2017.09.29<川遊び人の独り言>3 利き鮎会~仁淀川を含む全国58河川の天然アユ3000尾を食べくらべ~

<川遊び人の独り言>3 利き鮎会~仁淀川を含む全国58河川の天然アユ3000尾を食べくらべ~

何やら真剣な表情で、もくもくとお箸を動かしながら、アユの塩焼きを食べている参加者。これは、高知の老舗旅館「城西館」で毎年開催されている「利き鮎会」の一次審査の光景です。

 そもそも利き鮎という発想は、いうまでもなく広く行われている利き酒から得たものです。お酒もアユもともにいい水が育んでくれ、そのいい水を育む山から川、さらには海へとつながる健全な自然の循環がなければ生まれません。
 そして、もちろん自然のつながりだけでなく、その自然の恵みを形にして提供する人々のつらなり(ネットワーク)がなければ、生まれません。

 アユ釣りを通して、年々変わりゆく土佐の川やアユの現状を一番よくわかっている釣り人が、そのことを世間の人たちに知ってもらうには、どうしたらいいか? そこで思いついたのが、万人に共通する旨いものを食べ比べたいという利き鮎だったのです。

 こうして、土佐の”アユキチ”たちが「おらんくの川やアユをなんとかしたい」という熱い思いからスタートしたこの会も今年で20回を迎えました。

article102_01.jpg釣り人のネットワークだけで、全国58河川から、3000尾の天然アユを無償提供してもらって、この会は成り立っています。

  利き鮎会を主催しているのは、県内のアユ友釣り愛好家のグループが集まってできた高知県友釣連盟です。20年ほど前に結成され、現在13グループ、160名が会員となっています。
 シーズン中に何度か友釣り大会を開き、会員の釣技向上や親睦を深めるだけでなく、大切な河川環境やアユ資源を守る取り組みも積極的にやっていこうということで、この利き鮎会も連盟の設立当初から始めました。
 利き鮎会もはじめは、県内河川だけでしたが、いつの間にか会員のネットワークを通じて、全国からアユが集まってくるようになりました。

article102_02.jpg大皿に河川ごとに30尾ずつ焼かれたアユがテーブルに運ばれて行きます。千尾単位のアユをきれいに焼いて、しかも温かい状態で提供するには、高度な匠の技が必要です。

 会場にお目当ての天然アユの塩焼きが運ばれてくると、参加者のみなさんも一気に盛り上がってきます。今では当たり前のようにやっているこの利き鮎会も、千尾単位の焼き立てのアユを用意するという「城西館」さんの匠の技がないと成り立ちません。県内はもちろん全国でもこんなことができるお店をほかに知りません。

article102_03.jpg開会のあいさつをする高知県友釣連盟の内山顕一理事長。群れるのが嫌いで、気難しく、そのくせプライドだけは高い土佐のアユキチたちをうまくリードし、家族ぐるみで利き鮎会をサポートしてくれています。

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利き鮎会恒例のミニ講演会は、今年は昨年グランプリを受賞した北海道朱太川が流れる黒松内町から佐藤副町長がおいでになり、同町の生物多様性地域戦略についてお話しいただきました。

 友釣連盟の内山理事長、続いて来賓のあいさつの後、恒例のミニ講演会もあります。これは、参加者に単に天然アユを食べ比べてもらうだけでなく、天然アユを育む河川環境やアユを取り巻く状況を知ってもらおうとの主旨で、第1回目から毎回様々な分野の講師に来ていただいてお話をしてもらっているものです。

 私も連盟の顧問ということで、過去に2回ほどミニ講演を行いましたが、おいしそうなアユの塩焼きを目の前にして、聞きたくもない(?)話を聞かされる参加者も大変でしょうが、早くアユを食わせろという参加者の思いを痛いほど感じながら、しゃべる方も大変です(笑)。
 でも、この会では単に参加者にアユを食べ比べてもらうだけでなく、その味の違いを通して、アユを育む河川環境などを釣り人と一緒に考えて欲しいので、このミニ講演も外すわけにはいかないのです。

article102_06.jpg城西館の大広間に9テーブルが並べられ、300人の参加者が「利き鮎」の真っ最中。

 乾杯の後、いよいよみなさんお待ちかねの参加者全員による利き鮎会一次審査がスタートです。
 各テーブルに6~7河川のアユの塩焼きが並べられ、参加者は川ごとに各皿に並べられたアユを1尾づつその姿や香り、はらわたや身の味わいをもとに審査していきます。そして各テーブルごとに1位の河川のアユが選ばれ、審査員による2次審査にエントリーされます。

 男性7千円、女性5千円のわかりやすい(?)料金設定のチケットは特に宣伝もしていませんが、参加受付初日にソールドアウト。参加者も多くがリピーターで、今やプレミアチケットになっているようです。

article_102_07.jpg過去3回グランプリを受賞した岐阜県木曽川水系の和良川は、ブランド化した和良鮎を特別コーナーを設けて、参加者にふるまってくれました。
article_102_08.jpg利き鮎会のもう一つの楽しみは、県内はもとより県外の地酒も味わえることです。

article_102_09.jpg昨年から参加していただいているシンガーソングライターの嘉門達夫さんのミニライブもあり、最新の時事ネタ満載の嘉門節に会場も大いに盛り上がりました。
article_102_10.jpgこれも恒例となったじゃんけん大会。勝ち残った方々には、天然アユのプレゼントがあります。

article_102_11.jpg今年のグランプリを選ぶ2次審査。5人の審査員が各テーブルから選ばれた9河川のアユを慎重に食べ比べています。嘉門さん(一番手前)もガブリ。
article_102_12.jpgいよいよ今年のグランプリ河川の発表。後ろに勢ぞろいした友釣連盟のメンバーたちの熱い思いとネットワークによりこの会も成り立っています。

 利き鮎会も佳境に入り、いよいよ参加58河川の頂点に立つグランプリの発表です。会場のスクリーンには、各テーブルに並べられたアユの河川名が、ここではじめて写し出され、参加者も自分たちが味わったアユがどの川だったか知ります。

 本年度のグランプリ受賞河川は、愛知県の天竜川水系の振草川でした。おめでとうございます。
 準グランプリは、県内の伊尾木川ほか7河川が受賞しました。
 残念ながら仁淀川の鮎は今年は選外に漏れましたが、来年こそは捲土重来を期し、リベンジを期待したいものですね。

 この利き鮎会も今年で20回を迎えましたが、この間何度か、全国的な異常気象やアユの不漁により、アユが集まりにくかったりして、存続の危機を迎えたことがありました。でもそのたびに連盟会員の熱意とネットワークで何とか開催にこぎつけてきました。
 今後も全国の川が元気で、アユが元気で、そして釣り人が元気なうちは、この会を続けていきたいと思いますので、是非皆さんも応援してください。

(仁淀ブルー通信編集部員 松浦秀俊)
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