2018.12.07仁淀ブルー「絶景ティーブレイク」第3話 ~流木焚き火コーヒーの喜び~

仁淀ブルー「絶景ティーブレイク」第3話 ~流木焚き火コーヒーの喜び~

仁淀川には、都会ではまず不可能なコーヒーの楽しみ方があります。それが「流木焚き火コーヒー」。仁淀川の河原では、熱いコーヒーを入れるのに電気もガスも必要ないのです。

 仁淀川とその支流にあるものといえば広い河原。そして河原には豊かな資源、流木が眠っています。

article164_01.jpg今回の絶景ティーブレイクは、仁淀川支流・上八川川の広瀬の河原で。

 実は私、仁淀川流域の取材では息抜きにコーヒーを楽しむことが多く、そのとき相棒になってくれるのが流木。それは小さな焚き火となり、湯を沸かしてくれます。

article164_02.jpg私が車に常備しているコーヒーセット。実家の家財整理で見つけたキッチングッズや、古くなったキャンプ道具を再利用。
article164_03.jpgこの半分ぐらいの量の流木で、約3人分のコーヒーを入れられます。これぐらい細くて短い流木なら仁淀川水系の河原のそこかしこにあり、すぐに集められます。

article164_04.jpg湯が沸くのを待つあいだに……豆を挽きます。仁淀川流域の澄んだ大気に、コーヒーのアロマが広がります。

 コーヒーの豆を挽き、ドリップするという手間には、「芳醇なアロマを独り占め」というご褒美があります。では、「流木を集めて焚き火を熾す」という手間が与えてくれるものは?
 私の場合は、「人生の喜びって、近くにあるし単純だな」という、なんというか「気持ちのリセット」みたいなものでしょうか。
 流木焚き火コーヒーでは毎回、自分の中心が定まるような安心と、じんわりとした満足を感じます。それは焚き火が、大昔から生きることに欠かせないものだったからだと、私は思うのです。

article164_05.jpgアウトドアでも、湯を注ぐポットにはこだわります。すこし乱暴に扱っても大丈夫で、湯をゆっくりと細く注げるものが私の定番。

 流木に着火できたときの喜び、火を育てるときの心地よい緊張感、炎を眺めているときに訪れる安らぎ……。流木の焚き火によって浮かぶ感情は、人類として太古からの受け継いできた遺伝子の「ささやき」なのかもしれません。

article164_06.jpg美しい川面を愛でながらのコーヒーブレイク。贅沢だけど、これが仁淀川ではごく当たり前。

 私の流木焚き火コーヒーの理想は、コーヒーの余韻が消えていくころ、焚き火も落ちていくこと。そして、流木の量や火をコントロールして、完全に燃え落ちることにもこだわっています。このときも、白い燃え殻はかすかな風で崩れ、河原の砂に戻っていきました。そしてコーヒーのアロマのかわりに、焚き火のスモーキーな香りだけが河原に残りました。

article164_07.jpgこの流れの中にはアマゴが。この日は何度も跳ねながら川面の虫を食べていました。

●今回のコーヒー豆

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 仁淀川のライバル(!?)、日本最後の清流四万十川の源流部にある「コーヒー7不思議」の「四万十川源流点ブレンド」をセレクトしました。「こんな山奥で、怪しい」という先入観が、「こんなうまいコーヒーがなぜここに!」という感動に変わるコーヒーショップです。店主の山本歩さんは屈指のロースターとしてコーヒー業界では知られた人物。高知県のみならず、四国のコーヒー好きは足を運ぶべきお店です。

◆コーヒー7不思議

(仁淀ブルー通信編集部員/大村嘉正)
●今回の編集後記はこちら