2017.02.03仁淀川で湯めぐり旅3・吾北むささび温泉

仁淀川で湯めぐり旅3・吾北むささび温泉

温泉好きは、ときに「湯の力」などという言葉を用いたりします。それは「湯冷めしにくい」とか「体の芯まで染み入る熱さ」など、感覚的なものだったりするのですが、目に見える「湯の力」もあります。それが、ミネラルや鉱物による湯のにごり。仁淀川水系一のにごり湯を訪ねました。

トレッキングや渓流釣りの帰りに、ぜひ立ち寄りたい

仁淀川の支流、驚くべき透明度の上八川川。アマゴ冬季釣り場としても有名なこの川を見おろしているのが吾北むささび温泉です。この温泉がある集落には、かつて森林鉄道(木材を搬出する鉄道)の始発駅があり、その路線は山並みの向こう、仁淀川とは別の水系である吉野川源流の森まで続いていました。

article_06802.jpg上八川川の水面下を覗いてみました。

2016年4月15日配信の記事では、その森林鉄道の軌道跡を巡るトレッキングツアーの模様を紹介したのですが、今回紹介する吾北むささび温泉は、そんな山歩きで疲れた足を癒すのに最適です。もちろん、上八川川での釣りで冷えた身体を温めるのにもお勧めです。

article_06803.jpg伐採した木材を、小さな機関車で運んでいた。
article_06804.jpgこのような、崖をくり抜いたような場所も森林鉄道が走っていた。

この温泉、なかなか個性的な施設であります。役場みたいな雰囲気の建物に入っていくと、受付カウンター越しの奥に見えるのは、エアロバイクやラットプルダウンなど、こんな田舎に似合わぬ(失礼しました!)トレーニング機器の数々。また、館内配置図をよく見ると、歩行浴用のプールまであります。鄙びた山あいの温泉を予想していた私は少々ビックリ。

article_06805.jpg吾北むささび温泉のトレーニングルーム。
article_06806.jpg歩行浴用プールは大人300円(子ども150円)で水着着用。歩行浴+入浴だと大人800円(子ども400円)。

こんな、ある意味都会的な施設の湯はいかに、と男湯の暖簾をくぐり、浴場へ。滑りにくいタイル貼りの床、ピカピカの蛇口やシャワー……大きなホテル並みの浴場だなあと思いながら湯船に近づくと、突如として秘湯探訪の気分になりました。見事なにごり具合、錆び色の湯であります。四国でこの色のにごり湯はあまりお目にかからないなあ。

article_06807.jpg隣にある上八川川の透明さと対照的なにごり湯。

では湯と対話を……なるほど、かすかな鉄分の香り。いろんな成分が溶け込んでいそうなにごりで、見た目だけでも身体に効きそうな感じです。「はあ~」と入浴すれば、湯のぬくもりが波状的に身体に浸みてくるような感覚。若干、湯にとろみがあるのかな? 湯が持つ熱の力の圧というか、厚みのようなものがしっかりしています。


湯船のふちは、湯と同じく錆び色……とよく見れば、ところどころに、ツルツルとした灰色の御影石の肌が。どうやら湯からの析出物(せきしゅつぶつ)の濃度が高くて、どんどん湯船をコーティングしているようです。湯船を見守る薬師様も、分厚い錆び色の衣を身にまといつつあります。

article_06808.jpg湯船を見守る薬師様。

「なかなかの成分でしょう」と、吾北むささび温泉の主任・藤田孝昭さんはいいます。「きちんと掃除しているのですが、湯に含まれる鉱物で湯船がどんどん覆われていくのです」
いやいや、それがいいのですよ。まさに湯の力を感じさせてくれます。
「そういってくださるお客様も多くて、あえて除去しないようにしています」
湯船はともかく、析出物は配管にも沈着して、湯の通り道をじわじわと細くしていくのだと藤田さん。苦労が絶えないようですが、ぜひこれからもこの温泉を守ってください!

article_06809.jpg上八川川に面した吾北むささび温泉。

◆吾北むささび温泉
泉質:含鉄ナトリウム塩化物泉
入浴料:大人600円、小人300円
営業時間:10時~22時
休み:木曜日

(仁淀ブルー通信編集部員 大村嘉正)
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