2017.02.24博士が愛した「林床の妖精」に会いにいく

博士が愛した「林床の妖精」に会いにいく

佐川町の牧野公園では、いま、シコクバイカオウレンが見頃です。ここ数年で人気上昇中のこの白い花、その魅力をお伝えします。

「シコク」とあることからも想像できるように、シコクバイカオウレンはバイカオウレンの変種。そのバイカオウレンは日本固有の多年草で、本州の福島県以南と四国に分布しています。針葉樹林などの足もと(林床)を生息地にしていて、上向きに伸びる高さ4~15cmの花茎の先に1~1.5cm径の白い花を咲かせます。この花の形が梅に似ていることからバイカ、つまり梅花という名がつきました。シコクバイカオウレンはバイカオウレンとほとんど変わらない姿ですが、花弁(黄色いコップ状)や花柱などに微妙な形の違いがあります。四国の固有種であり、佐川町の生息地のような人里の近くから、標高1800mの高地までと、分布域の環境に幅がある山野草です。

article_071_02.jpg花弁にみえる白い部分は実は萼片(ガクヘン)。黄色のコップ状のものが花弁。

佐川町にはその群生地が2か所あり、そのうちの一つが牧野公園。ちなみにもう一つは加茂地区にあり、そちらのほうは来年(2018年)のシコクバイカオウレン開花時期から、土佐加茂駅前に開設の集落活動センターが拠点となって、群生地案内をする予定です。


私が牧野公園を取材した2月17日は、城西館発の高知県体験型観光ツアー『とさ恋ツアー』の御一行がこの花の群落を見学していました。そこには、仁淀ブルー通信に2度登場してもらった城西館コンシェルジュ・近澤真弓さんの姿も。
少し話を伺うと、「20名の定員を予定していたところ、その倍近い申し込みがあったので、バスを大型に」と、嬉しい悲鳴だったようです。シコクバイカオウレン、かなりの人気です。

article_071_03.jpg牧野公園のシコクバイカオウレン群生地。3月上旬までが見ごろ。

とさ恋ツアー御一行は、「林床の妖精」とも言われるこの花の姿に胸がキュンキュンしているようでした。
「白くて、苔の庭にハラハラと雪が落ちているみたいで、ステキね~」
「見落としそうになるくらい可憐ね、よく見ればかわいいわね~」
「こうやって案内されないと、この美しさに気づかないかも」

article_071_04.jpgシコクバイカオウレンはとても小さな花。

小さくて、気づかれにくそうな花が、なぜ佐川町の名物に? それは、この花と、この町が生んだ高名な植物学者・牧野富太郎博士との出会いがあったからなのです。

牧野博士ゆかりの植物に出会える牧野公園

牧野富太郎博士は「日本の植物学の父」と呼ばれています。日本の植物があまり解明されていない明治・大正時代に日本各地の山野に入り、標本採取や精密な植物図を描くなどをしてその特徴を学術的に記録、未知の植物に学名をつけました。94年の生涯で収集した標本は約40万枚、命名した新種や新品種の植物は約1,500種以上といわれています。彼の研究の集大成である牧野日本植物図鑑(1940年刊行)は、現代でも植物研究者や愛好家必携の書となっています。


彼が植物への興味を抱くきっかけとなったのが、シコクバイカオウレンだったそうです。この小さな花の美しさに気づき、観察したことで、少年・牧野富太郎のなかで何かが芽生えたのでしょう。

article_071_05.jpg夕日の色をうつす小さな白い花。

そんなシコクバイカオウレンを含め、牧野富太郎博士が関わった植物のことをもっと知ってもらおうと、牧野公園では牧野博士ゆかりの植物300種を植栽、育成しています。そしてそれには、地域の人たちがおおいに関わっているようです。いわば「みんなで作る牧野公園」。その参加者の一人、佐川町民の田村勇勝さんに話を伺いました。

article_071_06.jpg田村勇勝さん(左)と、牧野公園リニューアル事業に関わった高知県立牧野植物園の稲垣典年さん(右)。

― 牧野公園のシコクバイカオウレンは見事な群落ですが、
  これはいつから見られるようになったのですか?

