2019.02.15高知と北海道の繋がりは、龍馬とよさこいと、土佐文旦?

高知と北海道の繋がりは、龍馬とよさこいと、土佐文旦?

酸味・甘み・苦味、3つの味のバランスが絶妙な土佐文旦。
味もさることながら、名前に「水晶」という宝石の名前を持つ物もあるほど美しいフルーツです。
あるシェフは言いました。
「文旦は多分これから日本だけでなく、『お皿の上のアート』を追求する海外のシェフ達にも注目される食材になると思いますよ。特に個性的だと思うのは、文旦の旨味(水分)が、一粒一粒の中に、ちゃんとおさまっているということなんです。この特徴が料理に、デザートに、実に面白いバリエーションを与えてくれます。」

 越知町の岡林農園さんにおうかがいした時、仁淀川に架かる沈下橋の上から、川底が透き通るほど美しい仁淀ブルーを見ることができました。
 この農園で収穫される文旦の、それこそ一粒一粒の中に、この仁淀の恵みが凝縮されており、まるで水滴が集められているかのように美しく輝いて見えたものです。

article174_01.jpg越知町の仁淀川に架かる浅尾沈下橋と川底まで見える仁淀川。向こうは鎌井田の集落(撮影/松田雅子)。

 取材に訪れたのは12月。越知町浅尾にある岡林農園の文旦畑の収穫は殆ど終了しており、大量の文旦たちが、熟成のため倉庫の中で静かに出荷される日を待っていました。

article174_02.jpg岡林農園の露地文旦畑。露地ものはこれからが本格シーズン。ちなみに水晶文旦は10月から11月。温室土佐文旦は12月から1月頃までがシーズン。

article174_03.jpg文旦は収穫してもすぐには出荷されず、酸味をまろやかにするために定温の倉庫でしばらく寝かされる。こうすることであの独特の甘みと酸味のコラボレーションが生まれる。

article174_04.jpg出荷を待つ熟成中の文旦。

 ところで、清流 仁淀川の水をたっぷり含んだ、これらの文旦を、首を長くしながら待ってくれているのが、なんと、北海道に住む人々! なんですって。
 今までよく知らなかったのですが、気候の関係で、北海道では柑橘の栽培が難しいらしい。なので寒いこの時期、北海道民は風邪予防のビタミンCを求めて、高知フェアを待ち望んでおられるご様子なのです。

article174_05.jpg北海道北見市コミュニティプラザ パラボで開催された「第10回 高知県の観光と物産展」より(写真提供/岡林農園)。

 写真は昨年の北海道フェアの様子です。他にも、北海道の東急百貨店札幌店で開催された「第1回 高知県の物産と観光展」や同じく札幌の大通ビッセで開催された「土佐の果実とうまいものフェアin大通ビッセ」などなど、いずれも、たくさんの土佐文旦ファンで賑わったそうです。

 高知と北海道の結びつきといえば、坂本龍馬の養嗣子(ようしし 養子縁組で家督を相続した子)坂本直寛(なおひろ)が、坂本龍馬の思いを受け継ぎ、1895年に移民団「北光社(ほっこうしゃ)」を設立したことがあげられます。1897年に家族など約100戸を従えて北見クンネップ原野の開拓に向かい、現在の北見市の発展に大きく貢献しました。
 また最近では、高知の「よさこい祭り」に感動した一人の大学生が「北海道でもこんな祭りをやりたい! 」と働きかけて、高知県民が協力。足繁く北海道に通って踊りなどを指導し、よさこい祭りの「鳴子」と北海道の民謡「ソーラン節」をミックスして「YOSAKOIソーラン祭り」ができ上がったことなどが知られています。
 そしてさらに、岡林農園のご努力により「土佐文旦」でも繋がっているということなのですね。
地球温暖化の影響なのでしょうか? 日本もどんどん亜熱帯化しているように思えて仕方がない現在、もしかしたら近い将来、高知でアマゾンのフルーツが育ったり、北海道で何がしかの柑橘栽培ができるようになったりする日が来るかもしれません。

 北海道といえば
「♪あ〜あ〜あああああ〜あ〜」
若かりし日、倉本聰さんの「北の国から」に憧れて富良野を旅し、富良野塾の周りをウロウロして帰ってきたこともある私ですが、2016年、「新聞ばっぐ」の畠中智子さんのお陰で、作・演出 倉本聰さんの『屋根』高知公演にムキムキ文旦を差し入れさせていただいたことがありました。
 その後、倉本さんの秘書の方からお手紙をいただきました。
「2年前に富良野GROUP公演『屋根』で高知にお邪魔し、キレイに剥いていただいたプリプリの文旦の味を忘れることができず、毎年高知の文旦を取り寄せるようになりました。倉本夫妻は、ほんの少しのハチミツをかけて召し上がったり、『文旦好きがこうじて』に掲載してある料理を楽しんでおります」
「文旦ムキムキしてきて良かった〜!!!」
叫びたいほど嬉しかった出来事でした。

article174_06.jpgこんな感じかな? 倉本聰さんが楽しんでいるというハチミツ文旦は。

ブンタンムキムキフリーライター 松田 雅子(まつだ・まさこ)
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