2016.03.24仁淀川水系で見つけた花園、ここから春を始めてみませんか?
この人がいなければ日本は「雑草」だらけだったかも!? それが、「雑草という名の植物はない」という言葉を残した牧野富太郎博士。日本の植物があまり解明されていない明治、大正、昭和時代に日本各地の山野に入り、標本採取や精密な植物図を描くなどしてその特徴を学術的に記録、未知の植物に学名をつけました。
94年の生涯で収集した標本は約40万枚、命名した新種や新品種の植物は約1,500種以上といわれ、その研究生活の結晶である「牧野日本植物図鑑」は、現在においてなお植物の研究者・愛好家必携の書になっています。
そんな「日本の植物学の父」が生まれ育ったのが、仁淀川の支流・柳瀬川の上流部にある酒蔵の町・佐川。春まだ浅い3月8日、この町を見おろす牧野公園でシコクバイカオウレンという花がまだ咲いてますよと便りが届き、仁淀ブルー通信編集委員のみんなと一緒に出かけてみました。
シコクバイカオウレンは牧野富太郎にとって特別な花の一つ。佐川町の金峰神社で幼少期にこれを採取観察したことが植物への興味を決定づけたといわれています。ですが、図鑑で見る限りそれは小さくて白い花、なぜ牧野博士はこよなく愛したのだろう……と思っていたのですが、牧野公園で咲き誇る姿に「キュン」ときてしまいました。いや、かわいい!木漏れ日の林のなか、小さくて清楚な白い花々が、大地をなでるように一面に咲いています。早春の冷たいそよ風で小刻みに揺れるのがまたよい!寒さに震えているようで、守ってあげたくなります。
いま「白い花」と書きましたが、白い部分は実は花びらではなく「がく」。ほんとうの花びらは中心にある黄色いコップ状の部分なのです。ルーペで拡大して見れば、その小さき世界の造形と色彩に驚かされ、心はメルヘンの世界へ……。牧野富太郎がこの花を観察したときの心のときめきに思いを馳せました。
ここ佐川町の牧野公園は、牧野博士が贈ったソメイヨシノをきっかけに桜の名所として知られてきましたが、平成26年より牧野富太郎ゆかりの植物を四季を通じて楽しめる公園にリニューアル中。10ヶ年計画とのことですが、シコクバイカオウレンだけでなくフクジュソウやミツマタなどすでに様々な早春の花が咲いていました。これらの植物は、佐川町民が協力して育てた苗を植栽しているそうで、さすが牧野富太郎の故郷だなあと感心しました。
そしてこれからはいよいよ桜の季節。3月25日よりぼんぼりに明かりがともり、日本の桜の名所100選にもなった園内で夜桜が楽しめます。牧野富太郎を魅了した草花の世界から、春を始めてみるのはいかがでしょうか。
(仁淀ブルー通信編集部 大村嘉正)
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http://sakawa-kankou.jp/akino.html