2020.01.03いの町の商店街にオープンしたばかりの、ちょっと変わったレンタルオフィス「KOKUBAN」を覗いてきました

いの町の商店街にオープンしたばかりの、ちょっと変わったレンタルオフィス「KOKUBAN」を覗いてきました

2019年10月14日にいの町の街中にオープンしたばかりの「KOKUBAN(こくばん)」という変な(失礼!)名前のレンタルオフィスがずっと気になっていました。高知市内ならいざ知らず、あえて郊外に作ったのはなぜ? 名前の由来は? 需要はあるの? などなど…。はてなマークをいっぱい頭に詰め込んで「株式会社KOKUBAN」代表の田村樹志雄(きしお)さんに会いに行ってきました。


article205_01.jpg看板はこんな感じです。

「KOKUBAN」のエントランスはこんな感じ(下の写真)。
いの町旧商店街の一画にあって休眠状態になっていた黒板工場とその事務所を全面的にリニューアルして誕生したレンタルオフィスです。入り口を入ると商店街に面したスペースはカフェ、その奥がレンタルオフィスという開放的なレイアウトになっていてオフィスで話を聞いているとコーヒーのいい香りが漂ってきました。淹れたての温かいコーヒーをいただきながら仕掛人の田村樹志雄さんの話を聞くことにしました。

article205_02.jpg「KOKUBAN」のエントランスは一見カフェと見紛う作り。

article205_03.jpgカフェの手書きのメニュー。黒板にチョークで書かれているのは田村さんの遊び心?

「KOKUBAN」の案内パンフレットに田村さんは「KOKUBANのおもい」と題してこう書いています。
<ようこそKOKUBANへ。私たちは、いの町の中心商店街の中にあるこの建物に、オフィス利用者をはじめとするビジネス関係者、地域にお住いの方々、観光でお越しになった方々が思い思いに集い、交流し、新たな価値を創る「場」となるように努めることで、新たなビジネスの創出など地域の発展に貢献したいと考えています>
 じつは田村さんの本業は企業コンサルタント。創業支援、経営改善支援、経営人材育成支援などを行う経営コンサルティング会社「タクティス」(本社高知)の代表のほかに、特定非営利法人「こうち企業支援センター」理事長、高知県産業振興部産官学民連携・起業推進課の企業支援アドバイザーも務めている。

article205_04.jpg田村樹志雄さん(43歳)。

 田村さんは1976年いの町の生まれ。高知学芸高校から大阪大学経済学部に進み、1999年にJR西日本に就職するが退職、2012年に一橋大学大学院に入り直し経営学修士(MBA)を修め、6年前に生まれ故郷の高知にUターンしてきた。実家はいまも町内で病院を経営しているお医者さん一家の出ということもあって、いの町に対する思いはかなり強かったようです。そんなとき2008年12月に町の中心市街地活性化協議会が立ち上がります。田村さんはそこにアドバイザーとして参画し、シャッター通りとなった中心市街地の再生プロジェクトに取り組むことになります。
「アドバイザーとして”働く場作り”のワークショップを4~5回やるうちに町出身の人間のひとりとして何か具体的な役割を果たさないといけないとの思いが強くなってきました。そんなとき廃業して空き家になっていた中山黒板教具店という黒板工場の跡地利用の話が持ち上がって…」(田村さん)

 「いの愛」がムクムクと入道雲のように湧き上がってきた…。つまりミイラとりがミイラになったってことですね。
「あはは、まあそんなところです。いろいろなご縁があってたまたまKOKUBANをいの町に作りましたが、仁淀川流域6市町村全体の振興に役立つスペースにしたいなと考えています」(田村さん)

article205_05.jpgシャッターを閉めた店が目立ついの町の旧商店街。

article205_06.jpg商店街では現役のお店もまだまだ頑張っています。

article205_07.jpg共用の打ち合わせスペース(34㎡)からカフェ越しにエントランス方向を見たところ。

ところで、ここはどんなユーザーをターゲットにしているんですか?
「県外の中・大企業のサテライト・オフィス需要ですね。今のシェアオフィス市場は”安あがり志向”と”こだわり環境志向”の2極化がどんどん進行しています。うちは後者の受け皿を意識してビジネス環境のいい高知市内をあえて選ばず、郊外の仁淀川至近環境をウリにして”こだわり環境志向”のニーズを取り込もうと考えています」(田村さん)
 オープンして2か月余り、入居は順調ですか?
「問い合わせは今まで7~8件といったところですね。ほぼ県外の企業ですが、私は”移住者+シェアオフィス”を意識しています。つまり企業誘致とあわせてやる気のある移住者獲得のビジネスモデルにできないかと」(田村さん) 
 KOKUBANのホームページには<水質日本一の仁淀川まで徒歩3分>を謳っています。これって、かなり仁淀川を意識していますよね。
「はい。夏は学校から帰るとそのままザブンと飛び込んで遊んだ仁淀川は昔も今も町民のシンボルです。だから仁淀川の存在なしにいの町のこれからも語れないと思っているんです」(田村さん)

article205_08.jpgブースオフィスは1.9㎡の個室(月額賃料25,000円)。天井は開放ですが4面を壁で仕切られているので妙に落ち着きます(笑い)。ご近所にキャンパスのある某大学の先生がひとつ借りているとのこと。

article205_09.jpgKOKUBANの料金表。(画像をクリックすると拡大できます)

 またパンフレットには<町内には西日本最高峰である石鎚山系吉野川源流域の山岳地域、5年連続水質日本一の仁淀川など、人の手を加えずして素材そのものが素晴らしい自然環境があります>と書かれていて、人と自然がともに息づくいの町ということを田村さんが強く意識していることがうかがえます。
 つまりKOKUBANはレンタルオフィスという体裁をしていますが、じつは、田村さんが生まれ故郷・いの町に設けた地域貢献活動の拠点ということができると思います。仁淀川流域6市町村の新たな地域振興のロールモデル(見本)のひとつになる可能性のあるステキな取り組みだと思います。
仁淀ブルー通信も応援しますよ!

KOKUBAN OFFICE & CAFE
住所:〒 781-2110 高知県吾川郡いの町3175
電話:080-4984-2826
E-Mail:tamura@sv-cafe.com
営業時間:09:00-17:00(※日曜定休日)
HP:https://www.kokuban-office.com/

★次回の配信は2020年1月10日予定。
アンコールシリーズ。2016年4月15日に配信の”もう一つの「ブルー」と、森林軌道跡を探しに行く!”をお届けします。
お楽しみに!

(仁淀ブルー通信編集長 黒笹慈幾)
●今回の編集後記はこちら