎暮らしブームに乗っかったようであります。飲食業にはどうみても不利な立地ですが、高知発のB級グルメ「みそカツラーメン」で人気爆発、「高知家の食卓」県民総選挙2015では「観光客にオススメしたい飲食店」の一つに選ばれています。自由軒の越知(おち)本店を訪ね、これまでのいきさつを創業者の山地文博さんに聞きました。
「なんでこんな田舎にとよく聞かれますが、店の前の道路は、昔は松山と高知を結ぶ幹線国道でものすごい交通量でした。ドライバーの食事処としていい立地だと思ったんです」
 仁淀川支流の上八川(かみやかわ)川にある伊野出来地(いのできち)店も、新荘川の葉山店もドライバー狙いだったそうです。しかし国道の交通量が激減したいまでも、そのラーメンの味に誘われて、わざわざこの店に通ってくる人が増えて繁盛店になったというわけです。

 それではその味の秘密を探ってみましょうか。
「スープは新鮮で良質な鶏ガラを基本に、野菜や魚介を加えています。魚介が嫌味にならないように気を配りながら、透明なスープを作ります。それをベースに醤油や味噌味にするんですが、見た目とは裏腹にあっさり系で、お年寄りにも好評なんですよ」
 ともに透明なスープと仁淀川の組み合わせ…。なかなかおしゃれな関係といえます(笑い)。この日は一番人気のセットメニュー「みそカツラーメンと半チャーハン」をいただきましたが、これがなかなかのボリュームで、カツも分厚い!しかし、話のとおりあっさり味のスープのため、するするとお腹に収まってしまいました。チャーハンはお米の食感がしっかりしていて、口の中で、「おれはチャーハンだ」としっかり主張する味わい。
「ライス用とチャーハン用と、米は別々に炊いてます。卵も厳選してますよ」という山地社長の奇をてらわず、丁寧で正直な仕事ぶりが印象的でした。

 高知道開通の影響で松山方面に向かう車の流れは往時よりずいぶん減ってしまいましたが、仁淀ブルーの美しい川の流れに誘われてやってくる観光客の新しい流れが、この店を支えているようです。
「仁淀川、きれいでしょう。昔からきれいでしたけど、最近ようやく気づいてもらえたんですかね。観光客が増えたし、そのなかにはこの店を目当てに来てくれる人もいるようです。ありがたいですね。仁淀川の美しい景色も、うちのラーメンも両方楽しんで帰っていただけるとうれしいですね」

自由軒 越知本店
住/高知県高岡郡越知町野老山2882(国道33号線の旧道沿い)
営/11:00~21:00
定休日/月曜(祭日の場合は翌火曜日休み)と第2火曜
TEL/0889-26-0198
article007_img01.jpgカツは厚め。みそカツラーメンのみだと795円。
article007_img02.jpg仁淀川流域の自由軒は、越知町の仁淀川沿いにあるこの越知本店と、いの町の上八川川沿いの伊野出来地店。

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