2017.10.13川遊びの達人が、今年もやってきた!
アウトドア月刊誌「BE-PAL」の連載でも知られる「雑魚党」のメンバーが、昨年に引き続き仁淀川に参上! 待ちかまえるは、地元越知町の元気な子供たちです。台風の影響で濁り気味の川面でしたが、大いに楽しんだ2日間の模様をお届けします。
子供を対象にしたビジネスの関係者がこの光景を見たら、困惑するに違いありません。この日、子供たちが熱中していたのは、小さな液晶画面に出現するモンスターではなく、世界一有名なネズミと仲間たちのパレードでも、集団で踊るきれいな女子でもなく――つまりは、「大人のお金儲けのにおい」をまったく感じないことだったのですから。
場所は越知町の仁淀川。子供たちが手にしているのは、竹藪から頂戴した細く長い青竹。その端に、釣り糸とウキ、小さなおもり、釣り針という仕掛け(総額100円ぐらいかな?)を結び、餌はミミズであります。そして、「学校の授業でもこうだったらな~」と親を嘆かせそうな集中力で狙っているのは、ドンコやハヤなど、あまり食用にされない、家に持ち帰っても大人はあまり喜んでくれない、いわゆる雑魚であります。
また、釣り竿をかまえていないときは、釣り上げた魚をさばいて内臓を取り出してキャーキャー言ったり、から揚げにしてもらったその魚を嬉しそうに食べたり、河童のように川を流れながらはしゃいでいました。
「そんな、原始時代からやってるような遊びをしてもね」という御仁は少なからずいると思います。子供のころから、〈社会で成功するためのスキル〉に結びつくことをしなくちゃ、と。そんなことをして何になるのだ、と。
「いや、何かになる」と信じているのが今回の講師陣、小学館のアウトドア月刊誌「BE-PAL」でも活躍中の川遊び集団「雑魚党」の面々であります。
9月の23・24日、この3人をむかえて、越知町の子供たちに向けてのイベントが開催されました。
こんな大人に出会いたい
雑魚党の方針は、「準備や段取りはしてあげるけど、そのあとはなるべく子供たちにまかせる」というもの。経験していくことで、子供たちは自力でやっていくようになると、夏丸さんは言います。つまり、彼らは講師というより、川遊びの先輩、頼りになる近所のおじさんといったところでしょうか。
「僕らは、先生が言えないことを担当しているよね」と夏丸さん。「魚のいのちより、お前が喜んでいることのほうが嬉しい、とかさ。」
川遊びで育まれること
このイベントでは、夏丸さんがこれまでに経験した川でのエピソードも披露。子供たちは目をキラキラさせて聞いていました。すべてを紹介したいところですが、その内容を少しだけ。
「近所の子に誘われて冬の川に魚獲りに行った。獲れたのがウシガエル。冬眠しているからじっと動かないんだな。その子は『夏丸さん、これ死んでるの?』っていうから、春に暖かくなったら動き出すよ、って答えた。彼はそのカエルをじーっと見て言った。『温めたら動く?』。くやしかったね。オレ、冬眠中のカエルを温めようなんて思ったことなかったから。そして彼はじーっと考えて、『風呂入れてみようかな』だって。で、カエルを持ち帰って本当に風呂に入れたら、動いたんだって。」
「流しそうめんならぬ、〈流しドジョウ〉〈流しメダカ〉をしている子がいたんだ。まいっちゃったよ、オレ、50年間川で遊んできたけど、そんなのやったことがなかった。こういう遊びには発見がある。その子は驚いているんだ。『ドジョウもメダカも、流されて落ちちゃうのに、流れに逆らいながら泳いでる!』。この子は理科の目玉を持った子だなあと思いました。」
そういえばこのイベント中、釣った魚をさばいていた女の子が、魚の内臓から浮袋を見つけて、「これなに?」と私に質問してきました。「それは浮袋でさ、それがあるから魚は川の底へ沈んでいかないんだ」と説明したのですが、そのあとの彼女の言葉に私はどきりとしました。
「じゃあ、この浮袋の空気はどこからはいってきたの?」
夏丸さんの話を聞きながら、川での遊びには、普通の学校教育では得にくい体験があり、心の成長があるのだなあと思いました。
「今日は、捕まえた生き物を全部食べちゃおう」と、夏丸さんは子供たちに宣言しました。「だから捕まえたら一匹も逃がすな(笑)。これ、僕のイベントではいつもやってます。魚を捕まえた瞬間、子供たちは「やったー!」と喜び、いい顔になる。そのあと、それを串に刺すと、かわいそうと思う子もいるし、何か嬉しい気持ちもあったりする。それを火にかざして焼くと赤く色を変える。その光景がきれいだなという気持ちにもなったりする。そして、最後に口に入れると、美味しいなあという気持ちになる。気持ちがどんどん変わっていく。生き物をいただくということが、実感としてわかってくる。」
思いっきり遊べば、故郷になる
来年の春、越知町では、仁淀川を見渡す川辺に新たなキャンプ場が誕生します。
「キャンプ場って、観光客を呼び込むためのツールに見えますよね。でも僕は、地元の人たちもそのキャンプ場を利用して、もっと仁淀川で遊んでもらいたい。そして人生を豊かにしてほしい」と言うのは、我が仁淀ブルー通信の編集長・黒笹であります。実は今回のイベントの仕掛け人。
「ではどんなふうに利用し、遊べばいいのか。その練習みたいなものとして、今回は地元の子供限定の川遊びイベントにしてみました。」
子供たちを地元の川で遊ばせていると、どうなるのか。夏丸さんはこんなエピソードを語ってくれました。
「昔一緒に川遊びした子と、再会したんですね。大学生ぐらいになっていたんですけど、彼が『夏丸さん、あのとき獲ったウナギは大きかったね、初めてだったけど僕はそれを自分でさばいたよね』と両腕を広げるんだ。でもオレは覚えていたんだ。そのウナギは30センチぐらいで細かった(笑)。」
子供の頃に川で遊んだ記憶は薄れない。そして、その思い出は成長していくのです。
子供たちへの話の結びに、夏丸さんはこんなことを言いました。
「いっぱい遊んだことが思い出になる。そうすると、遊んだところが故郷になります。だから、いっぱい遊んでおかないとね。」
(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)
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