平成26年から10か年計画で牧野公園リニューアル事業というのが進んでいます。これは牧野博士にちなんだ山野草を四季折々楽しめる公園にしていこうというもので、シコクバイカオウレンの群落もその一環です。

article_071_07.jpg2月17日の取材では、フクジュソウも見頃でした。

― 群落をつくるにあたって、どんな作業をしましたか?

シコクバイカオウレンは、日当たりが良すぎず、ちょっと日陰で、湿っぽいところを好むようです。それに適した檜林が公園内にあったのですが、放置状態だったし下草が伸び放題だった。それを刈って、シコクバイカオウレンがよく育つ林床をつくり、植栽しました。

article_071_08.jpgこのような林の足もと(林床)に生えることから、林床の妖精と呼ばれるシコクバイカオウレン。

― 地域の人たちはどんなふうに牧野公園リニューアル事業に関わっていますか?

ボランティアの人たちが、毎週水曜日の午前中にワイワイと楽しく整備作業をしています。佐川町民に限らず、高知市内からの参加者もいて、今では170人ぐらいが携わっているのでは。それから、シコクバイカオウレンもですが、植栽されている植物は佐川町民が育てた苗なんですよ。私はシルバー人材センターの5名からなる「チーム田村」の一員として、月・水曜日に牧野公園で植栽などの作業をしています。声をかけてくれれば、牧野公園の植物についてお話をしますので、見かけたらお気軽にどうぞ(笑)。



花と歴史的町並みとグルメが待っている佐川町

ところで、牧野公園で花を楽しんだら、次は旅行者の目線になって旅のプランを作り上げる人。といえばもちろん、城西館コンシェルジュの近澤真弓さんであります。
というわけで、彼女が今回プランニングした『梅花黄蓮見学ツアー』のスケジュールの一部をここで紹介しておきましょう。

●シコクバイカオウレンを見学後、旧浜口家住宅(さかわ観光協会)で小休憩旧浜口家住宅は江戸時代には酒造業を営んでいた豪邸で、一見の価値ありの古民家です。この2月25日~3月6日までは、旧浜口家を含め、上町酒蔵の道沿いの民家や歴史的建築物では、大小さまざまなひな飾りを展示しています。また、江戸時代の旧家の格子に飾られる「格子雛」は佐川ならではの風景で見逃せません。


●昼食は、高知県有数のうなぎの銘店「大正軒」で。

●その後、司牡丹酒造の酒蔵を見学し、白壁の町並みを散策、ギャラリーほていで日本酒の試飲を楽しむ。

花に誘われ、銘酒に出会う。なんだか素晴らしい組み合わせだなあ。

article_071_09.jpg旧浜口家住宅は休憩スポットとして最適。
article_071_10.jpg佐川町の酒蔵の道(上町周辺)では、2月25日~3月6日までひな飾りを展示。
article_071_11.jpg司牡丹酒造の杉玉。新酒ができたことを知らせる。
article_071_12.jpg白壁の家並が美しい酒蔵の道。

●牧野公園へのアクセス
・車の場合/佐川町役場または地場産センターに駐車。佐川町役場から牧野公園へは徒歩約10分、地場産センターからは徒歩約3分。
・JR利用の場合/JR佐川駅から徒歩約6分。

さかわ観光協会……牧野公園など佐川町の観光情報全般はこちらへ。
◆城西館 http://www.jyoseikan.co.jp/
◆とさ恋ツアー http://tosakoi.jp/

◆近澤真弓さんについては、2015.12.022017.01.06配信の記事もご覧ください。
◆司牡丹酒造 http://www.tsukasabotan.co.jp/

(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)
●今回の編集後記はこちら