2016.04.22春の仁淀川では、 山々が大いに「笑う」のです

春の仁淀川では、 山々が大いに「笑う」のです

「山笑う」という言葉があります。五七五の俳句を詠む人はよくご存じだと思いますが、「山笑う」は春の季語。大辞林では「草木が萌え始めた、のどかで明るい春の山の形容」となっています。

さて、仁淀川を見おろす山なみの「笑う」はというと、これはもう「大爆笑」ではないかと思うのです。まるで巨大なブロッコリーで埋め尽くされているような山肌です。木々の樹冠の枝葉がモリモリと盛り上がり、大仏の頭(螺髪=らほつ)みたいでもあります。生命が爆発しているような、そして山の姿を少し大きく見せるような、豪快な「山笑う」です。
そんな仁淀川の新緑の多くは、シイやカシなどいわゆる「ドングリ」の木である照葉樹です。なかでもシイノキ(スダジイやツブラジイ)が、山肌モリモリの主人公。その枝葉のキラキラとした黄緑色に、「若葉がキレイ」という人は多いのですが、実はこの色彩はシイノキの花。春の仁淀川の山々では、私たちは新緑を愛でているというより、「花見」をしていることになります。

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シイノキなどの照葉樹林は、かつて西日本一帯を広く覆っていました。しかし今では、森や林として残っているのはほんのわずか(一説には国土の約1.5パーセント)。仁淀川流域は照葉樹林に出会える貴重な場所でもあるのです。

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仁淀川の「山笑う」はゴールデンウイークぐらいまで。下流域は少し早めに笑い終わるので、仁淀川に沿って上流へと旅していけば、山の爆笑に出会えることでしょう。生命あふれるモリモリとした山の姿を見ていると、なんだか力が湧いてきますよ!

(仁淀ブルー通信編集部 大村嘉正)
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