2020.07.31浮かんでいるのは川か宙か? 仁淀ブルーを満喫する体験がスタート!

浮かんでいるのは川か宙か? 仁淀ブルーを満喫する体験がスタート!

安居渓谷をはじめ清流の王国なのに、これまでプロの川の案内人がいなかった仁淀川町。ついに今年、川のアウトドア事業者が2社も誕生しました。この号ではまず、透明な川ならではの体験へいざなう「仁淀川アウトドアセンター」を紹介しましょう。

 仁淀川の支流・土居川(どいがわ)。その流れをさかのぼれば安居川(やすいがわ)に枝分かれし、一説には「仁淀ブルー」発祥の地ともいえる安居渓谷に至ります。つまり土居川は安居渓谷と並ぶ清流。その澄んだ川面ならではの体験が始まりました。それが上の画像、仁淀川アウトドアセンターの「カヌー宙船体験」(画像撮影/村田弘毅)です。

article225_01.jpg土居川、宮崎の河原。

 場所は、町並みが土居川に寄り添う池川地区、宮崎の河原。いくつもの早瀬を下った土居川は鏡のような川面となり、下流へと続いていきます。

article225_02.jpg土居川を漕げば、まるで空中浮遊(このカヤックは私物です)。

 ここはほぼ静水、しかも仁淀ブルーゆえに、カヌーの影が川底にくっきり。漕いでみると、まるで宙に浮いているような気分です。こんな場所、仁淀川でもそんなにありません。さらに、集落は近いしトイレもあるし川面へのアクセスが容易なので、夏の川遊びにはうってつけの河原です(宮崎の河原はキャンプ場でもある)。仁淀川アウトドアセンターはこの宮崎の河原のそばの高台にあります。

article225_03.jpg村田弘穀さん。

 この体験メニューの発案者が村田弘穀さん。2015年に東京都の下町から越知町へ移住し、地域おこし協力隊として活動していました。任期終了後は、仁淀川流域の自然や文化を体験してもらうために「NPO仁淀ブルーふるさと体験センター」を立ち上げ、この春からは仁淀川アウトドアセンターの運営も任されています。

article225_04.jpg宮崎の河原にある仁淀川アウトドアセンター。土居川を挟んだ対岸には、池川の集落が。高知龍馬空港から車で約80分。

 仁淀川アウトドアセンターではカナディアンカヌーやSUP(スタンドアップパドルボード)での、のんびりとした体験を提供している村田さんですが、急流下りもこなす腕の持ち主。カヌー歴はなんと1990年頃からですが、きっかけは少し意外です。

article225_05.jpg宮﨑の河原での村田さん。川の向こうには、お茶スイーツで知られる「池川茶園」がある。

「カナディアンカヌーですけど、まず興味を持ったのは、木を貼り合わせて自作することだった」という村田さん。そんなとき知人から、「完成したカヌーを売るのなら、漕ぎ方や川の下り方も教えないと」という声が。
「じゃないとみんな漂流しちゃうぞと(笑)。それでカナディアンカヌーの漕ぎ方を学んで、急流下りもできるレベルにまでなりました」。

article225_06.jpgカナディアンカヌーのベテラン、村田さんが教えてくれるので、初心者でも簡単に仁淀ブルーを漕いで行けます。

 そして、村田さんは主に長瀞(埼玉県の荒川の景勝地)でカナディアンカヌーのスクールと体験ツアーや、関東一円でサイクリングツアーを20年以上運営していきます。
「でも、そろそろ、本当にきれいな川でカヌーをするのもいいなと思い始めたんです」。

仁淀ブルーと川舟に魅せられて

 カヌー愛好家なのに「実は、仁淀川は存在すら知らなかった」という村田さん。高知県の移住体験ツアーを通じてその美しさに驚き、また同時に、かつてこの川が舟運でにぎわっていたことを知ります。
「昔は炭などを積んだ木造舟が仁淀川を行き来していた。仁淀川にはまだ川舟を作れる人がいることも知ったし、そういう木造舟を作る愛好家との出会いも高知でありました」。
 もともとはカナディアンカヌーを木で造ることが好きだった村田さん、これは行くしかないだろうと、長年住み慣れた都会を後にしました。

article225_07.jpg村田さんの心をとらえた仁淀ブルー。

「越知町の地域おこし協力隊では、観光振興にもなるので、仁淀川に川舟を再び浮かべることに取り組みました。人を何人か乗せて川を行き来できる舟です」。
 木造小舟の愛好家といっしょに川漁師サイズの川舟をいくつか建造し、ついには、旧須崎工業高校(現須崎総合高校)の造船学科の協力のもと、12人乗れるものも完成させました。

article225_08.jpg仁淀川に浮かぶ村田さんの川舟。(画像提供/村田弘毅)

 いま、その川舟は少し小さく改造されていて、仁淀川アウトドアセンターの体験メニューにも加わるそうです。「船底は一部透明にしてあります。水中を眺めながら、ゆらゆらと進んでいきます」。
 川舟は安定しているし、船頭(主に村田さん)が操るので、幅広い年齢の人が仁淀ブルーを楽しめることでしょう。

E-バイクも予定中

 川だけでなく、陸上でも新しい仕掛けを村田さんは考えています。
「それがE-バイク。何台かそろえる計画です。レンタルまたはサイクリングツアーを予定しています」。
 E-バイクとは電動アシスト自転車(ママチャリ)のスポーツサイクル版。1回の充電で100km以上走れます。仁淀川流域の、標高300~500mの山肌に点在する絶景の天空集落を巡るサイクリングにも活躍しそうです。

article225_09.jpg仁淀川アウトドアセンターでは、カナディンカヌーのほか、SUP(透明なものも)やクリアカヤックで仁淀ブルーを体感できる。(画像撮影/村田弘毅)

「仁淀川を訪れる多くの旅行者は、『カヌーがしたい』ではなく、『仁淀ブルー』が目的ですよね」と村田さん。彼がみんなに届けたいのは、カヌーやSUPというアウトドアアクティビティよりも、地域の自然・文化が主役になる体験のようです。
「私のところで、仁淀ブルーを存分に楽しんでください。思い出になる画像もたくさん撮れるし、私もたくさん撮影してお渡ししますよ!」。

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      仁淀ブルーだから転覆しても平気!

 帰宅後は「こんなきれいな川で遊んだ!」と家族や友達に自慢できる、仁淀川アウトドアセンターの体験メニュー。広くて穏やかな、そして、たとえ転覆しても気持ちいい澄んだ川が、皆さんをお待ちしております。

★「仁淀川アウトドアセンター」は「宮崎の河原キャンプ場」のそばの高台にあります。

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(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)

★次回の配信は8月14日予定。
「仁淀川ボタニカルスケッチ散歩(2)」をお届けします。
お楽しみに!

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