2017.12.29鳥の目になって、仁淀ブルーに出会う

鳥の目になって、仁淀ブルーに出会う

2018年、ドローン(小型無人飛行機)による仁淀川流域の撮影が始まります。自らドローンを操り、撮影し、取材し、構成・編集するのは、第一線で活躍してきた映像制作者。鳥の目線からの仁淀ブルー、はたしてどんな感動が待っているのでしょうか。

 テレビを見ていて「最近、空から見下ろす映像が多いなあ」と思いませんか?
 それは、ここ数年で「ドローン」と呼ばれる小型の無人飛行機が普及したから。操縦は難しくないし、価格も1万円以下から業務用でも100万円ぐらいなので、以前よりずっと簡単に「鳥の目線」を手に入れられる時代になりました。ちなみに聞きなれないその名の由来は「雄蜂(drone)」から。飛行するときのブーンというプロペラ音が、ハチの羽ばたきの音に似ているからだそうです。

article115_01.jpg飛行中のドローン。想像以上に空高く飛んでいく。

 このドローンを使い、仁淀川を空から旅する計画が進行中です。
 撮影するのは映像制作者の荒外史(あら そとふみ)さん。東京を拠点に、ながらくテレビ業界で仕事をしてきました。
「ドキュメンタリーや旅ものなど、いろんな番組の撮影をしてきました。BS-TBSの『湯の町放浪記(2018年2月4日に2時間特番あり)』では制作プロデューサもしています。」
 現在は会社に籍を置きながらフリーランサーとしても活躍。もともとネイチャー系の分野の撮影を得意としていて、「アラスカのユーコン川(全長約3000km!)の上流部をカヌーで下りながらテレビ番組の撮影をしたこともあります」。趣味も登山やシーカヤックということなので、仁淀川の自然との相性もばっちりのようです。

article115_02.jpg荒外史さんと撮影機材。

ドローンを駆使して、仁淀川の魅力を伝える

「友人を通じて仁淀川と縁ができまして、昨年の越知町のキャンプイベント(2016年の『越知おいしいキャンプ・ウィーク』)に呼んでいただきました。それがこの地域でのドローン撮影の最初でした。」
 そして、そのキャンプイベントの運営者の尽力もあって、2018年から、仁淀ブルー観光協議会からのオーダーで仁淀川流域をドローンで撮影することに。
「テレビ番組を見ていると気づくかもしれませんが、ドローンでの空撮シーンって、ちょこっ、ちょこっと、一部で使われる場合がほとんどなんですね。それを仁淀川で、ドローンでの映像を存分に活用してということなので、やった! ですよね。そして高知の自然が素敵じゃないですか。チャレンジする機会を与えてもらい、僕としてはかなりモチベーションが上がっています。」

article_115_03.jpg動画用カメラ付きのドローン(手前)と操縦装置(奥)。
article_115_04.jpgドローンと操縦装置はコンパクトに収納できる。

求む、仁淀川の絶景情報

 さて、荒さんは仁淀川で、どんな撮影をしていくのでしょうか。
「ドローンってすごく素敵な撮影道具なんですけど、地上で手に持って撮影するカメラと違って、取り回しの難しいところがある。なかなかきれいな映像が撮れないんですよ。昨年、越知町のキャンプイベントで来たときに、『安居(やすい)渓谷』と『にこ渕(ぶち)』をドローンで撮影してみました。どちらも美しい川で、とくに、にこ渕は素晴らしかった。でも、満足いく映像は撮れませんでした。」
 しかし、いけそうだぞという実感は得たといいます。
「自然を撮るにはとにかく時間が必要です。1日に数十分の、素晴らしい光のときを狙って撮っていきます。ベストな瞬間を逃さないように、現場近くでキャンプしながらの撮影になるでしょう。季節ごとにメインとなるシーンをドローンで撮影していきますが、祭や紙すき、酒造りなど、地上のカメラで取材した流域の伝統文化や産業なども織り込みながら、一つの作品にしていきたいですね。」

article115_05.jpg今年11月の「越知おいしいデイ・キャンプ」で、越知町の小田町長を取材中の荒さん。

 一つの季節につき1週間は撮影することになるだろうと荒さん。ポイントごとに見極め、何をどう撮るか取捨選択していっても、少なくともそれだけの期間が必要。
「しかし、季節の移ろいで風景がどう変わり、どんなものが撮れるのかをまだイメージできてないんです。静止画であれば、仁淀川のいろんな画像をインターネットなどで閲覧できます。つまり、いつどこに行き、どう撮ればいいかの情報はたくさんある。でも動画についてはそれがとても少ないんです。」
 どうやら仁淀川流域の人々は、わが清流の情報を伝えることで、荒さんの映像制作に関われそうですね。

article115_06.jpg宮の前公園(越知町)のコスモス畑を撮影中のドローン。

仁淀川をもっと多くの人に知ってもらうために

「同じ高知県には四万十川がありますが、そちらのほうはごく一般の、普通の人が観光で『四万十川にいこうかな』という状況になっていますよね。」
 一方、仁淀川のほうは、まだそこまでにはなっていないのではと、荒さんはいいます。
「でも、仁淀川のほうだって風景は素敵だし、『仁淀ブルー』というのは言葉としてすごくキャッチーです。旅行先としての仁淀川のポテンシャルは高いけど、それをまだ活かしきれていないのではと思うんです。」
 そこに、荒さんの映像作品が果たす使命がある、ということでしょうか。
「どうしたら、たとえば東京の人がわざわざ仁淀川にまで来るようになるのか、というのを僕は考えています。動画には説得力がある。テキストだと読んでもらわなければいけないけど、動画であればちょっとでも見てもらえれば、注目される力がある。興味を持って見ていただくためにも、様々な撮影の工夫が必要だと思っております。『ここ、すごくきれいなところだ!』と感じてもらえる作品を僕が撮れたら、仁淀川を訪ねる人がもっと増えるんじゃないか。そんなことを思い描きながら、撮影していきます。」

(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)
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