2019.11.01【アンコール記事】ゲストハウス縁(en)に泊まって、のんびり昼寝したい!(2016.09.23配信)

【アンコール記事】ゲストハウス縁(en)に泊まって、のんびり昼寝したい!(2016.09.23配信)

仁淀ブルー通信では、仁淀川流域に魅せられた移住者たちを紹介してきました。彼らが「なぜここに来たのか」をふり返るアンコールシリーズを始めます。その後の近況もありますよ!
今年の春、仁淀川流域に新しい宿が誕生しました。場所はかなりの山奥、標高400m、正真正銘の田舎!しかも都会から移住してきた若者が切り盛り、ということで、オーナーの金原隆生さんにその経緯を聞いてきました。

大都会の住人には、『もうこれだけでもアドベンチャー』な雰囲気の細道を車で登ること約10分。鬱蒼とした林から抜け出て、見晴らしのいい『谷ノ内』という小さな集落にたどり着きます。標高は約400m。見渡す限り緑の山ばかりで、遠くの眼下に小さく仁淀川の水面が見えました。こんな山奥にも人の暮らしはあって、泣いたり笑ったり腹がへったりする……世界も、人生もいろいろなのだなあと、あらためて感じさせてくれる場所です。

article_04902.jpgゲストハウス縁がある谷ノ内集落

ゲストハウス縁はこの集落の山肌にあり、庭の向こうには大きく開けた山並みの絶景が広がっています。母家はまさに『懐かしい田舎の民家』で、2階にある客間の、小さな縁付の窓(時代劇の旅籠みたいです)は障子と雨戸のみ。現在40歳以下で都会育ちの人には信じられない造りかもしれません。
「冬はすごく寒い客室です。ストーブと湯たんぽで暖をとれるから大丈夫ですが、それでも少し寒いというお客さんがいるかも」と金原隆生さんは少し自虐的に笑いましたが、つまりは、現代人が忘れた『季節感』に出会える宿ということなのでしょう。

article_04903.jpgゲストハウス縁のオーナー、金原隆生さん。2階の客室にて。

この、おばあちゃんの家に里帰りしたような気分になれる宿を始めた金原さん、実は仁淀川に縁もゆかりもありませんでした。生まれは愛知県で、その後は基本的に都会でサラリーマン。登山やカヌーなどアウトドアの趣味もありませんでした。それが、2013年に仁淀川流域の高知県越知町へ移住することに。「仁淀川っていいなあ、田舎暮らしをしたいなあ」という人は少なくないと思うので、どうやって移住したのかを金原さんに伺ってみました。

目的は仁淀川じゃなかった!?

― なぜ越知町を移住先に?

実は、たまたまでして(笑)。地域おこし協力隊をテーマにしたドラマを見て、あんな田舎暮らしをしてみるのもいいかなと思ったんです。それで、暖かそうな地方で、地域おこし協力隊※を募集している町はと探して、越知町を見つけました。

※地域おこし協力隊とは?
地方自治体が、都市部など他所からの人材を積極的に受け入れ、彼らに様々な地域活動をしてもらうという事業(2009年に総務省が制度化)。移住したよそ者の視点からの地域の魅力発掘・発信など、地域おこしを主眼にしている。また任期終了後に隊員がそのまま定住してくれることも図り、人口減や高齢化が進む地域の担い手増加を目標にしている。

― では、仁淀川が大好きで移住、というわけではなかったと。

なので、田舎で定住というより、田舎に転勤、というノリでした。地域おこし協力隊の3年の任期を利用して、田舎での暮らしってどんなのかを体験しようと。

― それがまたどういうわけで、ド田舎の山奥へ定住することに?

仁淀川での川下りに出会ったことが大きかったですね。地域おこし協力隊をしているときに、越知町観光協会のソフトラフティングツアーでガイドをするようになって、はまりました。川下りは全くの未経験だったんですけどね。ラフトボートで仁淀川を案内するって、素晴らしい仕事だなあと。

article_04904.jpgソフトラフティングツアーではこんなところを下っていく。
article_04905.jpgこちらはラフティングガイドの仕事をしている時の金原隆生さん。

― 越知町観光協会のカヌー・ソフトラフティングツアーは、仁淀川でも自然が濃い区間を下っていくため、観光客に人気ですよね。

そうです。しかし、地域おこし協力隊の任期を過ぎてしまうと、ラフティングの仕事だけではここで暮らしていくのが難しい。それでゲストハウスを始めることに。

ヘルパーをしながらお試し移住を

― ゲストハウス縁の建物ですが、これは賃貸ですか?

