2016.08.05仁淀川は「石」もおもしろい!

仁淀川は「石」もおもしろい!

リオデジャネイロオリンピックが開幕!  世界中から集まったアスリート達の熱き戦いを見ていたら、運動音痴で運動不足な私もエキサイトしてきます。「私も世界一になりたいなぁ」・・・そんなことを考えている時、ふと一枚のポスターが目に留まりました。

【仁淀川 国際水切り大会】———水切りとは、石を投げて川の水面を跳ねさせるアノ遊び。それなら私も遊んだことがある! 国際大会ということは、一位になれば世界一ってこと? これはもう、やるしかないでしょう!

article_04202.jpg8月21日開催となる仁淀川 国際水切り大会。詳しくは公式サイト→http://niyodoriver.com
article_04203.jpg美しさと距離と跳ねた回数で競われるそうです。

とはいっても、水切りが得意とはいえない私。ここは取材にかこつけて達人の技をモノにしたいと思います!  お会いしたのは、「仁淀川 国際水切り大会実行委員」のなかでも特に水切りが上手いという岡林立哉さんです。

article_04204.jpgこちらが岡林立哉さん。普段は馬頭琴とホーミーの奏者として活躍されています。
article_04205.jpg河原へ下りるなり、いきなり水切り用の石を探し始める岡林さん。

仁淀ブルー通信編集部:かなり真剣に石選びをされてますね。てっきり近くにある石を適当に拾えばいいかと思ってました。

岡林立哉さん:石はかなり重要です。大会当日も、会場の河原ではみんな下を向いて石を探してますし、優勝を目指している人は前日までにベストな石を探して持ってきますよ。

どんな石が水切りに適しているんですか?

円形で、表面がなめらかな石が良いです。また、持った時に石の重心を感じるんですが、なるべく中央にあったり、極端でないものが良いですね。あと、石の大きさや重さなど手に持った感じも大切。人によって適した石があるんです。とにかく実際に投げてみて自分に合った石の特徴をつかむしかないですね。

article_04206.jpg岡林さんチョイスの石。ちなみに大会では決勝までに約20枚。
article_04207.jpg大きすぎず小さすぎず。指に引っかかりがある石が回転がつくそうです。

投げる時のコツはありますか?

石と水面が平行になるように、なるべく低い位置で投げることですかね。それと石が少し上向くようなイメージで、回転をつけて投げるとより勢いにのって跳ねていくと思います。

article_04208.jpg水面と平行を意識することが大事!

では、岡林さんの水切りを見せていただいてよろしいでしょうか?

article_04209.jpg1.大きく振りかぶって
article_04210.jpg2.バランスをとりながら

article_04211.jpg3.姿勢を低くかまえて
article_04212.jpg4.肩を使って腕の勢いをつけ

article_04213.jpg5.最後は手首のスナップをきかせる!
article_04214.jpg6.写真では分かりにくいですが、何回も跳ねながらめちゃくちゃ遠くに飛んで行きました。すごすぎる…!

えっ! 10メートル以上は飛んでますよね?あんな遠くに飛んでいくんですか!?

優勝に絡んでくる選手の方は、だいたいこれぐらいのレベルですよ。投げ方は人それぞれ、色んなフォームがありますが、やはりみんな低い位置を狙いますね。

article_04215.jpgヒザを着いた姿勢で低い位置を狙う選手もいるそうです。

想像を超えたレベルなんですが…一応、私もチャレンジしてみます!

article_04216.jpg1.岡林さんのアドバイスのもと選んだ石。レディなので少し軽めで小さめです。
article_04217.jpg2.低い位置を意識しながら

article_04218.jpg3.勢いをつけますが、手首のスナップがきかない・・・
article_04219.jpg4.予想していたのとは違う方向へ、すぐに落水しました。

岡林さん!!! 全然ダメなんですけどー(涙)

上手だと思いますよ(優しい!) 私も最初は上手な人の技や動きを見て真似して、何度もやって今ぐらい飛ばせるようになったので、高橋さんも練習すれば上達すると思います。それに、大会ではその時の川や風のコンディションによっても記録が大きく変動するんです。「これは絶対に飛ばせるぞ」という石が見つかっても変に力んでしまって全然飛ばせなかったり、逆に「これは飛ばないだろう」という石がよく飛んだりすることもあります。

石、技、運、気持ち・・・水切りって深いんですね。全然飛びませんでしたが、改めて真剣にやってみると楽しかったです!

