2016.07.08仁淀川は海と出会い、「波の楽園」をつくった

仁淀川は海と出会い、「波の楽園」をつくった

仁淀川は、124㎞の旅路をへて太平洋へと消えゆく瞬間でさえ、たくさんの人を魅了します。その河口は波の楽園、日本有数のサーフィンスポットなのです。

「仁淀川によって運ばれてきた砂が海岸部の海底に溜まり、遠浅になります。太平洋のうねりがその遠浅にぶつかると、いい波が立ち上がってくる」というのが溝渕茂高さん。25年以上波乗りをしてきた高知のローカルサーファーで、仁淀川河口の土佐市新居で「B&M」というカフェ&サーフィンショップを経営しています。仁淀川河口の波に惚れ、「サーフィンして、海から上がって、すぐに仕事できるから」とこの地で暮らすように。
「潮の満ち引きや風、仁淀川の水量などの条件次第で、ここでは高知県有数のきれいな波が割れるんですよ」

article_03802.jpg溝渕茂高さん。シェイパー(サーフボードを作る職人)でもある。
article_03803.jpgカフェではカレーや、パティシエ(溝渕さんの奥さん)が作るパンケーキ、オーガニックのプレスコーヒーが人気。

 しかし、仁淀川河口でのサーフィンは難易度が高いことでも有名です。
「生き物なんですよ。仁淀川が増水して砂が流れてくるたびに、海底の状況が変わります。気持ちよく乗れるときもあれば、厳しく叩き付けられるときもある。プロサーファーでも海に入れないことがあります。それから川の流れが海の中まで続いているので、沖に流されないように注意が必要です」

article_03804.jpg手前の水面が仁淀川、奥が太平洋。

なので、ローカル(地元サーファー)は、知らない顔のサーファーを見つけたら積極的に声をかけているとのこと。
「この人は無理そうだと感じたら、『やめときや』と言うこともあります。高知弁のせいか、怖いと思われることも(笑)。でも事故が起きると、地元の漁師や消防団に迷惑がかかるし、あげくの果てにサーフィン禁止にもなりかねない」
〈ここがサーフィン禁止になったら〉を想像できる話を、溝渕さんが語ってくれました。
「かつては、高知県の川の河口にはいいサーフスポットがいくつもあった。でも今では、波に恵まれているのはこの仁淀川河口ぐらい」
その原因は、ダムや川砂利の採取などにより、河口部への砂の供給が減ったため。
「仁淀川河口についても例外ではないです。昔はもっと遠浅だったので、今よりもずっといい波がきていたんですよ」
川と海が出会う場所のことを一番気にかけているのが、サーファーという種族なのでしょう。彼らが追い出されたら、仁淀川河口の自然の変化に気づき、「やばいよな」と声を挙げる役目は誰が担うのでしょう……

article_03805.jpg新居地区観光交流施設「南風(まぜ)」

少しまじめな話になりましたが、サーフィンというのは実に美しいスポーツで、見ているだけでも楽しいものです。この春にオープンした新居地区観光交流施設「南風(まぜ)」2Fの「カフェ ニールマーレ」や3Fの展望台、その展望台に併設された避難タワーからは仁淀川河口の太平洋を一望。避難タワーと観光施設のコラボというのはなかなか画期的で、タワー最上階の標高は23m、有事の際には50名が避難できるというから、サーファーにも心強い存在でしょう。

article_03806.jpg避難タワーは、「南風」の営業時間であれば見学可。

そして「南風」1Fは、地場産品を中心に新鮮な農水産品が並ぶ直売所。真夏に嬉しい新居名物のスイカはもちろん、海洋深層水で栽培したメロン「プリンセスニーナ」、グルメ番組などでも絶賛の「一本釣りうるめいわし」の加工品など、土佐市の特産品に出会えます。

article_03807.jpg「南風」の1F。地域の農産物や、特産品を販売。
article_03808.jpg土佐市名物の「一本釣りうるめいわし」の加工品も。

さて、仁淀川河口のサーフィンにはおいそれと挑戦できませんが、カヤックやSUP(スタンダップパドルボード)であればこの地域の大自然を手軽に楽しめます。カヤックツアーについてはこの夏から「南風」で開催。清潔なフィッティングルームにシャワー完備で、体験コースは大人1人4500円、川下りコースは大人1人6000円(共に3日前までに要予約、午前の部と午後の部あり)です。

article_03809.jpg「南風」主催のカヤックツアーで使われる2人用カヤック。

SUPとはごらんのとおり大きめのボードに立って漕ぐアウトドアスポーツ。「B&M」では仁淀川下流域での体験や川下りツアーを開催しています。大きな空の下、のんびりと川面を漂いながら、海が近くになってもなお美しい仁淀川を満喫できます。

article_03810.jpg「B&M」の仁淀川SUP川下りの様子。初心者向け体験4,500円、川下り6,000円。(写真提供「B&M」)

「このあたり、土佐市の仁淀川は流れがおとなしくて、でも綺麗で、たとえ川に落ちても気持ちいい。ライフジャケットを着るので浮きますしね。暑くなったら川に飛び込んだりしながらの、ゆるーい川下りです。初めての人でも、老若男女すぐに楽しめますよ!」と溝渕さん。サーフィンなどボード系スポーツのベテランがガイドしてくれるなら、安心して仁淀川と一つになれそうです。

article_03811.jpg (写真提供「B&M」)

●「B&M SURF&CAFE」  http://www.bandm-surfcafe.com/index.html
●新居地区観光交流施設「南風(まぜ)」
休/第2、第4月曜日 営/8:00~17:00(1F直販所は~16:00)
 088-856-8421 maze@sage.ocn.ne.jp 

(仁淀ブルー通信編集部 大村嘉正)