いえ、購入しました。

article_04906.jpgゲストハウス縁1階の共有スペース。

― 田舎では不動産物件を見つけるのも購入するのもハードルが高いですよね。

自分の足で探したり、情報網をはりめぐらせていました。地域おこし協力隊員という立場なので、いろんな人と出会えましたから。それでも、空き家はあるけど物件はないという状況で。最初は、もっと麓の方で、例えば仁淀川を見渡せるような環境を考えていたのですが……。この家は、地域おこし協力隊の同僚が先に見つけていて、でも彼はここを住処に選ばないというので、私が購入できることに。

― 探すのに苦労したおかげで、他にはあまりない田舎の宿になっています。これほど自然濃厚で美しい山里のゲストハウスは珍しい。

そうですね、晴れて月のない夜の星空を見上げると、きっと驚きますよ。

article_04907.jpgゲストハウス縁の夜空。天の川銀河が明るい(画像提供:ゲストハウス縁)。

― 購入したとき、この家はすぐに住める状況でしたか?

庭はジャングルでした。母家や、離れの風呂とトイレなどは、宿として開業するにあたって改修しました。浄化槽も新たに設置しました。

article_04908.jpgトイレと風呂は離れ。まさに懐かしい田舎の民家だ

― 改修と開業には資金が必要ですよね。どのように用立てを?

あらゆる方法でかき集めました(笑)。クラウドファンディングや、移住者支援の補助金制度も利用しました。

― 近頃は、地方への移住定住促進のため、家の改修費用の補助など、様々な行政支援が利用できますよね。

そのせいか、ちょっと田舎を訪れて、「ここはいいなあ、住みたいなあ、家はないですか?」という気軽な感じの人もいます。でも、住む家が見つかっただけで田舎へ、というのはおすすめしません。何度かその田舎に通うなど、ある程度の日数を過ごしてみて、地域の人や環境を知った上で「ここがいい」となってから移住したほうがいい。

― 金原さんの場合は、仁淀川もそうですが、越知の人たちや風土が自分に合ったということでしょうか?

実は、このゲストハウスを開業してからのお客で一番多いのは地元越知の人たちなんです。「あいつ、大丈夫か?」と心配してくれているのかな(笑)。とても嬉しいし、感謝しています。

article_04909.jpg2階の客室。時間がゆっくりと流れていく(画像提供:ゲストハウス縁)。

― 仁淀川の観光客だけでなく、移住を希望している人もこの宿を利用するといいかもしれませんね。

いま、ゲストハウス縁では、フリーアコモデーション形態(給料無しだが宿泊費無料など)のヘルパーを募集しています。ヘルパーをしながらここに滞在し、休日や勤務時間外を利用して仁淀川流域を体験できます。移住や定住を考えている人はどうでしょうか? 
詳しくはゲストハウス縁のホームページをご覧ください。

― これから秋が深まっていきますが、この山里は素晴らしい日々が続きそうですね。

過ごしやすい日が増えて、夜には満天の星空に出会えます。また、川下りは夏のイメージがありますが、実は秋のソフトラフティングも最高です。仁淀川の水は澄み渡り、川面の風は涼やかで気持ちいい。見上げる山の秋色の移ろいも素敵ですよ!

article_04910.jpgこの日は金原隆生さんのご両親がお手伝いに。我が子の挑戦に、ご両親はワクワクしているようです。
ゲストハウス縁 http://guesthouse-en.sakura.ne.jp/
◆その後のゲストハウス縁と金原隆生さん◆
 起業して今年で4年目の「ゲストハウス縁」。金原隆生さんから近況をいただきました。
「本当にありがたいことに、開業以来たくさんのゲスト様にご利用いただいています。なかには、4年連続で宿泊のゲスト様もいらっしゃいます。今年はというと、海外からのゲスト様も増加中です。コミュニケーションにエネルギーは使いますが、いろんな国のゲスト様との刺激的な時間を楽しんでいます」。
 ゲストハウスだけでなく、金原さんはラフティング事業も運営し、自らもラフティングガイドとして仁淀川の素晴らしさをみんなに伝えています。
「ツアー会社名は【Ultimate River】(究極の川)です。今年で2年目となりました。最高の仁淀川で、最高のラフティングツアーを多くの方に楽しんでいただけるよう、今後もはりきって川の案内人をしていきます! 」。
 来年の4月25日で5年目を迎える「ゲストハウス縁」。この記事の取材時より、露天の五右衛門風呂が増設されるなど、おもてなし度はアップしています。ぜひ天空の山里の一夜をご体験ください。

★次回の配信は11月8日予定。
「仁淀川にベストな乗り物かも! パックラフトとは?」です。
お楽しみに!

(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)
●今回の編集後記はこちら