大会自体も子どもからお年寄りまで誰でも参加でき、川遊び感覚で楽しんでいますからぜひ気軽に来てください。水切り大会以外にも、ハート型の石を探してエントリーする「ハート石コンテスト」なんかもありますよ。

ハート石? 女子っぽくってステキですね! 水切りももうちょっと練習して、せめて思った方向に飛ばせるようにしときます(笑)。岡林さん、今日はありがとうございました!

article_04220.jpg仁淀川国際水切り大会と同時開催されるハート石コンテスト。

「ハート」という言葉にときめいた私は、さっそくハート石探しを開始! かわいくてきれいなハート形を見つけるべく、河原の石を見つめます。しかし、仁淀川の石って本当カラフルですよね〜。どうしてこんないろいろなタイプの石が集まっているんでしょうか。

article_04221.jpgいろいろな色と模様の石が集まっている仁淀川。どうして?

「気になるよね〜」ということで、その理由を知るべくやってきたのは【佐川町立 佐川地質館】。全国の地質好きが集まる同館に聞けば、仁淀川の石の秘密も分かるはず。佐川地質館の溝渕富弘さんに教えていただきました。

article_04222.jpg佐川町立 佐川地質館/高岡郡佐川町甲360/9時〜17時開館/月曜休(祝日の場合は開館、翌火曜休み)/入館料 一般300円、小中高生100円。
article_04223.jpgこちらが溝渕富弘さん。地層と化石について語り出すと止まりません。

溝渕さん、仁淀川にある石がカラフルなのはなぜなんでしょうか?

溝渕富弘さん:それは仁淀川流域に分布する地層が大きく関係しているんですね。仁淀川の河原には三波川帯の結晶片岩、秩父帯のチャートや珪質岩に起源を持つ石が転がっています。その中で、特にカラフルな石は「チャート」と呼ばれる、深海のプランクトンの死骸が堆積してできた岩石です。チャートは、酸素が少ないところでは黒っぽい色になりますが、酸素の多いところでは赤くなる。また、鉱物の入り方次第で、緑色や青色にもなったりするんです。その岩石が削られて仁淀川の河原をカラフルにしているんです。ちなみに、仁淀川を流れた石は最終的に桂浜へ流れ着きます。桂浜を「五色の浜」と表現しますが、それも元は仁淀川流域に分布する石の種類が豊富だからなんですね。

article_04224.jpgこちらが仁淀川流域の地層図。たくさんの地層が重なっています。
article_04225.jpg館内には仁淀川の石の元となるチャートも展示されています。

地層によって、河原の石は変化していくんですね。

ここでは高知県内を流れる仁淀川、吉野川、四万十川の河原の石を比較展示しています。この三つの川はそれぞれ異なる場所(三波川帯・秩父帯・四万十帯)を流れており、それによって河原の石ころも違っていますよね。

地層って難しいイメージでしたが、ここで勉強してみると身近な存在なんだなと、興味が湧いてきました。ありがとうございました!

article_04226.jpg左上が吉野川、左下が仁淀川、右が四万十川の石です。
article_04227.jpg高知県の地層だけでなく、化石や地球の成り立ち、地震のメカニズムなども分かります。夏休みの研究にもぴったり!

再び仁淀川の河原に戻った私。改めて石を見ていると、「これはかつて深海を漂っていたプランクトンなんだな〜。一体どれほどの時間をかけて、今私の目の前にあるんだろう」と、壮大な地球のロマンを感じ、一人で激しく感動してしまいました! 水切り大会に燃え、地層に燃える夏・・・仁淀川はリオデジャネイロよりも熱い場所かもしれません!

article_04228.jpg感じるよぉ! 地球のロマンを感じるよぉ!!

(仁淀ブルー編集部 高橋さよ)
●今回の編集後記はこちら 

【仁淀川の石をもっと楽しもう!】
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夏休みの自由研究が終わっていないキッズとその保護者のみなさんにもおすすめです。
詳しくはこちら(仁淀川の話 「仁淀川の石はどこから来たのか」)をチェック!