2018.03.09サイクリストは仁淀川に集合! 6月にイベントです。

サイクリストは仁淀川に集合! 6月にイベントです。

来る6月3日、仁淀川流域6市町村を舞台に、一大サイクリングイベント開催!
この地域の魅力を全国のサイクリストにとどけるだけでなく、スポーツサイクルを仁淀川流域の文化として根付かせようというこのイベント、そのキーパーソンにインタビューしてきました。

 イベントの名称は『GREAT EARTH 第一回高知仁淀ブルーライド』。サブタイトルの『奇跡の清流、日本一青く美しい仁淀川流域を走りつくせ』のとおり、仁淀川流域の魅力的景観を余すところなく巡っていくサイクリング大会(レースではない)になっています。設定されているサイクリングコースはスーパーロングコース(135km)、ロングコース(120km)、ショートコース(70km)の3つで、すべてにエイドステーション(休憩・交流所)を4~6カ所設置。前夜祭あり、地元の人たちとのふれ合いありという楽しいイベントになる模様。

article125_01.jpgこのイベントの仕掛け人、小野義矩さん。

 このイベントの発案者であり、今その準備に奔走しているのが、仁淀ブルー通信2017.10.27配信号にも登場した小野義矩さん。昨年、いの町に移住して地域おこし協力隊になったのですが、それ以前は、神奈川県で、スポーツバイク界の有名ブランドである「TREK(トレック)」専門店の店長をしていました。つまりは自転車のプロ。小野さん、このイベントはどんな感じになりそうですか?

バラエティーに富んだ景観を走り抜けていく

小野:これだけいろんな要素が詰まったコースは珍しいと思います。スーパーロングコース(135km)では、仁淀ブルーな清流がある山深い渓谷から、太平洋の大海原までを巡ります。のどかな里山もありますし、歴史的建物やレトロな商店街が残る町並みも走り抜けます。適度にアップダウンがあり、仁淀川流域6市町村を巡りながら、変化のあるライドが楽しめるはずです。

――小野さん自身がそのコースを自転車で走ってみたんですよね?

小野:こちらに移住してから、山里の集落を繋ぐ道とか、山奥の林道などを自転車で走りまくってます。ロードバイクにせよ、マウンテンバイクにせよ、この仁淀川流域は自転車を楽しむには最高ですね。そんな経験の積み重ねから、そして今回のイベント名にも入っている『GREAT EARTH』(以下、グレイトアースと表記)の企画運営サイドや、高知県サイクリング協会からのアドバイスも取り入れて、コースを設定しました。

article_125_02.jpg仁淀ブルー発祥の地、仁淀川町の安居渓谷。
article_125_03.jpg茶畑に民家が点在する、仁淀川町の池川地区。

article_125_04.jpg佐川町黒岩地区の田んぼ(秋の写真ですが……)。
article_125_05.jpg佐川町、酒蔵の町並み。

――コース設定で気をつけたことは?

小野:安全面を考えて、なるべく同一方向に走行する、分岐の少ないルートにしました。行き違いだと、ライダー同士が接触したり、道に迷う原因になるので。

――グレイトアースというのはイベント名なんですね

小野:そうなんです。僕が川崎でスポーツサイクルショップの店長をしていた頃からお付き合いのあった会社(株式会社デポルテ)が企画運営しているサイクリングイベントで、今年で11年目。これまでに北海道(富良野)や京都、石垣島、ハワイでも開催されてきました。四国では今回が初。私が発案し、彼らに協力してもらって運営していきます。

article125_06.jpg越知町、片岡沈下橋。

テーマは、地域と共に

小野:グレイトアースでは、『地域主義』を掲げているのが、僕はいいなと思っているんです。

――地域主義というと、具体的にどういうことでしょう?

小野:イベントの資料をお持ちしました。

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――なるほど。地域を開催地として利用するだけじゃなくて、地域に何かよい効果をもたらすイベントをと、心がけているようですね。

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小野:地域の方たちとの関係作りを着実にやっていきたいと思っていまして、今、各地区の区長さんに事業説明を開始するところです。

――何か協力を求めたりもするのですか。

小野:そこではスポーツサイクルが日常ではないので、いうなれば異文化を持ち込むことになります。なので、スポーツサイクルがこんな速度でこういう走り方をするんだということをお伝えすることが目的です。地域にとっては、自分たちの生活道路に、知らない自転車乗りたちがたくさん来ることになります。スポーツサイクルとは何かを知ってもらうことが大事なんで、地道にやってます。

――なかなかたいへんですね。

小野:イベントを開催する、というだけなら、道路や場所の許可をもらえばできると思います。でもこの大会は、理想ではありますが、流域に暮らす様々な方と一緒に作りあげていきたい。そうすることに意味があると思って、活動しています。

――都会からサイクリングする人がたくさん来るから、誰でもいいので「地域の方、手伝ってください」ということではないのですね。

小野:開催するうえで、やはり人員不足には直面します。ですが、開催趣旨に賛同して頂いていない方を巻き込んで、というのはしたくないです。顔を合わせて事業説明したり、大会を重ねていくことで少しずつ理解が広がっていけば、大会運営に関わってみてもいいかな、という方がきっと増えるのではと思っております。
 もちろん、開催趣旨に賛同して頂いた上で、第一回から大会運営に関わって頂くことは大歓迎です! ご連絡お待ちしております! また、ローカルライダー(地元の自転車愛好家)の方にはサポートライダー(エントリーフィーは無料)をお願いしたいと思っています。

article125_09.jpg橋を渡るとき、思わずペダルを止めてしまう、仁淀川の流れ。

――サポートライダーとはなんですか?

小野:30名ほどのローカルライダーに、ボランティアで、各区間、イベント参加者と一緒に走ってもらいます。そして、景勝地の説明や、落車などアクシデントがあったときの本部への無線連絡、路面状況の説明や注意点の呼びかけなどをしてもらいます。参加者とローカルライダーとの交流になりますしね。さらに、安全管理のためにサポートカーを10台くらい用意して、コースを巡回する予定です。警備員も立たせます。

――サポートライダーは、募集するのですか?

小野:このイベントに賛同してくださる地元高知県のサイクルショップ4店に協力していただき、彼らのコミュニティーの中から適したライダーを紹介してもらうというかたちになります。

ローカルに出会える

――スーパーロングとロングコースには6カ所、ショートコースには4カ所のエイドステーションが配置されるんですね。これは単なる休憩所、といった感じでしょうか?

小野:食など、何か地元ならではのおもてなしが出来ればと考えています。このイベント用に『はりきった』ものではなく、その地域の日常で食べられている、例えばイタドリの料理とか。いの町のエイドステーションは『ふれあいの里柳野』なんですが、そこでは『そばがき』を用意すると言ってくれています。

――各地域の人や文化に触れられるんですね。それから、食といえば前夜祭も期待したいところです。

article_125_10.jpg高知名物カツオ、ぜひご賞味あれ!
article_125_11.jpg運が良ければ、手長エビの料理にも出会える!?

小野:『かんぽの宿伊野』で前夜祭をします。イベント参加者の宿泊についても協力していただいています。ここではやはり、皿鉢料理やカツオのタタキ、日本酒など高知県ならではのグルメをベースに、みなさんを楽しませたいところです。また前夜祭は、参加者やローカルライダーの交流の場にもなります。

――そうですね。たとえ一人で参加しても、前夜祭で知人が出来れば、翌日のサイクリングもより楽しめますね。

小野:そこがグレイトアースの良いところです! このイベントをきっかけに、互いに紹介し合える関係が築けたらいいなと思っています。スポーツサイクルを通じて人の行き来が生まれたらなあと。日本各地にサイクリングを楽しめる地域があるけれど、例えば四国の人が、「週末ちょっと信州に走りに行くか」とはなりにくかったりします。

――不案内な地域にわざわざ行って、本当に楽しめるのかという不安もあったりして。

小野:でもその地域に知り合いがいれば、行ってみようかとなる。友人がいる地域であれば心のハードルが少し下がりますよね。一緒に走ってくれる知人や友人がいれば。

――なるほど。仁淀川流域に、他所から自転車愛好家が来てもらうには、ローカルライダーなど地元の人々に出会い、知り合いになれる環境の整備も必要なんですね。

article125_12.jpg仁淀川に寄り添うような集落を、自転車は駆け抜けていく。

週末、仁淀川流域へ

小野:東京から高知まで飛行機で2時間ぐらい。実は仁淀川流域は、大都会東京の人にとって、週末に自転車を走らせるにはすごくいい場所なんです。思い立ったら、2時間+αで、信号がほとんどないとか、すごく透明な清流とか、のどかな田舎風景とか、都会とは全く違う環境のなかでサイクリングできる。

――交わす言葉もこじゃんと違いますもんね(笑)

小野:今回のイベントでは、すでに関東、関西方面からのエントリーも多いです。彼らはきっと、週末サイクリングのフィールドとしての仁淀川流域のすばらしさに気づくと思うんです。

――そして、週末に何度か通っているうちに、住んでみたいな、となったりして。

小野:なので、サイクリングのゴール地点では、移住関係の資料もお渡し出来たらなと思っています。これは、いの町の移住相談員からの提案です。サイクリングのいいところは、五感で地域を味わえること。自動車で巡るのとは全然違いますよね。このイベントで仁淀川流域を感じてもらい、さらに資料で詳しく知ってもらえたら、移住とは言わないまでも、交流人口は増えていくんじゃないでしょうか。

――ところで、6月2日に受付や前夜祭、3日にサイクリングイベントということは、遠くからの参加者はもう1泊するかもしれませんね。

小野:その宿のご紹介もできるよう、準備しています。地域色豊かな、昔ながらの旅館や民宿、移住者が始めた古民家の宿などに協力をお願いしているところです。自転車を屋内に置けるようにしてもらえませんか、とか。

――せっかく仁淀川流域まで来てくれたんですから、いろいろ楽しんでもらいたいですよね。

小野:3日目は、体の休息もかねて仁淀川流域の観光を。屋形船で川面の風を楽しんだり、酒蔵を見学したり、少しでも長く高知滞在を楽しんでもらいたいですね。

article125_13.jpgスーパーロングコースでは太平洋まで走っていきます(画像提供/小野義矩)。

自転車を通じて、地域と結びつく

――ところで、『第一回』と明記されているということは、今後も続けていきたいわけですよね。

小野:10年スパンで考えています。サイクリングがその地域の文化になって、サイクリングが地域に何かを残せるようになれば、と思っています。実は、グレイトアースでは『ONE FOR ONE / 1 KM for 1 YEN 』という新しいコンセプトを掲げました。サイクリングイベント参加者一人一人が走った距離×1円を、お預かりした参加費から地域の自然の保護などに役立てます。

――なぜそのようなことを?

小野:サイクリングして「素晴らしい! 」と感動できるのは、その地域の暮らしや文化、環境、景観などを守り、伝えていこうという人たちがあってこそ。グレイトアースというサイクリングイベントを毎年開催することで、地域の保全活動に少しでも貢献できるようになれたらと思っています。

article125_14.jpgサイクリストのみなさま、6月の仁淀川で待ってますよ! (画像提供/小野義矩。記事冒頭のメインカットも)

(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)
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